厳格父さん 寛大じいちゃん
とあるおじいさんが、テレビかなにかで言っていた。
『厳しい役は全部父親がやってくれるから、
私はかわいい孫を甘やかし放題だから楽ですよ。』
この言葉、実に奥が深い。
よく、甘えた子供は、あれこれときつく言われて傷ついたことを、
その指導者のせいにする。
『うるせえな』
『なんでこんなに怒られなきゃいけないんだ』
『じいちゃんはもっと"やさしい"のに』
自分が何らかの失敗を起こしたというのに、
それを甘やかす指導者を『やさしい』と味方にし、
それを戒める指導者を『厳しい』とし、敵にする。
私も指導者のはしくれとして声を大にして言いたいが、
『寛大になって欲しけりゃ、自律しろよ』
ということなのである。
ある全国的にビジネスを成功させた経営者は、社員の教育について、
自分の家のベランダで、庭の植物に水をやりながら取材陣にこう言った。
『植物もね、こうして水をあげなければ育たない。
あげなければ、枯れてしまうからね。
でもね、
あげすぎても腐るんですよ。
なんだか植物と人間って、似てますよね。』
その絶妙な加減は、容易ではないのだ。
だからこそ、全国のお父さんお母さんをはじめとする教育者は、
口をそろえてこう言うのだ。
『子育て(教育)って本当に難しい』
(マニュアル通りにいかないから)
その加減は、生まれた環境や教育、幼少期に植えついたパラダイム(価値観)などにより、
絶妙に変えていかなければならない。
確かに『市販薬』はある程度の効果が期待できる。
だが、本当に有効なのは、『処方薬』なのだ。
私の部下には、類稀に見る歪んだ心を持った人間がいるが、
彼についてはもう、3年以上も市販薬など使っていない。
彼に相応しい教育をすると当然、異常な厳格さが必要になり、
教育者側の私も、周りから実に多くの誤解を受けた。
全国の、教育を受ける側の皆さん。
あなたの『厳格父さん』を、『寛大じいちゃん』に解き放ってあげてほしい。
そうすればこの世で一番愛してくれているその『父さん』は、
嫌な役を、損な役を、買って出なくて済むのだから。
by:一瀬雄治 (Yuji Ichise)
サルベージエンタープライズ株式会社代表取締役社長。
1983年、東京都生まれ。