サリチル酸はニキビに効果的?
サリチル酸はコメドに効きますが、その効果自体はあまり強くありません。
むしろ、ピーリング剤の主成分であるサリチル酸やグリコール酸は、角質層を科学的に溶かすと同時に、肌のバリア機能を破壊してしまうという、マイナスの結果を残すと主張する専門家もいます。
Contents|目次
ニキビにはサリチル酸が含まれる治療薬を使うと効果があると言われますが、どれくらいの効果があるか調べてみましょう。『これでわかるニキビの治療とケア~安易に抗菌薬に頼っていませんか?~』(南江堂)にはこうあります。
サリチル酸
サリチル酸には角質溶解作用があることから、コメドに対する効果を期待できる。しかし作用効果が弱く、また連用により刺激感を認めることからあまり処方されていない。
ではここで、思春期にニキビができる原因と流れを見てみましょう。
なぜ思春期のケースを持ちだすかというと、ニキビができる原因というのは複雑であるからして、一例を出すことしかできないからです。ここではわかりやすく思春期にニキビができる原因と流れを載せました。
思春期にニキビができる原因は?なぜ10代に多いの? – Inquiry. |
ここに『コメド』と出てきましたね。ニキビのあのできもの本体をイメージすればほぼその通りです。サリチル酸はこのコメドに効く、ということなのですが、その効果自体はあまり強くないということです。
局所治療に用いられる外用剤の特徴
抗コメド作用 | 抗菌作用 | 抗炎症作用 | |
---|---|---|---|
サリチル酸 | ± | – | ± |
抗生物質含有軟膏(ナジフロキサシン) | + | ++ | - |
抗生物質含有軟膏(クリンダマイシン) | + | ++ | + |
benzoyl peroxide | ++ | ± | - |
adapalene | ++ | ± | + |
tazorotene | ++ | ± | - |
++:強い作用、+:弱い作用、±:極めて弱い作用
参照『これでわかるニキビの治療とケア~安易に抗菌薬に頼っていませんか?~』(南江堂)
サリチル酸は大した効果がないですね。抗生物質の方が効果があるように見えます。ただ、抗生物質は問題がありますからね。下記の記事にたっぷりと書きましたので、詳細をご確認ください。
ニキビを抗生物質で治すと副作用で他の病気になる?~カギを握る腸内細菌~ – Inquiry. |
一部の流れをまとめてみましょう。
抗生物質で症状が改善することが多かったため(皮膚に直接塗布する方法でも、薬として飲む場合でも)、アクネ菌説は通用していた事実があります。だからこそ、ニキビ治療に抗生物質が使われていたのですが、しかし、ニキビの中には『アクネ菌が存在しないコメド』もあり、それが見てみぬふりをされていたんですね。
ん?これはアクネ菌がないけど…ま、いっか。ほとんどアクネ菌があるし、アクネ菌がニキビの原因だろ
という形で、アクネ菌がニキビの原因だと長い間考えられていました。しかし最近(2016年出版)の研究では、どうもアクネ菌ではなく、『抗生物質』の誕生と、『腸内細菌』のバランスが関係しているのではないかという見方が強くなっているのです。そう考えると、『サリチル酸はニキビに対する効果が弱い』という事実は、あまり判断材料にはならなくなってきます。何しろ、『ニキビに対して効果が強い抗生物質』が、ニキビの原因になっている可能性が出てきたんですからね。
『これでわかるニキビの治療とケア~安易に抗菌薬に頼っていませんか?~』(南江堂)にはこうあります。
ニキビにおけるCosmeceuticals
ニキビにおけるCosmeceuticalsは後述する市販薬に含まれているものが多く、表4に示す、サリチル酸は市販薬としても多くのものに含まれているが、油溶性を有し、コメド内の皮脂に溶解してコメドの毛包性角化を軽減させる効果を有する。また弱い炎症効果も有している。クレンジングで容易に除去されるため使いやすい点も長所である。角質除去作用を有することから、ピーリング効果を期待して抗加齢を目的として配合されることもある。
『表4』というのがこれですね。
ニキビに用いられるCosmeceuticals
原料 | 効果 | 備考 |
---|---|---|
サリチル酸 | 皮膚の軟化、角質除去作用 | 抗コメド作用 |
グリコール酸 | 皮膚表面の剥離 | ケミカルピーリング剤としても用いられる |
レチノール | 皮膚の活性化 | 抗加齢効果も有する |
ナイアシンアミド | 角質剥離作用の増強 | 皮脂分泌抑制効果も報告されている |
亜鉛 | 抗炎症作用 | 内服、外用で用いられている |
参照『これでわかるニキビの治療とケア~安易に抗菌薬に頼っていませんか?~』(南江堂)
サリチル酸は、
という特徴があるということです。冒頭では『連用により刺激感を認めることからあまり処方されていない』とありましたが、それは医師の立場から見た見解です。市販薬としてはサリチル酸は『効果が弱い』という特徴からも、ある種『毒にも薬にもならない』ということで、利便性が高いと考えられているかもしれません。
市販薬として薬局で買える薬は、素人が素人判断で誤って使用することを想定して、毒にも薬にもならないレベルの成分か、含有量で設定して販売されています。もちろん、用法容量を無視して大量摂取すれば別ですが、基本的にはそう大きな問題にならないようになっています。サリチル酸は、効果が弱いからして、医師たちはあまり注目していないようですが、その多様な効果と使いやすさから、市販薬には含まれることが多いようです。
合成界面活性剤等の有害物質が入っているかどうかを調べるサイト『美肌マニア』で調べると、サリチル酸含有の市販薬を調べられます。
例えば以下のような商品です。
ピーリング効果があるということで、ピーリング向けの商品、そして肌荒れやニキビ用の薬用スキンコンディショナーなどに含有されていますね。クレアラシル等の有名なブランドにも入っています。また、有名で言ったら下記のような商品にも含まれていますね。
※写真サイズが修正できず、大きく表示されています
このように、ニキビ対策の商品は星の数ほどありますが、どの商品が自分に適しているのかというのは、肌体質やニキビレベル等によっても全然異なってきます。サリチル酸配合のこのような市販薬でも効く人もいれば、むしろ悪化するという人もいるでしょう。
私の知り合いには頭痛薬を飲むとアナフィラキシーショックを起こす人がいますが、彼女は他の人と同じように、薬を飲めません。このようにして、人には体質というものがありますから、どれが一番効くのかということは一概には言えないのです。
それであれば、やはり皮膚科に行って自分に合った治療をしてもらうのが一番いいでしょう。少し前までは、イオウカンフルローションを処方されて終わっていた時代がありましたが、今ではもう違います。時代は進化していますので、もっと適切な治療法を指導してくれるでしょう。また、
皮膚科に行くまでもないんだよなあ…
という人がいる場合は、逆に言うとこれらの薬に頼る必要もないかもしれません。
ではここで、ニキビができる原因を見てみましょう。
ニキビができる原因(内因性)
ニキビができる原因(外因性)
その他
ニキビは一つの原因によって発症するわけではないので、このすべての要素を最適化することが求められます。例えばニキビはアクネ菌の増殖が原因だと長い間言われてきましたが、最近の研究ではそうではなく、例えば『抗生物質』の服用が関係している可能性もあるという説も上がっています。
ニキビを抗生物質で治すと副作用で他の病気になる?~カギを握る腸内細菌~ – Inquiry. |
ニキビの原因はアクネ菌!…というのは本当なのか?知られざる真実とは – Inquiry. |
ですから、そこまで重度なニキビではない場合、これらの他の要素を最適化することに注意を払った方がよく、また、むしろサリチル酸が配合された、あるいはそうじゃなくても効果がありそうな市販薬、治療薬を使っているからといって、これらの要素をないがしろにしている人は、ニキビはいつまで経っても治りません。
ニキビが治っても治っても繰り返しできる理由ってなに? – Inquiry. |
ただ、下記の記事に書いたように、ニキビというのは『赤ニキビ』になる前に食い止める必要がある皮膚病です。
もし、クレーターニキビ痕になろうものなら、一生その痕は消えないと覚悟することも必要です。そう考えると、
皮膚科に行くまでもないんだよなあ…
という発想は怖いですね。生活習慣その他を改善して治るくらいの『初期中の初期ニキビ』ならまだしも、そうじゃないニキビがいくつもできた場合は、やはり素人判断で市販薬を乱用するのではなく、皮膚科に行った方が確実でしょう。
『10万円のクリームより効く「何もつけない」美肌ケア』にはこうあります。
『ピーリングが新陳代謝を活性化させる』は誤り
従来から『ピーリング剤で古くなった角質層を取り除き、新陳代謝を活性化する』という説があります。しかし、この考え方はまったくの誤りだと私は考えています。(中略)本来、私たちの体に備わっているすべての機能は、健康を維持する為に、常に『ちょうどいい働き』をしています。肌の新陳代謝のちょうどいい働きを、ピーリング剤で活性化する必要もまったくないのです。むしろ、ピーリング剤の主成分であるサリチル酸やグリコール酸は、角質層を科学的に溶かすと同時に、肌のバリア機能を破壊してしまうという、マイナスの結果を残すことになります。
ピーリング剤の主成分であるサリチル酸やグリコール酸は、角質層を科学的に溶かすと同時に、肌のバリア機能を破壊してしまうというとありますね。皮膚科や美容皮膚科でサリチル酸等のBHAを使ってピーリングをすることがあります。