お金の貸し借りって、口約束だけでも成立するの?
はい。
確かに口頭だけでも契約は成立しますが、後々のことを考えてしっかり書面に残しておくことが大切です。様々な契約について紹介します。
親しい友人、家族、同僚やサークル仲間などの間では、何か行う時に口約束で済ませる人も多いのではないでしょうか。このような時、わざわざ書面に書いて残す人はそういないはずです。家族や親しい友人なので、裏切ることはないという考えが頭にあるのかもしれません。このような口頭での約束は、法律的にはどのような効力を持つのでしょうか。
結論からいうと、口約束による行為でもきちんとした法律行為に当たります。例えば会社や商人が他人と商取引を行う場合、実際の取引は当事者の取り決めで実施されます。このような取り決めは契約に当たり、この意味からすると口頭での約束は契約と同じ、と見ることができます。商人だけでなく、私たちもこのような行為をよく行っています。
商品の売買を例にとると「売ります」、「買います」といった、売主と買主との約束だけで契約が成立します。法律上の契約というのは、当事者の合意だけで成立するのが原則です。皆さんも会社や学校などで、このように売買を行っているのではないかと思います。
またお金ではなく、物を介入した物々交換なども行なわれています。パンとケーキを交換したり、オンラインゲームのソフトを交換したりなど、自分が不要になった物同士を交換することで契約は成立します。
このように口頭だけでも契約は成立しますが、世の中には契約の効力がある約束であるのに、「口での約束なので効力がない」と契約を守らない人も少なくありません。確かに会社などでは契約を交わした後、きちんと書面を作成して調印すること多いです。
しかし、取引を電話で発注した後に納品するという現実社会の実態を見れば、上記のような考えは間違いだということに気付きます。確かに口頭での契約は間違いではありませんが、第三者に対抗できるよう契約を行う時は、契約の書面を作成することが望ましいといえます。以下で法律の規定を見てみます。
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口頭での約束というのは、契約の書面など残さずに行う契約をいいます。この点について民法は諾成契約主義を採用しており、口頭での約束でも法律的に有効な契約とみなしています。口頭による約束については民法第91条に規定があり、
法律行為の当事者が、公の秩序と異なる意思を表示した時はその意思に従うこと
さらに民法第97条では隔地者に対する意思表示を規定しており、
一方の通知が相手方に到達した時に効力を生ずる
としています。このように口頭での契約が有効になる旨の規定がありますが、口頭での贈与契約は、実際に贈与を受ける前に取り消される可能性もあります。さらに民法550条では、書面でない贈与について規定しており、当事者の撤回を認めています。しかし履行が終わった部分については、この限りでないともしています。
また民法第446条では保証債務について規定しており、保証契約は書面でないと効力を生じません。このように、法律では口頭で契約も有効である旨の規定がありますが、書面による規定もあります。
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次に契約による書面についてです。契約を行う時は、後々のトラブルを防ぐにためにも書面で行うことをおすすめします。ここで書面の書き方を見てみます。
書面作成で大切なのは、契約の署名と記名の違いの理解です。契約の書面を作成する時は印鑑を押しますが、書面に印鑑を押すのは書面の内容に間違いがないことを確認するためです。このように契約の書面に印鑑を押す行為は、相手方と契約を締結したという事実を確認するためです。印鑑によって、それぞれが契約を締結したという意思表示を行います。
そして署名ですが、署名は本人が自分の名前を自筆で記入します。また記名は、自筆以外で記載することです。そのためパソコン、ゴム印、印刷など、様々な方法で明記できます。法律では署名が原則になっていますが、一般的には記名捺印でも可能です。それゆえ契約の書面を作成する時は、記名押印だけでも効力が生じます。なお日本では昔から印鑑を使用していますので、契約の書面を作成する時は印鑑もしっかり押してもらうと良いでしょう。
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契約の書面で使用する印鑑は、実印と認印の2種類に分けられます。その中で実印は、市役所で印鑑登録を行っている印鑑のことをいいます。そして実印以外の印鑑が認印です。印鑑にもそれぞれ種類がありますが、法律の面から見ると実印、認印のどちらを使用しても構いません。しかし相手に対する信頼面から見ると、やはり公的証明が可能な実印がおすすめです。
契約の書面を作成する時は契約内容や印鑑も確かに大切ですが、それよりも大切なのは当事者の意思です。契約書というのは、印鑑があれば誰でも簡単に作成できます。そのため、時には偽装した契約が出てくることもあります。
また契約の書面に押印している印鑑がたとえ実印であっても、本人が実際に押印してない限り法的効力は生じません。あなたが社長の実印を勝手に押印して契約の書面を作成しても、社長から代理権などを与えられていない限り無効になります。しかし、社長がその契約の書面を認めていれば、たとえ認印でも法的な効力を生じます。
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契約を行う時、よく行なわれるのが売買契約です。売買契約というのは、売主と買主で契約を締結して契約の書面を作成します。その後の取引は、契約の書面に記載した内容に沿って進められます。売買契約によって後々トラブルなどが発生しない限り、原則的に契約の書面に基づいて処理されます。そのため相手方と取引を行う時は、契約の内容をしっかり確認してから契約を締結するようにしてください。
なお買主の都合で契約を解除する時は、売主に対して支払いした手付金を放棄すれば契約解除できます。そして売主の都合で契約解除を行う時は、買主からの手付金の返還に加え、手付け金と同額を支払うことになります。
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次に借用書についてです。この書類は、借主と貸主間のお金の貸し借りを証明する書面です。書面自体には法的強制力はありませんが、口頭での契約によくある記憶違いによるトラブルを防止できます。お金の貸し借りについては口頭による契約でも成立しますが、後々トラブルが発生することがあります。そのためトラブル防止のために、きちんと書面で残しておくことが大切です。
借用書のメリットとしては、次の点が挙げられます。まずは前述のように、当事者記憶の記憶違いによるトラブル防止です。そして作成は1通作成すれば良いので、1通分の収入印紙代だけで大丈夫です。さらに借主が作成しますので、貸主の手間を省けます。
しかしデメリットもありますので注意してください。書面は借主が作成することになりますので、場合によっては貸主に不利な条件になる可能性があります。また、貸主が書面を紛失する可能性がありますので注意する必要があります。契約は口約束でもできますが、後々のトラブルなどを防ぐためにも契約書などを作成することをおすすめします。また契約を行う時は、契約の内容をしっかり確認しておいてください。契約には、メリットとデメリットがありますので気を付けましょう。
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