ニキビの原因はアクネ菌?
その説が常識です。
しかし、アクネ菌がニキビを引き起こすというのは数十年前の古い考え方で、厳密に調べると、『アクネ菌の多さとニキビの重症度にも、皮脂や男性ホルモンの量とニキビの発症しやすさにも、相関関係はない』という事実が存在します。
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ニキビの原因がアクネ菌(アクネ桿菌(かんきん))である。そういう記述を見るのは簡単です。私の手元にある20冊のニキビ専門誌、現実にいる数々の専門家、Webに広がっているいくつもの情報、クリニックのHP、それらのほぼすべてにその記述があります。
例えば、『医師によるニキビ・ニキビ跡・毛穴の開き完全治療マニュアル―ニキビは皮膚病の一種です!!』にはこうあります。
ニキビを悪化させる細菌とは?
皮脂や垢が毛穴に詰まってできた黒ニキビや白ニキビにアクネ桿菌が増殖すると、炎症が起きて、赤く腫れてしまします。これが赤ニキビです。つまり、黒ニキビや白ニキビを悪化させるのがアクネ桿菌というわけです。
下記の記事に書いたように、専門家によって段階は別れていますが、『ニキビのことならまかせなさい』(光文社)の著者の場合、ニキビに1~5までの段階をつけていて、下記のようになっています。
『医師によるニキビ・ニキビ跡・毛穴の開き完全治療マニュアル―ニキビは皮膚病の一種です!!』の著者ならこうですね。
それぞれによる予防と対策は記事を書きましたので、併せてご確認ください。
このうち、白ニキビと黒ニキビは、『皮脂や毛穴がつまってできるもの』であり、赤ニキビは『白・黒ニキビの中でアクネ菌が増殖してできたもの』ということを説いています。毛穴に皮脂や垢が詰まったコメドの状態では、皮膚を清潔に保つことで白・黒ニキビが治る可能性があるのですが、同時にコメドはアクネ菌の絶好の繁殖場所でもあるので、皮脂の分泌が盛んな思春期は赤ニキビができやすい時期だと言えます。
思春期にニキビができる原因と流れを見てみましょう。
思春期にニキビができる原因は?なぜ10代に多いの? – Inquiry. |
本にはこうあります。
アクネ桿菌が増殖し始めると、その部分は炎症を起こして赤く腫れます。アクネ桿菌が作り出す酵素によって、毛穴に詰まった皮脂やアカが酸化されて炎症がひろがり、やがて膿を持つようになります。これを膿疱といい、指で触れると少し熱っぽく感じられることもあります。アクネ桿菌はポルフィリンというオレンジ色の蛍光性の代謝物を分泌しているので、この段階で専門クリニックで肌を検査してみると、感染しているかどうかがすぐわかります。
つまりこういうことですね。
更にこのアクネ菌が出すある種の排泄物でもある『ポルフィリン』という物質は、紫外線を浴びることによって、活性酸素を出します。活性酸素というのは記事にも書いたように、ありとあらゆる病気の原因となります。ニキビももちろんそのうちの一つです。
紫外線はニキビの大敵!活性酸素がもたらす害は思っているより大きい – Inquiry. |
ニキビの最大の原因に等しいのは『活性酸素』!この対策が大きな予防になる – Inquiry. |
2001年に出された本、『ようこそ!私のニキビクリニックへ―さあ、お入りください。ニキビ完治への最後のドア…』にはこうあります。
いままでニキビは、細菌感染によっておきるといわれてきました。その犯人としてあげられているのが、アクネ菌です。ところが細菌感染だけではなく、酸化もかかわっていることがわかってきました。酸化によって炎症がひどくなるのです。その酸化の原因が、アクネ菌と紫外線によって生じる活性酸素です。アクネ菌はポルフィリンという代謝物を出しますが、このポルフィリンに紫外線が当たると大量の活性酸素が発生するのです。活性酸素は溜まった皮脂を遊離脂肪酸や過酸化脂質に変え、周囲の細胞を傷つけていきます。そこでニキビができたり、炎症がひどくなっていくのです。
つまりこういうことですね。
従って、アクネ菌というのは、
ということで、ニキビ問題を考える際に、避けて通れない要素となっています。
では、アクネ菌というのは殺菌してなくしてしまったほうがいいのでしょうか。『毛穴スッキリ!美肌になる!―黒ズミ、大人ニキビ、これで解決!』にはこうあります。
ニキビの原因は『過剰な皮脂』と『常在菌』
(省略)この炎症の原因は毛穴の中にいる細菌、そう、みなさんよくご存じの『アクネ菌』ですね。ところが、実はこれだけが犯人ではありません。肌にはさまざまな菌が存在していて『常在菌』と呼ばれています。アクネ菌もそのひとつですし、他に表皮ブドウ球菌、マラセチア菌などがあります。これらの常在菌は適度な量であれば問題なのですが、増えすぎると炎症を引き起こすので困ってしまいます。その増殖の要因は過剰な皮脂。皮脂を栄養源として一気に増殖するのです。つまり、毛穴に皮脂がつまるとそれを餌として常在菌がどんどん増えていき、毛穴の中で炎症が起きて赤ニキビができるというわけです。
アクネ菌は常在菌の一つで、他にも様々な常在菌があります。
皮膚常在菌の例
これらの常在菌は適度にあるのがいいのですが、皮脂の過剰分泌等によって増殖してしまうと、炎症などの症状が起きることになります。先ほどの紫外線の記事にも、
『活性酸素は、適度にあるくらいであれば、人間にとって必要不可欠なものです。食細胞が食べた細菌やウイルスなどの異物を溶かし、食細胞を常に空腹の状態にさせるからです。つまり、常に細菌やウイルスなどから身を守るために、メンテナンスをしてくれるんですね。』
と書きましたが、活性酸素もこれらの常在菌も、適度に存在する必要があるのです。ですから、完全に殺菌して殺すとか、活性酸素を完全に除去するとなると、それらが担うはずの役割が空いてしまい、不備が出てきます。
ニキビの発生を抑える『美肌菌』を増やすためにやるべきことは? – Inquiry. |
『素肌美人になれる 正しいスキンケア事典 (基本の美容シリーズ)』にはこうあります。
昔から『アクネ菌がニキビの原因菌だから殺菌すべき』という考え方があるようです。たしかに毛穴の中で繁殖してしまうとニキビを悪化させる一因になりますが、アクネ菌はそもそも皮膚の常在菌です。肌表面のバランスを正常に保つ働きを担っているので、すべて殺菌してしまうわけにはいかないのです。
アクネ菌や活性酸素は、たしかに増殖、繁殖、暴走によって人体に悪影響を与えますが、適度に存在する分なら問題なく、むしろ必要不可欠な存在なのです。しかしとにかくここまで見てきて、とにかくアクネ菌がニキビに大きく関係しているという事実はわかりました。しかし、近年になってこの考え方に変化が起きているのです。
インペリアル・カレッジ・ロンドンで生物学の学士号と修士号を取得したのち、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンおよびロンドン動物学協会で進化生物学の博士号を取得したアランナ・コリンが2016年に書いた『あなたの身体は9割が細菌』にはこうあります。
新しい研究によれば、これまで私たちは間違った場所を探していたようだ。アクネ菌がニキビを引き起こすというのは数十年前の古い考え方で、発疹の中を覗いてみたらアクネ菌がいたという、ただそれだけのものだ。同じアクネ菌が、ニキビを患っている人の皮膚にも健康な人の皮膚にも棲息しているという事実、アクネ菌が見つからない発疹もあるという事実は無視された。アクネ菌の多さとニキビの重症度にも、皮脂や男性ホルモンの量とニキビの発症しやすさにも、相関関係はなかった。
ところが、抗生物質で症状が改善することが多かったため(皮膚に直接塗布する方法でも、薬として飲む場合でも)、アクネ菌説は通用していた。抗生物質の投与はごく一般的なニキビ治療法で、多くの人は何か月も何年もその治療法を続ける。しかし、抗生物質は皮膚の細菌だけに作用するのではない。腸の細菌にも作用する。これまでにも語ってきたように、抗生物質は免疫系のふるまいを変える。ひょっとすると、それがニキビにかえってよくないのかもしれない。近年では、アクネ菌はニキビの発症を左右する要素でないことが明らかになりつつある。
アクネ菌が皮膚においてどんな役割を果たしているか、2016年、この著者が書いた段階ではまだ明らかになっていないようですね。しかしこの発想は画期的で、当サイトでも再三『皮脂をアクネ菌が食べて増殖し、コメドができる』と記載しています。それは、各専門家たちがそう言うからですね。しかし実際にはアクネ菌が存在しないニキビもある事実があり、そこは見てみぬふりをしていました。
ん?これはアクネ菌がないけど…ま、いっか。ほとんどアクネ菌があるし、アクネ菌がニキビの原因だろ
という形で、アクネ菌がニキビの原因だと長い間考えられていました。しかし最近(2016年出版)の研究では、どうもアクネ菌ではなく、『抗生物質』の誕生と、『腸内細菌』のバランスが関係しているのではないかという見方が強くなっているのです。
本にはこうあります。
しかしながら、いちばん近い道路まで数十キロメートルあるパプアニューギニアの高地や、インドネシアのスラウェシにあるシージプシー・ビレッジ(漂流民の村)で暮らす人にニキビはない。10代の若者にもない。オーストラリアやヨーロッパ、アメリカ、日本では、みんなニキビになっているというのに。(中略)花粉症と同じく、私たちはニキビを日常生活の一部とみなしがちだ。とくに10代後半のニキビはそうだ。けれども、なぜ未開地の人々にはニキビがないのだろう?
といった先進国では当たり前のニキビ。とくに10代なら余計に当たり前の常識として根付いているこの常識。しかし、実はこの常識は、『全世界の常識』ではないのです。どういうことでしょうか。その未開地の人々に、アクネ菌が存在しないとでも言うのでしょうか。そんなことはないのです。
これと同じポイントをついた話が『アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に!』にあります。
200年前から変わらない日々の営み
(省略)『アーミッシュの人はアレルギーが少ないって聞いたのですが、本当ですか?』『アレルギーって花粉症とかアトピーとかのことよね。私の周りでは聞いたことないね。ほとんど話題にものぼらないよ。』
ご主人も奥さんも同じ答えだ。『アメリカでは3人に1人がアレルギーがあるとも言われている。なぜ同じアメリカに住んでいて、アーミッシュの人はアレルギーにならないんですか?』
デービットさんは深くうなずきながら答えた。『それは私たちにもはっきりわからない。でも私たちは普通の人とはちょっと違う暮らしをしているから、それが関係しているのかなあ』
キリスト教プロテスタントの一会派でドイツ系の移民。宗教的な意見の相違から迫害を受け、200年ほど前にヨーロッパからアメリカやカナダに移り住んだ人々。
アーミッシュの人々の生活の特徴をまとめてみましょう。
彼らはこのような200年前(昔)から変わらない『自然との共生』を意識した生活を守ってきました。そのおかげで、あらゆるアレルギーとは無縁の生活をしているのです。ここで見えてきたのが、『先進国ほど21世紀病』にかかりやすくなるという傾向ですよね。
アトピー性皮膚炎、消化器トラブル、心の病気等。
そして未開地の人々にはニキビがない現実。これは一体何を意味するのでしょうか。現段階で言えるのは、アクネ菌はたしかにニキビと『相関関係(なんらかの関係)』があるということ。しかし、『因果関係(確実な関係性)』があるとは断言できず、ニキビの原因はもっと他にあるということです。
たしかにニキビができる原因はたくさんありますからね。
ニキビができる原因(内因性)
ニキビができる原因(外因性)
その他
これらすべての最適化が必要です。もしかしたら、ニキビというのは『人が道から逸れたサイン』なのかもしれません。そう考えると、この話の奥行きはとてつもなく重く、深くなりますね。私は下記の記事を書いていますので、感覚的にその問題について敏感です。
また今後ニキビとアクネ菌の関係性が判明したとき、追記していきます。