『ウサギはカメを見ていた。しかし、カメはゴールを見ていた。』
嘘か本当か、あの話には実は、こんな続きがある。
結果が不服だったウサギが、カメにレースを再挑戦したのだ。カメは快く受け入れた。
ウサギは家へ帰り、母ウサギに言った。
『僕のほうが速いんだよ!眠ってなかったら僕が絶対勝ってたんだ!』
母ウサギは言った。
『そう。偉いわね。』
ウサギ『そうでしょ!偉いでしょ!』
母『偉いのは、カメさんの方よ』
ウサギ『え?なんで?』
母『今度はカメさんと、海で勝負してごらんなさい。』
ウサギ『 海だろうがどこだろうが僕が勝つに決まってるよ!』
レース当日、カメは得意の泳ぎでぐいぐいウサギを突き放し、あっけなく勝負に勝ち、こう言った。
『ああ楽しかった!ウサギさん、また勝負しようね。』
ウサギは家に帰り、泣きながら母ウサギに言った。
『わーん!カメさんずるいよ!海の中だったら、あっちの方が得意に決まってるじゃないか!』
すると母ウサギは言った。
『カメさんはね、いつでもただ自分の出来る限りの精いっぱいの努力をしているだけなのよ。その勝負が自分に有利とか不利とか、そんなことはカメさんには関係ないのよ。あなたもカメさんを見習って、頑張らなきゃね。』
ウサギ子供心に恥を知り、言った。
『・・・。わかった。
カメさんに会って、勝負をしてくれた お礼を言ってくるね!』
…世の中には、向き、不向きというものがある。
他人を見るな。見るべき姿は、己のみだ。自分の人生は、過去未来永劫、唯一無二なのだから。
ブランド物?
キラキラした宝石?
希少価値に魅せられるのは人の常。だが、本当に大切にすべく、唯一無二なのは、自分という存在ただ一つなのだということを、見落としてはならない。
by:一瀬雄治 (Yuji Ichise)
サルベージエンタープライズ株式会社代表取締役社長。
1983年、東京都生まれ。