ソクラテス『わたしは、善いことかもしれない死を、はじめから、よくわからないのに恐れて逃げることは絶対にしない。』
まず言っておかなければならないことは、この言葉の意味を捻じ曲げて解釈してはならないということだ。無差別殺人をして自殺する人間か何かも、この言葉に感銘を受けしまう可能性がある。 だが、それはただの『援用』である。
※援用
(自分の主張の助けとするため、他の 意見・文献などを引用したり、事例を示したりすること。ある事実を、特に『自己の利益』のために利用し、それを主張すること。)
ソクラテスが言うのはこういう意味だ。
『人間は死ぬことを最悪で最大の災いであると勝手に決めつけ、恐れている。これはどう考えても、『知らないのに、知っていると思う』というあの、『無知』の代表のような考え方なのだ。だから私は、もしかしたら善いことかもしれない死を、はじめから、よくわからないのに恐れて逃げることはしない。』
つまり、死から逃げないということ。決して、無差別殺人をして自殺をしたり、『死ぬことは悪いことじゃないんだ』とか、『あの世に行って二人きりでまた会おう』とか、わけのわからない奇声を発して、自ら死を誘発させるようなことを支持するような発言ではない。
『逃げない』のと、『誘発する』のとでは意味が全く違う。
前者は、もし悪法によってやむを得ずそうなるのであれば、自らの正義を破ってまで、無様にそれに逆らい、生に執着するつもりはない、という高潔な心構えと知性が垣間見えるが、後者は、この言葉の意味を『援用』し、そして無関係の人の人生や宗教、家族や友人までをも巻き込むような、一言で言えば『害』を及ぼす存在である。
個人でなにを信じ、どんな信念を持ち、様々な趣味を持つのはいいが、それを人に『強要』してはならない。『法律』をよく見ると、大体そういうことを言っていることがわかる。いろいろな『自由』の制定はあるが、『強要』した瞬間に、それが『罪』になるのである。つまり、『一線を超える』ことは、許されないのだ。
その『一線』こそが、自分と他人の間にある、線である。だからソクラテスのこの言葉は、自分という人間を囲む線の中だけで用いる言葉で、その線から外に出して、それを人に強要するために用いる言葉ではない。
それを理解したうえでこの言葉と向き合いたい。私も随分前からソクラテスの言うように、『他人がそうしているから』とか、『大勢が支持しているから』とか、『有名だから』、『恒例だから』、『習わしだから』、というあらゆる外部要因に、照準を合わせることは、違うと思って生きている。
10年以上前ならよく、『天邪鬼』、『何を考えているかわからない』、『不思議』、 と言われることもあったが、貫いているとそう言われなくなってくる。これが『人格』だと認知し始めるのだ。だが私ならそれ(認知)を、そんなにも長い年月をかけて行わない。十人十色だからだ。この単純な、『知ったつもりでいる』事実を知らない人は、圧倒的に多い。
皆、『多く、大きく動く外部要因』に照準を合わせている自分が、正しい道の上を歩いていると思っている。だからパレートの法則は存在するのだ。だから『その他大勢の一人』が存在するのだ。だから依存し、怯え、そして鬱になるのだ。だからソクラテスやイエスは、殺されたのだ。
人と違うのは『個性』だ。そしてソクラテスにあったのは『知性』だ。それらを見極めることの出来ない目など、節穴と同じである。
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ソクラテス『わたしは、善いことかもしれない死を、はじめから、よくわからないのに恐れて逃げることは絶対にしない。』
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