ピル(経口避妊薬)にニキビを治す効果がある?
あります。
しかし、『ある』というだけの理由でピルをニキビ治療に利用するのは『薬物乱用』です。何しろ、『麻薬』にも『幸福感を得られる』という効果があるからです。薬物乱用による副作用は、ときに取り返しがつかないものであると覚悟しましょう。
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下記の記事で妊娠とニキビの関係性について書きましたが、今回は『ピル』について考えてみましょう。
『これでわかるニキビの治療とケア~安易に抗菌薬に頼っていませんか?~』(南江堂)にはこうあります。
ピルを飲んでるんですけど、ニキビの薬を一緒に飲んでも大丈夫ですか?
ピル(経口避妊薬)は卵巣でのアンドロゲンの産生を抑制し、血清中のアンドロゲンレベルを下げて皮脂分泌を抑制する働きを示します。テストステロンの産生を抑えるので、血中テストステロンレベルの高いニキビ患者さんには一定の効果がみられる可能性が高いです。ただし、時にピル内服によるニキビ悪化の可能性もあります。ピルと抗生物質は併用してもとくに問題ありませんが、ホルモン療法の内服薬は作用機序から注意が必要です。
中にはその妊娠自体を避けようとして、ピルを服用する人もいるでしょう。その場合、ニキビが減ることがあるようですね。
やはりピルは『ニキビを治す薬』ではないので、ニキビ治療の為にピルを飲む考え方はやめておきましょう。決して体にいいものではありませんからね。ただ、抗生物質との併用は特に問題ないようですが、それはその処方した専門医によく聞いて、本当に問題ない組み合わせかどうか確認してからにしましょう。
ではここで、思春期にニキビができる原因と流れを見てみましょう。
なぜ思春期のケースを持ちだすかというと、ニキビができる原因というのは複雑であるからして、一例を出すことしかできないからです。ここではわかりやすく思春期にニキビができる原因と流れを載せました。
思春期にニキビができる原因は?なぜ10代に多いの? – Inquiry. |
また、性別とニキビの関係についても見てみましょう。
性別とニキビ
男性 | とにかく男性ホルモンが常に優位のため、ニキビができやすい |
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女性 | 男性ほどではないが、生理等の時期に黄体ホルモンの影響でニキビができやすい |
このようにしてニキビというのは『皮脂』が大きく関わっています。男性ホルモンが多い男性は、皮脂の分泌量が女性よりも多く、常にニキビが出来やすいと言えます。しかし女性も生理等の時期に黄体ホルモンの影響で、皮脂の分泌量が増えます。更に思春期の場合はアンドロゲン(男性ホルモン)の分泌量が多くなり、女性ホルモンに対して優位になります。そこで角質の異常増殖がおこり、毛穴を狭めてしまうわけです。
つまりこういうことです。
ホルモンバランスが崩れると、ただでさえ普段、洗顔不足によって皮脂が洗い流せない場合はニキビの原因となるのに、毛穴自体が狭くなる現象が起こるので、なかなか皮脂が洗い流せなくなり、ニキビができやすくなるわけなんですね。ですから女性にとって、ホルモンバランスが崩れることは頭を抱える現象であることは間違いありません。
ピルが効果があると感じている人は大勢いるようですね。例えば下記の双子のモデルのyoutuberさんは、過去に他の商品を勧めていて、コメントで『メディプラスゲル(その商品)はどうなったの?』と言われてしまっていますが、結局『ピルが一番効く』と発言をしています。
【 ニキビを0に 】双子 の ニキビ の 対処法 を 紹介 します!
ただ、冷静なコメントもあるようですね。
あるいはこういう意見もあります。
また、下記のyoutuberさんもピルの有効性について説いていますね。
【激変】顔中のニキビをたった1ヶ月ですっぴん美肌に!肌荒れ改善・ニキビを治す方法を紹介!【ピル・女性ホルモン・スキンケア】
彼女の場合、まず最初に下記の基本的なポイントを押さえて生活したそうです。
大事ですね。ではここで、ニキビができる原因を見てみましょう。
ニキビができる原因(内因性)
ニキビができる原因(外因性)
その他
ニキビは一つの原因によって発症するわけではないので、このすべての要素を最適化することが求められます。ですから、このようにしてあらゆる面を最適化する考え方は素晴らしいと言えます。ただ、彼女の場合なかなか治りづらいニキビがあり、生理不順でホルモンバランスが崩れていたとき、ピルを飲んだらホルモンバランスが一定に保たれ、ニキビがたった一か月で治ったと言っています。ニキビに本当に悩んだ人からすれば、このような現象はまるで『奇跡』だと思っても仕方ないでしょうね。
ただ、やはり情報発信者としての責任をもう少し持つように注意するコメントはあるようです。
とにかく、冒頭に書いた専門家の言葉を忘れないようにしましょう。『時にピル内服によるニキビ悪化の可能性がある』と言っていましたね。ですから、ピルを飲んでニキビが治ることもあるかもしれませんが、治らないでむしろ悪化する可能性もあるということです。
それに、この専門書はあくまでも『ピルとニキビ薬の併用』について質問されているだけですから、『ピルがニキビ治療に有効』だと言っているわけではありません。その他の数十冊の専門書を見ても、そのように書いてある本は一冊もありません。ピルがニキビに効くというのは、『副作用』です。
主目的とは違う作用。医薬品の使用に伴って生じた治療目的に沿わない作用全般。
ピルの主作用は、『避妊』です。『低用量ピル』にはこうあります。
- 計画的に妊娠を望んでいる
- 妊娠により母体にリスクが及ぶといわれている
- 望まない妊娠と中絶を繰り返している
OCは主に3つの作用で妊娠を防ぎます
- 排卵を抑制します
- 受精卵が着床しにくい状態をつくります
- 精子が子宮に入りにくい状態にします
このような目的を達成させるために服用するものです。ですから、『副作用目当て』で薬を服用するのは、ある種の『薬物乱用』です。先ほどの一般の方のネガティブな意見をまとめてみましょう。
これに加え、専門家が『ニキビが悪化することもある』と言っているわけですから、たとえ結果的にホルモンバランスが正常化し、ニキビが治ったとしても、それを多くの人に推奨するのはやめた方がいいかもしれません。よく考えればわかりますが、お酒やタバコ、麻薬をやっている人だって同じように思いますよね。
これをやっていると、体が嘘みたいに軽くなる
飲んだら嫌なこと忘れられてストレス解消になる
吸えば気分が落ち着いてくる
皆、『どうしようもない状態を救ってくれる』と、それらの服用を正当化しているわけです。しかし、たとえそうだとしてもそれが『一時的』なものであったり、長期服用のデメリットがあったり、見えない部分で健康を害していたり、法律を犯したり、あるいは多くの人に同じように当てはまるわけではない、ということを考えると、大勢の人にそれを勧めることはできません。
タバコはニキビの原因になる?喫煙がもたらす8つの美容悪化効果 – Inquiry. |
赤ワイン・ビール・日本酒等のアルコールはニキビの原因?それとも治療の対策の一つ? – Inquiry. |
麻薬などは特にそうですね。もし覚せい剤をやって『モヤモヤしていた頭がスッキリして、疲れが取れて、ハッピーになる』という効果があった場合、あなたは覚せい剤をやりますか?やらないのであればあなたは『薬物乱用』の意味を理解しているということになります。ピルに関しても同じことが言えるでしょう。本人の『救われた気持ち』はよくわかりますけどね。
薬を副作用目的で飲む例は他にもあります。例えば下記の記事にも書いたように、『ブロン』や『パブロン』ですね。
ED治療薬に習慣性や依存性はあるのか – Under”I” |
「2016年9月から10月にかけて全国の精神科医療施設における薬物関連精神障害患者の実態を調査しました。対象となった全2262人のうち、覚せい剤の使用経験があったのは1458人なのに対し、ブロンやパブロンゴールドをはじめとした市販薬の乱用は236人。一見すると少ないですが、これは氷山の一角にすぎない」
ブロンの有効成分であるリン酸ジヒドロコデインと塩酸メチルエフェドリン。前者はモルヒネに似た鎮痛作用があり、後者には覚せい剤に似た覚醒作用があるわけです。その効果はもちろん薄いのですが、大量に摂取するとなるとどうなるかわかりません。
記事にはこう続きます。
「市販薬にも依存性があります。徐々に飲む量が増えていき、ブロンの場合、1日に2瓶、約160錠を飲む乱用者はざらです。私が診察した最悪のケースでは、1日に700錠以上も飲んでいる患者がいました。これほど依存が進むと、いくら飲んでも倦怠(けんたい)感に包まれ、仕事にもいけず、人と会う意欲もなくなる。また、食欲もなくなり、やせ細っていきます」(前出の松本医師)
これらの薬にある『ある種の麻薬作用』を目的として、乱用する人がいるのです。記事にもありますね。
「1瓶飲むとけっこうキマる。だるさが吹き飛んで、やる気がでる。正直、これがないと会社に行けないんですよね。だからやめるなんて考えられない」
彼らはこの薬の乱用を正当化しています。彼らからすれば、副作用目的であろうが何であろうが、『どうしようもない状態を救ってくれる』救世主的な存在であり、使用方法なのです。
しかし残念ながら、このような乱用を長期的に行うと、たちまち『廃人化』します。しないと思って過信して油断していると、医師たちがなぜ警鐘を鳴らしていたのかを『後で』思い知ることになるでしょう。考え方は危険ドラッグとほぼ同じですよ。
危険ドラッグの本当の恐さ
薬、タバコ、お酒。こういった類の怖いところは、『人間の意識で想像しづらい部分とスピードで汚染していく』ということです。それゆえ、一時的にこれらの行為が正当化できます。
なんだ、こんなにノーダメージなら、全然ありじゃん!
なんていう考え方になってしまうんですね。例えば下記の動画を見てみましょう。2:00あたりですね。副作用についてのシーンです。
◎ピルは避妊効果だけじゃないって知ってた?ピル💊飲み始めました。
ピルの副作用について、何となくの雰囲気で誤魔化していますね。『ふーん…』などという感じで、濁しています。これも、彼女としては実感として、『副作用はあるかもしれないけど、自分はそうは感じないし、メリットの方が大きい』というものがあるからだと考えることができます。
人は、自分が『良い』と思ったものを正当化するものです。『確証バイアス』に支配されて、自分の意見を正当化するときもそうです。
自分の考え方が正しいと思い込みたいから、自分の考え方を後押ししてくれるような意見だけに目を向け、そうじゃない意見は見てみぬふりをする。
イギリスの哲学者、フランシス・ベーコンは言いました。
『副作用目的』で薬を飲むのはやめましょう。