DQ(ドラクエ)的戦略
厳しい指導を受け、社員は思うことがあると思うが、何を隠そうこれはすべて『必然』なのだ。考えればわかると思うが、ダラダラ無責任に自分のことばかり考えて遊んでばかりいた人間に、明るい未来など切り開けるわけがない。
そんなもの、宝くじで億万長者を夢見るのと同じレベルの浅はかさだ。でも、なぜ人生20何年生きてきて、『今』こんなに自分の愚かさと直面したのだろうか?なぜ『今』?この一年、一年半に、そんなに前例のない愚かな行動を連発しているのか?
違う。今社員が自分の愚かさに直面し、向き合い、克服しなければならないと思っているのは、私と出会ったからだ。表面的でない、本当の私と出会い、今社員は、必然的に、試練と向き合わされている。
私と出会わなければ、社員は今のように重く悩み、苦しむことはなかった。逃げ続けることができたからだ。私と出会ったことを、後悔しているか?私と出会ったことを、感謝しているか?それは、押しつけることはできない。だが、もし今私が言ったことが真実なのであれば、『今の状況』とは、私が作った『必然的状況』なのだ。
ではなんのために? 試練などと向き合わずに、もっと楽しくやれないのか?
だがその疑問を、こう一刀両断しよう。
『私は、本気で富士山に登ろうとしている。そのために弱った足腰を鍛え直すのは当然だ。』社員に、その足腰がなかった。だからこその、現状なのだ。
社員もよく知るドラクエで答えよう。
あれには『作戦』がある。戦闘をスムーズに運び、ただただ『勝利』するための作戦だ。あれは、『プレイヤーという司令塔』が作戦を立て、組み立てていく。社員Aが入社した08年1月から、社員B入社の6月、7月までは、当然まだ信頼性もなく、すべての仕事、売上の要を私が握っていた。
社員は、あまり考えないでもできる仕事を任されていたはずだ。
その時期が、
『おれにまかせろ』
『めいれいさせろ』
だったわけだ。
だが売上も落ち、社長は経営者を実感し出し、社員は浅はかさがにじみ出た頃、
『じゅもんをせつやく』
『めいれいさせろ』
になった。
『じゅもんをせつやく』というのは、『とっておきは秘めておく』という意味であり、それは、私が一線から退き、『おれにまかせろ』の体制を大きく変えたということである。その理由には、以前話した通り、『手柄』、『実力』というキーワードがあり、社員の育成に大きく力を入れた、という背景があるのだ。
だがいつからだろうか。
社員が『勝手に』、『自然に』、『無意識に』、
『いのちをだいじに』
という作戦に変更しだしたのは。つまり、『言いわけ』、『誤魔化し』、『自惚れ』、『正当化』、『自分本位』、今社員の前に大きく立ちふさがっている、試練のことだ。身の危険を感じ、自己防衛本能という欲望になすがままに支配され、作戦を自動的に変更したのだ。守りに入ったのだ。
しかし、その結果は見ての通り、さんざんな結果だ。なぜなら社員が、私の作戦を勝手に変更したからだ。『いのちをだいじに』が今適正なのであれば、司令塔である私が、最初からそう指令しているはずだ。これに懲りたら、これからは私の作戦通りに動くことだ。
それは私にとって重大な責任となるが、それが組織のトップである私の役目だ。その後、作戦はこう変更された。
『いろいろやろうぜ』
『みんながんばれ』
まさしく、『いろいろやろうぜ』とは社員が毎日思考錯誤して、自分から逃げずに向き合い、自分の歩幅でいろんなことに少しづつ挑戦していくこと、また、慣れた現状の仕事に満足し、自惚れてぬるま湯につかったりしないように、常に自らの足で熱湯、茨の道に足を踏み入れていくようにさせていくこと、そして私も、やはり手を休めることなく、自ら限界まで責務を負っていき、可能性を開いていく、そして『みんながんばれ』とは、そんなみんなに対してのエールでもある。
『今、本当に大事な時。みんな、怠けることなく、出し惜しみすることなくできる限りの力を出して、頑張って試練を乗り越え、道を切り開こう。』ということなのだ。
そしてこれは、私が設定した、作戦なのだ。この状況は、必然的なのだ。
・・でも、何か忘れているはずだ。
『ガンガンいこうぜ』
である。私はドラクエでは、いつでも『ガンガンいこうぜ』だった。
なぜならこの作戦こそ、『出し惜しみすることなく、全身全霊、全力でぶつかれ!』
という意味だからである。まさに私の性格通りの、理想の作戦だ。
だが当社は、まだ『ガンガンいこうぜ』に設定したことがない。いや、正確には、したくてもできないのだ。
わが社が全力を発揮するとき。それは、わが社の作戦が『ガンガンいこうぜ』になったときだ。
社員が抱えている試練を克服し、レベルが上がり、体勢が整ったとき。ようやくわが社は、100%の力を発揮できる。私の読みでは、当然まだまだ時間がかかりそうだ。
だがある社員が今日の内省で、
『楽に生活できていることに、甘んじている。100%の力を出したい。』
と、宣言した。今更この類の宣言など、心に打たれないが、当然、期待はいつだってしている。早く設定させてくれ。『ガンガンいこうぜ』に。私は、最初からそれ以外願ったことはない。
by:一瀬雄治 (Yuji Ichise)
サルベージエンタープライズ株式会社代表取締役社長。
1983年、東京都生まれ。