名言を自分のものにする

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FF(ファイナルファンタジー)的戦略


洋書や古典、指南書だけではない。映画、アニメ、ゲームからだって学べることはたくさんある。柔軟性のある人間になりたいものだ。

さて、昨日のDQ(ドラクエ)に続き、今日はFF(ファイナルファンタジー)で、人間を考えてみる。反省、内省、内観というが、なぜ社員は、この二年間ほとんど毎日なんらかの反省書を書き、自分を省みているはずなのに、同じことを、同じミスを何度も何度も繰り返してしまうのか。

4月に観た映画『シャッターアイランド』では、ディカプリオ扮する精神障害者が、
到底受け入れがたい現実から逃げるために、妄想の世界に生きるというストーリーを演じたが、私の眼には、その主役と社員とがだぶってしまって仕方がない。

ラストシーンで、彼と二年付き合ってきた院長や、担当の医者が、今回こそはと、一時的に正気に戻った彼に期待した。しかし翌日、彼がまた妄想の世界の別人になりきり、現実逃避をはじめたのを見て、医者たちは心から肩を落としたのだ。

二年間、実に二年間、同じことが繰り返されてきたのだ。それを院長はこう表現していた。
『まるで、カセットテープがA面からB面へと繰り返し再生されるかのように、同じことの繰り返しだ。』

医者たちも、立派な被害者だ。

二年間も同じことの繰り返しなら、医者の方が精神的にまいってしまうこともある。二年もの間、一度だけならず、何度も何度も、『裏切られている』のだから。それなら、一度も正気に戻らなかった方が、期待もしないし、裏切られる回数も少ないし、周りの人たちは楽だっただろう。

何が原因なのか。何が原因で、『その都度回復させているはず』のメーターがまた下がってしまうようなことが起こるのか。例えば私なら、一度怒られたことは、もう二度と怒られないつもりで改善する。人に注意されることは腹が立つし、自分に弱点、欠点があることはプライドが許さないし、謙虚さが足りないことは、器が小さい男だということを、知っているからだ。

つまり、私ならそこで、『原因を完全に改善(回復)』させる。これは私の生涯の自慢だが、17歳の時、その潜在能力を買ってくれた恩師たちから、年相応の少年には到底受け入れられないような要求を受け、プライドの芯の芯までズタズタに批判された。あまりの悔しさに普段は絶対に泣かない私が人前でわんわんと涙を流し、しかしそのおかげで本気を出すことができ、私はたったの一日足らずで『原因を追究し、改善の行動に出た』。

『よくわかったな。一瀬ならわかってくれると思っていたけど、まさかこんなに早く答えを見つけるとは。』恩師のその言葉が裏付けるように、私は正確な原因を突き止めたのだ。そして、勇気を持って改善の行動に出た。そういうことの繰り返しで、今の私がいるのだ。

だが、社員はそれをしないということだ。(回復を)しているつもりになるのだろうが、解決できていないまま、生活に戻ってしまう。だからこそ、同じことをしてしまう。

FFでは、敵の攻撃によって、HP(体力)が減る。0になったらゲームオーバーだ。それを防ぐために、回復アイテム『ポーション』を使ってHPを回復させなければならない。だが、正確には敵の攻撃によってHPの減少だけではなく、『ステータス異常』になることがある。

毒。麻痺。石化。沈黙。呪い。
このステータス異常の症状に合わせて、『回復のアイテム』を使い分けなければならない。毒なら、『どくけし草』。麻痺なら、『麻痺治し』。石化なら、『金の針』。沈黙なら、『山彦草』。呪いなら、『十字架』。このステータス異常を治療しなければ、またその症状によって、体力は減っていく。

『ポーション』を使えば、確かにHPは回復する。しかし、それは一時的なものにすぎないのだ。『応急処置』にすぎないのだ。

何度も何度も同じミスをしてしまい、その都度怒られ、時には殴られ、体力を落としてしまうのは、まさしく『的確な回復』を、内省にて行えていないからなのだ。的確な回復アイテムを使用せず、ステータス異常を治していないから、そうなるのだ。

これでいえば、社員は、上に書いたすべてのステータス異常にかかっていると言っていいだろう。誤魔化し、逃げ、正当化、嘘、という『その場しのぎ』で、またすぐに必ず自分の体力を奪うことになる、『』。

毎日毎日、的確に心を読んでもらったり、助言をしてもらったり、お金を出して
もらったり、配慮されたり、親から受けた『あなたは生きていていい。生きているだけでいい』という愛情に甘えて、『してもらうのが当たり前』だと勘違いをし、特権の濫用、越権行為に走る、『麻痺』。

予想、想像していなかった不測の事態に陥るたびに身体が硬直する姿は、
石化』そのもの。考えることを放棄してきたその脳は、スムーズに答えを導き出すことができなくなっている。そのため、彼がこちらの問いかけに対して無言になる時間の最長たるや、『90分』という異例の事態を発症させている。まさしく『沈黙』だ。

彼がその半生でどれだけ過酷な試練を負ってきたかは書かないし、いつまでも過大評価するわけにもいかない。しかし、今まさに彼が大きなパラダイム転換を求められているのであれば、彼が過去に受けたトラウマというものは、『呪い』なのだ。

『シャッターアイランド』の彼に、抗鬱剤を投与しても、その場しのぎの応急処置にしかならない。大きな失敗を防ぐために、応急処置を繰り返して小さな失敗で済ませるということを繰り返していても、何の解決にもならないのだ。ただただ、時間だけが過ぎていくだけなのだ。時間は、永遠に返ってくることはないというのに。

社員は今内省で、どんなことを考え、想像し、反省し、どんなアイテムを使えばいいのか。もう、『ポーション』だけでは、意味がないことは、指導を受けて二年が経つ彼にも、わかっているはずだ。彼の異常が一日でも早く治り、正常になり、男として強くなってほしい。

その願いは、今始まったことではない。だが、彼が夢から覚めるには、私の想像以上の時間が必要なようだ。内省も、自ら志願してやらなければ何の意味も果たさない。今なら、すべての人に平等に厳しく追及しなかった、あの恩師の指導法を、より強く納得することができる。それも、仕方がないだろう。私もまた、取り返しのつかないものを失ってから、初めて気づけた愚か者だからだ。すべての人間は、愚かなのだ。

時間がかかるだろう。しかし私は彼らの指導を通して、ますます恩師に感謝できたし、自分を誇らしく思えた。私は、このまま自分の信じた人生を突き進めるべきだ。

そして、
『状況?なにが状況だ。俺が状況をつくるのだ。』
by ナポレオン

自分にも社員にも、この言葉が当てはまるのだ。

 

 


by:一瀬雄治 (Yuji Ichise)
サルベージエンタープライズ株式会社代表取締役社長。
1983年、東京都生まれ。


FF(ファイナルファンタジー)的戦略

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