自殺をする前に
人間が自殺するのが一番多い月が、『3月』、そして曜日は『月曜日』だというデータがある。健全な人間から言わせれば、『新春や、新しい週の始まりで希望に満ちているはず』だというのに、一体どういうカラクリなのだろうか。だが、物事は紐解けば大体の理由がハッキリするようになっている。必ず何かしらの真実が見えてくるのだ。
例えばこの過去11年間の自殺者のリスト。
平均年齢は、57歳、共通点は、取締役~会長クラスの面々である。彼らのことをろくに調べもせずに、また短絡的に言わせてもらえば、『順風満帆な人生を謳歌し、経済的にも問題はなく、いよいよ楽しみにしていた引退、老後に突入するはずなのになぜ』ということになってしまう。
人生を語る時に決して間違って抱いてはいけないのは、『義務』や、『責任』、あるいは『地位や名誉や財産の確保』というキーワードへの執着だ。
ある老人は、老後仕事を辞めた途端、人生を有意義に過ごせなくなって意気消沈していた。だが、俳句という趣味に出会ってからというものの、現役時代と同じように生き生きとした生きがいを感じることができ、健康的に生きられるようになったという。
また、かつての不動産バブルで大富豪になったある日本人は、 男の欲望を全て満たし、世界一周旅行もしたが、そのあと何もやる気がなくなって、たちまち180℃人生が転落し、借金が残った。しかし、その後彼は新しく仕事を見つけ、崖から這い上がり、再び人生を成功に導いた。
では、これらについて考えた時、どのような考えが頭をよぎるだろうか。
一体なぜ人間は、生きられるのか?生きたって、どうせ死ぬのに、なぜ前を向いて生きていけるのか?生きるために本当に必要なのは、地位や名誉、 財産の確保なのだろうか?あるいは、義務や責任なのだろうか?
こういう言葉を残した偉人がいる。
『お金は天国に持っていくことができない。』
人生の成功などというものがあるとすれば、それは、地位や名誉、 財産の確保といった、短絡的なものでもない。はたまた、義務や責任などといった、プレッシャーや鬱を生んでしまうような表面的で、窮屈な建前ではない。
いかに自分の心が揺るぐことがなく、本能、細胞レベルにですら嘘をつかずに、『信念』や『目的』、『理念(ビジョン)』を持ち、それを持って人生を生き貫くことができたかどうかなのだ。
自殺だけは絶対にしない私は、例えばこう考える。
『過去、未来永劫、この計り知れない時間や、宇宙の規模の中で、 自分という人間は、唯一無二。たった一つの、オンリーワンの存在。 DNAは受け継がれていたとしても、自分という存在は、本当に唯一無二だ。
数学的見地から計算すると、自分の両親が生まれ、出会い、結婚し、 そして自分を産む確率は、天文学的数字(300兆分の1以下)だという。何100万分の1以下は、ほとんど0に等しいと言われる中、この数字は、 まさに奇跡だ。
その奇跡を考えるだけで、生きる力がみなぎってくる。 そして、最善はその生きている奇跡の日数の間に、骨折る労苦をし、 そのご褒美に食べたり飲んだりして、人生を最高に旅して、 楽しく、悔いのない人生を生き貫きたい。』
つまり、自分の命が唯一無二であることを本当に理解した時、人は、その命を思う存分最後まで生き貫くことに迷いなどなくなるのである。
それに、月曜日が嫌だったら、月曜日が楽しくなる仕組みを作ればいい。例えば、ただでさえ開放的な週末や日曜日に、少しばかりの負荷をかけ(運動等)、そのご褒美に大好きなショートケーキを食べられるのは、 月曜日だけにするとか、そういうことだけで全然効果がある。
3月にプレッシャーを感じるのであれば、 3月には年に一度の大イベントを計画しておけばいい。海外旅行でもいい、大宴会でもいい、生きがいを感じる好きなイベントを、この月に当てはめればいい。
D・カーネギー著書『道は開ける』には、こう書いてある。
『レモンを手に入れたら、レモネードを作れ』
人生は最初から『レモン』だ。人生に意味なんて最初からないのだ。だから人生に何かを期待し、その虚像に依存することは、そのギャップを思い知ったときに自分の心身が崩壊することに繋がる。
だが、単体じゃ酸っぱくてとても食えたものじゃなかったとしても、レモネードにすれば美味しくレモンを楽しめるだろう。人生をレモンのままにするのも、レモネードにするのも、自分次第なのである。つまりこういうことだ。
by:一瀬雄治 (Yuji Ichise)
サルベージエンタープライズ株式会社代表取締役社長。
1983年、東京都生まれ。