方法序説
■著者:デカルト
真理を導くための方法序説。
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同じ精神を備えた同じ一人の人間でも、子供の時からフランス人やドイツ人の間で育てられると、中国人やアメリカ人のなかでずっと生活してきたのとは、どんなに違った人間になるだろうか。
(中略)
結局のところ、習慣や実例のほうが、どんな確実な知識よりも私たちを納得させているが、それにもかかわらず、少しでも発見しにくい真理については、ただ一人の人がそういう真理を見つけ出したという方が、国中の人が見つけ出したと言うより、はるかに誠らしいから、賛成の数が多いからと言って、何一つ価値のある証拠にはならない。
こうしてわたしは、他の人よりもこの人の意見の方を採るべきだと思われる人を選び出すことが出来ずに、自分で自分を導いていかざるを得ないことになっていた。
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真理を探究するために必要なのは、『大多数の意見』ではない。 それは、キリストとソクラテスが大衆によって処刑されたことを考えれば、おのずとわかるはずである。