赤ちゃんや子供の脱毛症ってどんなものがある?親ができることは?
子どもに多くみられる脱毛症は、
また、
等、色々なものがあります。子供の薄毛対策には家族の協力が必要です。というか、薄毛対策だけじゃなくて、対象が子供のことならどんなことでも家族の協力が必要ですよね。自分のことのように考え、問題に一緒に向き合っていくことが大切です。
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子供の薄毛対策には家族の協力が必要です。というか、薄毛対策だけじゃなくて、対象が子供のことならどんなことでも家族の協力が必要ですよね。一気に話を深くしますが、私の両親はクリスチャン(キリスト教徒)であり、しかし、
と言う、もう子供には意味がわからないことを言う親でした。たくさんの衝突と葛藤があり、クリスチャンではない私は非行にも走りました。
こんな親死ねばいい…
と本気で願ったこともあります。これ以上話すとかなり長くなるので割愛しますが、しかし『子供の問題は両親の問題』でもあるということがわかるワンシーンであります。決して子供だけで何とかなるものではないんですね。親子とは、切っても切れない絆で結ばれている特別な関係ですから、家族の誰かの問題が、他の家族と無関係ということはありえません。
イギリスの小説家、D・H・ローレンスは言いました。
親と子を結ぶ絆は決して切れることはありません。しかし、それは『ゆるむ』のです。それを考えただけでも、今回のテーマは奥が深くなりますね。
ただその前に、子供が薄毛になるということはあるのでしょうか。ではここで、薄毛の種類について、少し羅列してみましょう。
これらが名称の付いた主な脱毛症です。また、『子供に多くみられる脱毛症』として、
などもあります。ただし、下記の記事に書いたように、
薄毛の原因
薄毛の原因には、このような問題が挙げられるわけです。ですから、それを入れれば更に脱毛症の原因というのは多岐にわたることになります。上から順に考えていきましょう。
まずAGA(男性型脱毛症)ですが、『ササっとわかる薄毛の悩み解決最前線』(講談社)にはこうあります。
男性型脱毛症(AGA)は『男性ホルモン』の影響から
男性型脱毛症は、AGA(Androgenetic Alopecia)とも呼ばれ、成人男性が発症する脱毛のほとんどがこのAGAです。額の生え際や頭頂部の髪の毛が抜けて生えてこなくなったり、産毛になっていくことで地肌が見えるようになり、これが進行していくのが典型的な症状です。
『成人男性が発症する脱毛』とありますね。そうなると、未成年である子供はAGA(男性型脱毛症)の可能性が低いということになるでしょうか。
『最後に読む育毛の本』にはこうあります。
抜け毛は突然やってくる
薄毛は前触れもなくやってきて、気が付くと薄毛の支配下におかれているパターンが多いのです。ただ、本当は突然、薄毛になるということではありません。薄毛の予兆に気が付かないからなのです。まず、抜け毛が通常よりも早い周期で、ジワジワ抜けてくることが続きます。そして時間をかけて薄毛になっていきます。10代、20代、はたまた50代からと、時期は人それぞれです。それがノックもなしにやってくるので、まさに 『神のみぞ知る』という言葉がぴったり当てはまります。
この本には『10代も薄毛になる』と書いてありますね。しかしこれは本を断片的に抜粋しているからです。ここで言っているのは『薄毛』であって、『AGA(男性型脱毛症)』ではありません。更に読み進めてみましょう。
男性型脱毛症の薄毛は、男性ホルモンの影響は遺伝、年齢的な要素があります。男性には個人差はありますが、30代から40代の働き盛りと、これがまた薄毛の『適齢期』なのです。このころの年代の方はやはり薄毛を何とかしたいという思いで真剣なのです。
つまりAGA(男性型脱毛症)になると、やはり成人以降の男性がなることが一般的なようで、未成年がなるということはほとんどないようです。更に読み進めてみましょう。
DHTは発毛サイクルを早めて、産毛から育とうとしている髪を片っ端から引き抜いていく悪者です。ただしこのDHTにも役割があり、成人するまでは、DHTは性器形成に重要な役割を果たしているのです。ところが成人になり、性器が完成したら、DHTは行き場を無くしてしまいます。行き場を無くしたDHTが、あろうことかヘアサイクルを崩す。ここまでは解明されています。
DHT(ジヒドロテストステロン)が成人までは性器形成という重要な役割を担っていることがわかりましたね。
『AGA(男性型脱毛症)』の原因は『DHT(ジヒドロテストステロン)』です。男性ホルモン(テストステロン)には、体毛やひげなどに代表されるように、毛を生やす、という作用がありますが、前頭部と頭頂部の毛乳頭に多くある特殊な酵素(Ⅱ型5α-還元酵素)と結びつくと、ジヒドロテストステロン(DHT)という脱毛を促進する物質がつくられるわけです。
このジヒドロテストステロンは、成人まではむしろ必要不可欠な成長ホルモンであるわけですから、成人前の子供がAGA(男性型脱毛症)になるということは考えにくいと言えます。
続いて、FAGA(女性男性型脱毛症)、びまん性脱毛症ですが、これは女性がなる脱毛症ですね。前者はAGAと同じで、後者はホルモンバランスの乱れなどが原因で起こる脱毛症です。
ただし、女性で『サザエさん』の波平のように側頭部と後頭部だけを残してハゲている人はそういませんよね。従って、同じAGA(男性型脱毛症)でも少し様子が違い、髪の分け目や頭のてっぺんから薄くなるという傾向があります。この場合も考え方はAGA(男性型脱毛症)と同じで、未成年に目立つ傾向はありません。しかし、びまん性脱毛症の場合はホルモンバランスが原因ですから、未成年の場合であっても気を付ける必要があります。
牽引(けんいん)性脱毛症ですが、上記にリンクした記事にも書いたのですが、髪の毛をアップにしたり、ポニーテールにしたりして強く引っ張ることで脱毛が促進されて今う症状です。
FAGAと同様、女性が気にするべき脱毛症なので、女の子は髪に強く刺激を与えないように注意する必要があります。これに関しては未成年にもあり得ることなので、AGA(男性型脱毛症)と違って万全な対策が必要です。
また、脂漏性(しろうせい)脱毛症と粃糠性(ひこうせい)脱毛症ですが、詳しくは下記の記事に書きました。
これは主に、
が原因とされていますので、これも未成年の子供でもあり得る脱毛症です。特に未成年は、
などの最適化をしっかりしようという意識がありません。甘いものが好きですし、勉強を強いられています。自我が固まってきたら、家庭内の教育方針にも窮屈さを覚えてきます。それはストレスであり、それらがホルモンバランスを崩す原因となる可能性があります。ストレスを感じたら暴飲暴食や夜更かしをすることもありますし、ゲームやテレビなどの没頭することもあります。
そうなると、下記の記事にも書いたように、
血行不良などになり、薄毛を招いてしまう可能性があります。また、下記の記事にも書いたように、
『テクノストレス』というものがあります。
などといった電化製品と長時間向き合うことは、ストレスになります。そうするとそれ自体がまたホルモンバランスを崩す原因にもなりますし、様々な問題を引き起こす原因となります。更にストレスの害悪について知るためには、以下の記事を読むのがいいでしょう。おそらくネット上でこれよりストレスの害悪について詳しく書いた記事はありません。
また、頭皮の血行がよくないとそれ自体も薄毛の原因になります。そうすると、
といった脱毛症の原因になりますし、そうじゃなくても脱毛を促す結果になります。
円形脱毛症については、下記の記事に書きましたが、
『ササっとわかる薄毛の悩み解決最前線』(講談社)にはこうあります。
『円形脱毛症』と男性型脱毛症は原因が異なる
円形脱毛症は、自己免疫機能と関係が深い症状です。成長期にある毛根を、免疫機能が異物と勘違いして攻撃してしまい、脱毛するというのがそのメカニズムです。ストレスとの関係がよくいわれますが、たしかにそれによって免疫異常を起こしやすくなることはあるようです。数個以内の円形脱毛は、1年以内に自然治癒することが多く、皮膚科で治療する場合は外用薬のステロイド剤、局所免疫療法などで直します。円形脱毛症の皮下では毛を作る細胞は生きているので、ほとんどの場合はまたもとどおりに髪が生えてきます。
ストレスやホルモンバランスを乱すと免疫力が異常行動を起こし、頭皮を攻撃することがあります。するとそれが脱毛の原因となるので、注意が必要です。
ですが、これは文字通り先天性の疾患です。『ここまでわかる,ここまでできる! こどもとおとなの脱毛症診療 (MB Derma(デルマ))』にはこうあります。
先天性無毛症は出生時、もしくは生後間もなく脱毛がみられるが、他の身体的異常がない疾患である。多くは家族内発症があり、常染色体劣性遺伝である。臨床像は出生時に全く毛髪が認められないか、みられても生後1~6か月の間に脱落し、以後発毛しない。眉毛、睫毛、体毛も脱落することがあるが、歯や爪は正常である。
ここまでわかる,ここまでできる! こどもとおとなの脱毛症診療 (MB Derma(デルマ))
こうした先天性の疾患は、遺伝性疾患であるため根本的な治療はなく、義髪の装着が主な対処法となります。この乏毛症については思春期以降自然に毛髪量が増えることがあるので、根気よく待つことも大切です。
『ここまでわかる,ここまでできる! こどもとおとなの脱毛症診療 (MB Derma(デルマ))』にはこうあります。
限局性皮膚欠損が先天的にみられるもので、頭部は好発部位である。表皮、真皮、ときに脂肪織に至る皮膚欠損を認める。境界明瞭なびらんないし潰瘍が短髪あるいは多発し、のちに上皮化し委縮性の脱毛局面となる。
これに関しても、自然に発毛することは期待できないため、整容的に目立たない場合には放置してもいいが、治療を望む場合には委縮性の脱毛局面を切除する対策がとられます。
『ここまでわかる,ここまでできる! こどもとおとなの脱毛症診療 (MB Derma(デルマ))』にはこうあります。
前頭骨と側頭骨の縫合線上の前方の生え際に接した部位に出生時より認められる脱毛で、その形態が三角形を呈することから名称がつけられている。
こちらも先天性ですので軟毛が太く、濃い毛髪になることはまずないため、美容的に気になる場合には脱毛斑を切除する対策をとります。
『ここまでわかる,ここまでできる! こどもとおとなの脱毛症診療 (MB Derma(デルマ))』にはこうあります。
脂腺母斑は頭部に好発する良性腫瘍の一つである。出生時には黄白色~淡褐色の平坦ないし扁平に隆起する斑上病変であり、その病変的には通常毛髪は認められなし。
これは外科的切除で治療します。脂腺母斑もある程度の大きさになると、脱毛局面を周囲の毛髪で隠しきれなくなるため、早期に切除を行うことがあります。また、小型で美容的に問題がなくても、中年期以降に基底細胞癌などの悪性腫瘍の発生母地となるため、成人になる前に切除しておくことが望ましいとされています。
『ここまでわかる,ここまでできる! こどもとおとなの脱毛症診療 (MB Derma(デルマ))』にはこうあります。
トリコチロマニアは、1889年にフランスの皮膚科医Halloopeauによって名付けられた疾患で、抗しがたい衝動により、自ら毛髪を引き抜くことで脱毛病巣を生じる疾患である。小学生~中学生にかけての学童期の発症が多く、性差は女性に多いとされている。
この病因は、発症年齢によって異なり、幼児期、学齢期前に発症する例では単なる欲求不満の表現として理解され、一方学齢期発症例では患者の性格、心因が発症に関与するといわれています。
まとめると、未成年の子供はAGA(男性型脱毛症)にこそなりませんが、その他の脱毛症である、
であれば十分になる可能性があります。先天性に関してはある程度の対策しかありませんが、その他の脱毛症なら対策はあります。それはやはり、
などを最適化し、心身に無理を与えないようにすることが重要です。そこまで考えると、冒頭に書いた『子供の薄毛対策には家族の協力が必要です。私の両親はクリスチャンで、私はそうじゃありませんでした』という内容は、実はこの問題に大きく関係しています。私は『薄毛』でもなく『うつ病』でもなく、
という方向でこれらの『ストレス』が悪い方向に表面化しましたが、もし私が内にふさぎ込み、無責任にも似たストレスの解消法を取っていなければ、薄毛どころか、私の父のように『肝臓がん』などの重病を患い、命を落としていたかもしれません。
子供の薄毛対策には家族の協力が必要です。親と子の絆は確かに『ゆるむ』かもしれませんが、決して『切れる』ことはないのです。
赤ちゃんにみられる抜け毛というのは、往々にして先天性の脱毛症ですね。詳細はすべて先ほど書きました。
また、
という脱毛症状もあります。
新生児生理的脱毛は、髪が生え変わるために一時的に起こる脱毛です。AGA(男性型脱毛症)同様、前頭部や頭頂部に表れやすく、生え変わりに際して髪が一斉に休止期に入るために起こります。下記の記事に書いたように、髪の毛にはヘアサイクルというものがあります。
ですね。休止期に入ると髪の毛の寿命が終わった、というイメージですから、薄毛状態になってしまいます。しかしこの新生児生理的脱毛は、生後3カ月頃から抜け始め、6カ月になる頃には落ち着くので、一時的なものです。深刻なものではないので、過度に心配する必要はありません。
乳児期後頭部脱毛も同じように一時的です。赤ちゃんは寝返りやお座りができるまでの間、いつも寝転んで、後頭部に一定の圧力をかけ続けています。その圧力の摩擦によって後頭部の髪の毛が抜けてしまうことがありますが、これも成長とともに解決していく問題ですので、過度に心配する必要はありません。
頭の脂濡性湿疹に伴う抜け毛ですが、先ほども書いたように、脂漏性皮膚炎と脂漏性脱毛症というものがあります。
皮脂が過剰分泌し、こびりついたフケやホコリに細菌が繁殖し、頭皮が炎症してしまう脱毛症
赤ちゃんは新陳代謝が活発で、生まれてすぐは母親の女性ホルモンの影響が残り、皮脂が過剰に分泌されるため、脂漏性湿疹の原因となり、それが頭皮に出来ると、かさぶたと同時に髪の毛が抜け落ちることがあります。
しかしこれも『生まれてすぐは』と言っているように、一時的なものである場合がほとんどです。慎重に傾向を見ていけば、過度に心配する必要はないでしょう。
しかし先ほど挙げた先天性の脱毛症に加え、
ともなるとかなり慎重な対応が必要になります。
『ここまでわかる,ここまでできる! こどもとおとなの脱毛症診療 (MB Derma(デルマ))』にはこうあります。
日本人における先天性毛髪疾患
先天性毛髪疾患は、生まれつき毛髪に何らかの症状を呈する疾患の総称であり、実際は100種類以上の異なる疾患で構成される。それらは、主に毛髪症状のみを呈する非症候性の群と、さまざまな毛髪外症状を示す症候性の群に大別される。以下で、日本人における各疾患群の特徴・傾向を解説する。
1.非症候性先天性毛髪疾患
日本人では、常染色体劣性遺伝形式を示す縮毛症・欠乏症(以下、ARWH/H)の患者がすべての先天性毛髪疾患のなかでも最も多く存在する。ARWH/Hは、生下時より頭髪が過度に縮れていることに加え、頭髪の成長が数㎝で止まってしまうことが最大の特徴である。欠乏症の程度には個人差があるが、特に小児期では頭髪数が少ないことよりも頭髪径が細いために頭皮が見えやすくなっている症例が多い。
ここまでわかる,ここまでできる! こどもとおとなの脱毛症診療 (MB Derma(デルマ))
まあ、この後も専門的な難しい言葉がずらずらと並ぶのですが、簡単に言うと遺伝子的なレベルで、こうして先天性毛髪疾患に罹ってしまうということがあるんですね。
2.病侯性先天性毛髪疾患
病侯性先天性毛髪疾患の日本人における疫学データは存在しない。しかしながら、筆者の経験では tricho-rhino-phalangeal 症候群(以下、TRPS)の患者が本邦にはかなり存在すると思われる。TRPSは、欠乏症、西洋梨状の鼻および手足の指の形成異常を三徴候とする疾患である。常染色体優性遺伝形式を示し、TRPS1遺伝子の変異で発症することが知られている。
またこの後もずらずらと専門的な難しい言葉がずらずらと並ぶのですが、簡単に言うとこの病侯性先天性毛髪疾患も、先天性毛髪疾患と同じく遺伝子的なレベルが原因で罹ってしまうということがあるんですね。こういった先天性の症状は、対象が赤ちゃんが故、とてもセンシティブなことであり、慎重な対応が求められます。AGA(男性型脱毛症)が深刻ではないということではありませんが、少し重みが違ってきますよね。より細かい詳細は、ネットの情報ではなく、病院にてしっかりと専門医から聞くことが大切です。
遺伝子検査の流れ
家族歴、毛髪症状、毛髪外症状を総合して臨床診断を決定した後に、患者側の希望があれば遺伝子検査を行う。ただし、遺伝子検査を施工可能なのは大学病院などの研究機関の一部に限られているのが現状である。したがって、開業医や一般病院で先天性毛髪疾患の患者に遭遇し、遺伝性検査が必要な場合には、最寄で検査可能な病院に紹介する。もしくは、筆者に直接ご連絡いただくという選択肢もある。
この本は医師向けに書かれている専門誌なので表現が専門的で、『先天性毛髪疾患の患者に遭遇し、遺伝性検査が必要な場合には、最寄で検査可能な病院に紹介する』と書いてあります。医者からすれば、『患者に遭遇する』ということになりますからね。
医者同士でも取り扱える人が少ないというこの病気ですから、むやみやたらにネットで専門家ではない私が余計なことを書いてはいけません。何度も言うように、詳しくはこちらの本を直接購入してもらうか、専門医に聞いて、ちゃんとした検査をしてもらうのがいいでしょう。
先天性毛髪疾患の診察の具体例
以下に、筆者自身が経験した先天性毛髪疾患の症例を2例提示する。
病例1:2歳、女児
家族歴:両親に毛髪症状なし
現病歴:生下時より頭髪が縮れ伸びにくいことを主訴に近医皮膚科を受診し、同院からの紹介で新潟大学歯学総合病院皮膚科を受診した。
現症:東部全体に細く縮れた毛髪が認められる。長さは最長で3㎝程度。易脱毛や脆弱毛は認められない。眉毛・睫毛は正常。顔貌、歯牙、爪などに異常所見なし
臨床診断:先天性縮毛症・欠乏症
遺伝子検査:患児および患児の両親の末梢血DNAを用いてLIPH遺伝子を解析した。その結果、患児のLIPHに差異、c,736T>A(p.Cys246Ser)がホモ接合型で固定された。また、患児の両親はともに同変異をヘテロ接合型で有する保因者だった。
結果説明:以下の項目を説明した。
・今回同定されたLIPH遺伝子の変異は本邦における多数の先天性縮毛症・欠乏症の患者にも過去に同定されており、日本人に高頻度で存在する創始者変異(先祖を共通とする変異)である。両親はともに同変異をヘテロで有する保因者であり、患児には両親から変異が受け継がれたために発症したと考えられる。
(中略)遺伝子検査後のフォロー:検査後は、毎年1回のペースで再来してもらい経過観察を行っている。小学生になってから、1%ミノキシジルの外用を開始する予定である。
分かる人にはこれで分かると思いますが、分からない人には何のことかさっぱりわかりませんよね。しかし何度も言うように赤ちゃんの病気、先天性の病気というものはきちんと専門医の意見を直接聞き、正確な知識を頭に入れる必要があります。
私は医者ではないので書けるのはこれが限界ですが、専門書を見て思うのは、とにかく慎重に扱うべきだということです。しかし注目したいのは、『小学生になってから、1%ミノキシジルの外用を開始する』ということですね。本には、
現時点では、本症に対して著効する治療法は存在しないが、ミノキシジル外用がある程度効果を発揮したという報告がある。
と記載がありますが、これらの脱毛症に対しての確実な治療法はないにしても、AGAと同じようにミノキシジルが有効であるということは、注目に値します。
『AGA(男性型脱毛症)』の原因は『DHT(ジヒドロテストステロン)』です。男性ホルモン(テストステロン)には、体毛やひげなどに代表されるように、毛を生やす、という作用がありますが、前頭部と頭頂部の毛乳頭に多くある特殊な酵素(Ⅱ型5α-還元酵素)と結びつくと、ジヒドロテストステロン(DHT)という脱毛を促進する物質がつくられるわけです。(ちなみに女性の場合は、アンドロステンジオンという物質からもDHTが生じます。)
この前頭部と頭頂部の毛乳頭に多くある特殊な酵素(Ⅱ型5α-還元酵素)ですが、『ある対策』によって、この酵素の動きをある程度阻害することが可能です。それが、
という成分が含まれた薬の使用ですね。日本でそれが含まれた製品は、
ということになります。
男性型脱毛症の治療薬(育毛剤)として米国皮膚科学会や国際毛髪外科学会が効果を認め、薄毛治療の診察ガイドラインで強く勧めている塗る育毛剤はこの『ミノキシジル』だけです。日本の製品名は『ロゲイン』と『リアップ』ですね。
フィナステリドが含まれた『プロペシア』は、米国皮膚科学会の男性型脱毛症診療ガイドラインや国際毛髪外科学会の指針では『ミノキシジル』と共に強く推奨されており、アメリカ食品医薬品局(FDA)も内服して薄毛を改善する薬として唯一有効性を認めている薬です。
また、デュタステリドが含まれた『ザガーロ』は、2015年9月に厚生労働省に認可されたばかりの新薬です。しかし、その効果は抜群で、Ⅰ型の5α還元酵素にはフィナステリドの100倍の抑制効果、Ⅱ型には3倍の抑制効果があり、副作用も少なく、安全性が高いと考えられています。
これらは全て『診療ガイドライン』で最高評価の『A』がついている治療薬です。(男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版))ちなみに、診療ガイドラインとは、10人の専門医が考え得るさまざまな治療法について、国内外の論文から科学的根拠の有無を確認し、推奨度を5段階に分類した評価が見れるものです。
こう考えると、これら3つの薬がなかなか頼もしい薬に見えてきますね。