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考察
『セレンディピティ』とは、今や世界的に有名になった文具『ポスト・イット』が誕生したときに起きた現象で、よく説明されることがある。1969年、大手化学会社3Mで働くスペンサー・シルバー氏は、接着剤の開発に没頭していた。だが、試行錯誤の末、ようやく出来た接着剤は、粘着力の弱い、失敗作だった。何かひっかかるものを感じたシルバーは、失敗作を顕微鏡で観察。すると、粘着部分が、美しい球体をしている。この時、シルバーは直感した。
これは、何かに使えるかもしれない
もう一人の主人公、アート・フライ。教会で賛美歌を歌っていたフライが歌集のページをめくった、その時、しおりが落ちた。そのしおりを、拾おうとしたその瞬間、フライの脳が大きな幸運を引き寄せる。
失敗作の接着剤。歌集から落ちたしおり。この2つが、偶然、結び付き生まれた、世界的大ヒット商品、ポスト・イット。その発想は、(落ちない程度に軽くくっつくしおりが欲しい。)そう思った時、生まれたものだった。現在では、再生紙のポスト・イット、強粘着のポスト・イットなど、世界で1千種類もの商品を開発、大きな利益をもたらしている。2人の男の、直感とひらめきが引き寄せたこの現象こそ、『セレンディピティ』なのである。
これはつまり、ファーブル・リュスの言うところと同じ現象を指し示している。スペンサー・シルバーの欲しかった研究成果は、『最高の接着剤』というより、『接着剤を活かした最高の製品』だった。だが、それは自身が描いたシナリオ通りの研究では、結果を得られなかった。しかし、自分のシナリオの全くの範囲外で、その欲しかった研究成果を得るヒントを得ることが出来た。
ここで間違えてはいけないのは、彼らが期待通りの結果を得ることが出来たのは、彼らが、努力に、努力に、努力を重ねたからだということである。つまり左脳でもって論理的に、考え、考え、考え抜いても答えは出ず、ふと右脳的にリフレッシュしていたときにアイディアが浮かぶ。人生にはそういう『セレンディピティ』の様な現象があり、自分の思い通りにならないからといって諦める必要もなく、かといって怠慢な人生に逸れる必要もない。
古畑任三郎の横に今泉刑事が居て、彼がときたまミラクルを起こすだろう。だがあれは、決して今泉が天才なのではない。あくまでも、古畑任三郎が理論で詰めて詰めて煮詰まったところに、お気楽な今泉が、全く違う観点からの意見を出し、それを『ヒント』と捉えた古畑が、『よくやった今泉君』と言っているだけなのである。人生のヒントは意外なところにある。そしてそのヒントを活かせるのは、努力している人だけなのである。
※これは運営者独自の見解です。一つの参考として解釈し、言葉と向き合い内省し、名言を自分のものにしましょう。
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