アレルギー体質の人は薄毛になりやすい?
アレルギーの自己免疫疾患は円形脱毛症と似ています。
そのことを考えると、アレルギー体質の人は薄毛になりやすいとも言えるかもしれません。
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アレルギーが脱毛を促進する可能性があります。それは下記の記事で少し触れましたので、併せてご確認ください。
まず、アレルギーの意味を見てみましょう。Wikipedia『アレルギー』にはこうあります。
免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こることをいう。免疫反応は、外来の異物(抗原)を排除するために働く、生体にとって不可欠な生理機能である。語源はギリシア語の allos(変わる)と ergon(力、反応)を組み合わせた造語で、疫を免れるはずの免疫反応が有害な反応に変わるという意味である。
免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こる。つまり、過剰反応するということですね。普段はこうした免疫機能たる『警備隊』たちは、良い働きをしてくれます。悪い病原菌や異物等を攻撃する、警備隊の役割を果たしてくれています。だから人間が健康でいられるのです。
下記の記事に書いたように、
『調理師養成教育全書 必修編4 栄養学』にはこうあります。
血球には、赤血球、白血球、血小板の3種類がある。赤血球は肺で受け取った酸素を体の隅々まで運び、白血球は細菌感染などに防御作用を持ち、血小板を凝固させる働きをしている。
ここで言う『白血球』などが、その警備隊である免疫機能の一つですね。私なども口唇ヘルペスという持病を持っていますが、ストレスや疲労等でこの白血球の力が弱まると、必ず体内に潜むヘルペスウイルスが口元に下りてきて、唇の皮膚を食い破るのです。
ですから、そうした免疫機能たる警備隊は、常に万全の状態でなくてはなりません。パソコンで言うところの、セキュリティソフトですね。これが常に正常に働いてくれるから、パソコンがウイルスに侵されないで済むわけです。しかし、このセキュリティソフトが誤作動を起こすことがあります。それがアレルギーということなんですね。
『アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に!』にはこうあります。
先進国はアレルギーパンデミック
(省略)今や花粉症は日本国民の4人に1人が発症していると言われる。スギやヒノキ、ブタクサなど、様々な植物の花粉が原因だ。さらにダニやハウスダストが原因のアレルギー性鼻炎。牛乳や卵、魚や果物に対する食物アレルギー、金属や化学薬品、化粧品のアレルギーなど、私たちの身の回りにあるものは、ほぼすべてがアレルギーの原因物質、アレルゲンになると言ってもいい。
アレルギーには、
等、様々な種類がありますが、このどれも全てが、免疫機能の過剰反応です。金属アレルギーの記事にも書きましたが、『今日もカフンが飛んでいます。』にはこうあります。
この花粉症、そもそもどんな病気なのでしょうか。簡単に言えば、アレルゲン(花粉)が体内に入ってくると体は『抗体』をつくります。IgE抗体がそれですが、これがたくさんつくられた状態で再び花粉が侵入すると、『花粉を追い出せ!』といっせいに反応します。これが、くしゃみや鼻水、涙などです。つまり、花粉症とは身体を防御する免疫作用が、本来無害である花粉に対して、過剰に働いてしまう反応なのです。
そして、円形脱毛症が免疫異常によって起きる自己免疫疾患であるということも書いています。
免疫の異常により自分の身体の組織を外部の異物として攻撃、排除しようとしてしまう病気
ですから、こうしたアレルギーの自己免疫疾患は、円形脱毛症のそれとよく似ているのです。そう考えると円形脱毛症は『アレルギーの一種』と考えてもおかしくはありません。これが『アレルギーで脱毛が促進される』というテーマで考えるときの、一番のポイントになりますね。
例えば、『AGA(男性型脱毛症)』というならば、その原因は『DHT(ジヒドロテストステロン)』です。男性ホルモン(テストステロン)には、体毛やひげなどに代表されるように、毛を生やす、という作用がありますが、前頭部と頭頂部の毛乳頭に多くある特殊な酵素(Ⅱ型5α-還元酵素)と結びつくと、ジヒドロテストステロン(DHT)という脱毛を促進する物質がつくられるわけです。(ちなみに女性の場合は、アンドロステンジオンという物質からもDHTが生じます。)
ですからこれはアレルギーというよりも『ジヒドロテストステロン』が原因ですから、アレルギーとは無縁の話になります。しかし、円形脱毛症のような脱毛症は、アレルギーにとてもよく似ているので、『アレルギーで脱毛する場合がある』ということは、『ある』と言っても事実とはそう遠くはありません。また、そうしたアレルギーによって皮膚に異常が起きる場合がありますが、それが頭皮に起きてしまった場合、そこから脱毛が促進されることもあります。頭皮には髪の毛の土壌となる毛細血管や毛母細胞がありますから、それが皮膚異常によって傷つけば、髪の毛にダメージが与えられます。
では、このようなアレルギーを引き起こさないようにするためにはどうすればいいのでしょうか。やはりそうしたアレルゲンから自分の身を遠ざけることで、症状を予防したり改善することができるのでしょうか。私の場合はハウスダストアレルギーですから、確かにハウスダストを家中から清掃すれば、くしゃみは止まりやすくなりますし、金属アレルギーの人は金属をつけなければその症状を抑えられます。
しかし、『アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に!』にはこうあります。
『予防のためにアレルゲンを避ける』は間違いだった
(省略)しかし、最新の科学研究は、実はアレルギー食品を避けることは、アレルギーの予防に全く役立たないことを突き止めた。さらにアレルギー食品を避けさせたことが、かえってアレルギーを発症するこどもを増やしてしまっているという恐ろしい可能性すら指摘され始めている。
本には、キリスト教プロテスタントの一会派でドイツ系の移民であるアーミッシュという民族が、『アレルギーの患者がほとんどいない』現実に注目し、その実態を調査した結果が書かれています。
(省略)家畜の体内には数万種類、数千兆個ともいわれる非常にたくさんの細菌がいます。私たちの腸内にも細菌がいますが、その細菌とはずいぶんと種類が異なっています。家畜と濃密に接する暮らしは、これらの細菌を日々、ほこりなどと一緒に吸い込み、体内に取り入れる暮らしだということです。
(中略)実はアレルギーの発症が少ないもうひとつの環境条件、加熱殺菌していない牛の生乳を飲むことも、体内に家畜の細菌を取り入れることになる。加熱殺菌されていない生乳には、家畜の細菌が豊富に含まれているのだ。
(中略)家畜との接触が多い人や生乳を飲んでいる人の血液内ではある免疫細胞が35%も増えていることがわかったのだ。その名は制御性T細胞、通称『Tレグ』。このTレグこそ、アレルギーの発症を押さえ込み、今まさにアレルギー治療に大きな変化をもたらそうとしている主役だ。
アーミッシュの人々は、家畜と濃密な接触をする生活を送っていて、いつも殺菌しない生乳を飲んで暮らしています。200年以上もそうした生活を送り続けてきて、彼らはアレルギーになったことがほとんどないのです。その理由が今書いた、『Tレグ』の存在ですね。
Tレグの正式名称は『Regulatory T Cell』、日本語にすると、『制御性T細胞』です。このTレグを発見したのは日本人で、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの坂口志文教授です。2015年3月にはノーベル賞の登竜門ともいわれるガードナー国際賞受賞者に選ばれた人物で、偉大な人物です。つまり、このTレグの発見はノーベル賞も期待される世紀の発見なんですね。
このあたりの話を書くと膨大な量になってしまいますので割愛しますが、ここで考えたいのは『アレルゲンから逃げずに逆に利用する』ということです。
とは、口や舌にアレルゲン物質を『あえて』投入し、体をそのアレルゲンに『慣れさせる(異物ではないと認識させる)』というイメージの治療法です。
アレルゲンを安全な形にして体内に入れる。するとTレグが増え、私たちの免疫はそれを攻撃対象と見なさなくなり受け入れる。
様々なアレルギーがありますが、本では猫アレルギーの人に、その原因である猫の唾液や毛のたんぱく質から、アナフィラキシーなどの危険な反応を起こす部分を取り除き、安全な形にしたものを、数回、注射するという方法で、そのアレルギーを改善したという事実について取り上げています。
これは花粉症も同じですね。詳しくは、『花粉症は治せる! 舌下免疫療法がわかる本』をご覧ください。
この記事ではアレルギーと薄毛の関係性について考えましたが、円形脱毛症はほとんどアレルギーと言ってもいいような症状で、自己免疫疾患です。その確実な治療法がないのは、『放っておけばそのうち治る』その特徴も手伝っているのですが、こうした『Tレグ』等の事実を考えたら、もしかしたらいずれ、円形脱毛症の治療法も確立するかもしれませんね。