離婚をした後の財産分与ってどうなるの?
財産を請求できる期間には時効があります。
財産を請求できる権利の消滅時効は、2年と規定されています。離婚が成立してから起算して2年です。
先生
ハニワくん
離婚した後に請求を
財産でよく問題になるのが、離婚をした後の財産分与です。財産を分与する場合、気を付ける点がいくつかあります。その一つが時効制度です。離婚した後に行う財産の分与ですが、財産を請求できる期間には時効があります。そのため請求権者は時効に注意してください。財産を請求できる権利の消滅時効は、2年と規定されています。2年の消滅時効を経過すると、財産を請求できる権利を失います。
財産請求は離婚前にすることが多いですが、離婚した後でも請求可能です。しかし離婚した後に請求する場合であっても、離婚の成立前に財産を分与する詳細の取り決めなどをしっかり決めておいた方が良いでしょう。離婚をした後でも請求ができるといっても、離婚が成立した後では払ってもらえないことも十分考えられます。相手の行方が分からなくなったり、既に再婚していたりすると、請求が困難になる場合があります。
また財産を減額したり請求を拒否したりなど、離婚した後では不利な状況になることが多いのです。財産の分与を請求できるのは、離婚が成立してから起算して2年間です。2年間の消滅時効にかかりますので、常に意識しておく必要があります。財産についての時効は、慰謝料と比べて1年短くなっています。
また財産の請求は慰謝料と異なり、自ら離婚原因を作った配偶者、いわゆる有責配偶者からも請求できる点に特徴があります。また財産は、離婚に至った原因がどちらにあるかは関係ありません。そのため離婚が原因で財産を分与する時は、離婚成立前に必ず詳細の取り決めをしておくことが大切です。また相手や第三者に対抗するためにも、取り決め事項を公正証書などして残しておくことをおすすめします。
この章のまとめ
- 財産を請求できる期間には時効がある。
- 財産を請求できる権利の消滅時効は、2年と規定されている。
- 財産請求は離婚前にすることが多いが、離婚した後でも請求可能。
- 財産を減額したり請求を拒否したりなど、離婚した後では不利な状況になることが多い。
- 財産についての時効は、慰謝料と比べて1年短くなっている。
- 財産の請求は慰謝料と異なり、自ら離婚原因を作った配偶者、いわゆる有責配偶者からも請求できる。
- 財産は、離婚に至った原因がどちらにあるかは関係ない。
- 相手や第三者に対抗するためにも、取り決め事項を公正証書などして残しておくことをおすすめ。
財産の内容
財産には、プラスだけではなくマイナスもあります。マイナスの財産といえば住宅ローンや車のローン、その他にカードローンやクレジットカードなどのローンもあります。これら住宅ローン、車のローン、カードローンなど、夫婦が共同生活を営むために負担したマイナス財産についても、プラスの財産と同じようにローン名義人に関係なく分与の対象になります。
結婚生活を送っていた間に発生した債務については夫婦共同の財産になり、分与の対象になります。そのため、債務は連帯して負うことになります。また債務の中でも、夫婦の一方が他の目的で勝手に借りたものは分与の対象外になります。しかし他の債務でも、主債務者の保証人や連帯保証人になっている場合は分与の対象になりますので注意してください。
そして借金というと、不動産にも注意する必要があります。離婚において、不動産が財産分与で問題になるのがローンの残った住宅です。住宅を購入する際に住宅ローンを利用する人も多いと思いますが、住宅ローンの残額が多い時もあるでしょう。離婚時の分与の対象になるのは、不動産の時価より分与時のローン残額を差し引いた額です。
例えば不動産の時価が3000万円、そして住宅ローンの残債が1000万円残っていた場合は次の通りになります。3000万円から残債の1000万円を差し引いた、2000万円が分与の対象になります。この2000万円を夫婦それぞれで分与します。この場合は寄与度も関係してきますが、寄与度が同じであれば、それぞれ1000万円の財産を分与することになります。不動産については売却することもありますが、その場合でも売却益が出れば分与の対象になります。
また売却した後にローン債務が残れば、残りの債務を二人で支払うことになります。しかし、不動産を売却すると税金がかかり、なおかつ債権者である金融機関の同意も求められます。その点をよく考慮して取り決めを行ってください。離婚した後に金銭のことは話したくないという人も多いので、例えば不動産を一方の単独名義にするのも一つの方法です。単独名義にした後、所有者が残ったローンを支払います。このように、不動産を譲り受けた側が残りの債務を清算するケースもあります。
この章のまとめ
- 財産には、プラスだけではなくマイナスもある。
- 結婚生活を送っていた間に発生した債務については夫婦共同の財産になり、分与の対象。そのため、債務は連帯して負う。
- 他の債務でも、主債務者の保証人や連帯保証人になっている場合は分与の対象。
- 住宅ローンにおいて離婚時の分与の対象になるのは、不動産の時価より分与時のローン残額を差し引いた額。
- 売却した後にローン債務が残れば、残りの債務を二人で支払うことになる。
- 不動産を売却すると税金がかかる。
分与にかかる税金
財産を分与する場合、分与金額が相当であり、共有財産の清算金として妥当な額であれば、贈与税や所得税などの税金はかかりません。しかし不動産などが高額過ぎる場合は、贈与税や所得税がかかる場合もあります。そして不動産が分与対象になる場合は、譲渡する側に譲渡所得税、譲渡される側に不動産取得税がかかることもありますので注意してください。
しかし居住用不動産の所有権移転を行う時は、譲渡所得税の特例である3000万円の特別控除が受けられます。そのため居住用である不動産を分与する場合、購入価額と財産分与時における時価差額が3000万円以下であれば、税金は免除されることになります。
この章のまとめ
- 財産を分与する場合、分与金額が相当であり、共有財産の清算金として妥当な額であれば、贈与税や所得税などの税金はかからない。
- しかし不動産などが高額過ぎる場合は、贈与税や所得税がかかる場合もある。
- 不動産が分与対象になる場合は、譲渡する側に譲渡所得税、譲渡される側に不動産取得税がかかることもある。
- 居住用不動産の所有権移転を行う時は、譲渡所得税の特例である3000万円の特別控除が受けられる。
財産の放棄について
相続で被相続人の財産を取得する場合、その財産がマイナスなど負担が大きい場合は財産放棄ができます。財産には借金などのマイナスのものもありますので、それら全てを受け取ると負担が膨らみます。しかし、前もって申請することで受取を拒否できます。財産を放棄するには、3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てる必要があります。
財産の放棄というのは、不動産や預貯金などのプラス財産、そして借金のようなマイナスの財産など、全ての権利、義務を拒否することをいいます。家庭裁判所に放棄する対象者の、下記の書類等を添付して申請します。
- 財産放棄の際に必要な書類等
- 戸籍謄本
- 全部事項証明書
- 改製原戸籍謄本
- 除票
詳しいことは家庭裁判所、または弁護士や司法書士など、法律の専門家に相談してみると良いでしょう。弁護士や司法書士の中には無料相談に対応しているところもありますので、まずは無料相談を利用して対応してもらうのも一つの方法といえます。またメールやFAX相談などにも対応しているところがありますので、一度確認しておくと良いでしょう。
財産の放棄は3ヶ月以内と期限が決まっていますので、放棄することが分かっていれば早めに対処することをおすすめします。なお放棄する者が未成年や被後見人の場合は、法定代理、特別代理人、後見人が相続を申請することになります。この場合も、事実が起きたのを知った日から起算して3ヶ月以内に申請します。3ヶ月以内に放棄するかどうかの判断がつかない時は、家庭裁判所に対して「期間伸長の申し立て」を請求することになります。「期間伸長の申し立て」を申請すれば、家庭裁判所の審判で期間を延長できます。
また財産を放棄する場合、対象となる財産に手を付けないようにしてください。対象となる財産に対して手を付けてしまうと、単純承認したものとみなされます。単純承認とみなされると、財産の放棄ができなくなりますので注意してください。そして単純承認以外に、限定承認も同じように財産の放棄ができなくなります。例えば対象者の預貯金を全て引き出して私的消費したり、株券や預貯金を自分の名義に書き換えたりした場合です。
その他に、対象者の株主権を行使した時も同様に承認したことになります。離婚時に問題になる財産分与、また相続時に発生する財産放棄など、財産が問題になるケースは良くあります。ケースバイケースで対応することになりますが、不明な点があれば弁護士や司法書士などの専門家に相談すると良いでしょう。
この章のまとめ
- 相続で被相続人の財産を取得する場合、その財産がマイナスなど負担が大きい場合は財産放棄ができる。
- 財産を放棄するには、3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てる必要がある。
- 財産の放棄というのは、不動産や預貯金などのプラス財産、そして借金のようなマイナスの財産など、全ての権利、義務を拒否することをいう。
- 放棄する者が未成年や被後見人の場合は、法定代理、特別代理人、後見人が相続を申請する。
- 3ヶ月以内に放棄するかどうかの判断がつかない時は、家庭裁判所に対して「期間伸長の申し立て」を請求することになる。
- 対象となる財産に対して手を付けてしまうと、単純承認したものとみなされ財産の放棄ができなくなる。
- 対象者の預貯金を全て引き出して私的消費したり、株券や預貯金を自分の名義に書き換えたりした限定承認も同じように財産の放棄ができなくなるす。
- 対象者の株主権を行使した時も同様に承認したことになる。