ハニワくん
先生
なぜ文明は『川』の近くで興ったの?わかりやすく簡潔に教えて!
『水』が何よりも重要視されたからです。
ハニワくん
博士
農耕生活を続けていると、次第に人口が増えてきました。
またちょうど世界的に『乾燥地帯』も増える傾向にありました。すると、徐々に『農地不足』が深刻化してきます。農耕で生活していた人々にとって水はあまりにも重要でした。そして人々は水を求めて移動し、川の近くで『世界四大文明』も興りました。
- メソポタミア文明
- 中国文明
- インダス文明
- エジプト文明
重要なのは、この4つの場所がすべて『大乾燥地帯』だったということです。乾燥していたからこそ大河を求め、水の付近で文明を作ったわけですね。
博士
ハニワくん
先生
農耕と定着生活
1万年前~5000年前
人類の大きな分岐点は『1万年前』!カギは氷河期の終結。つまり『温暖化』である
上記の記事の続きだ。このようにして長い時間をかけて、ついに1万年前、氷河期が終わって地球で本格的な『温暖化』が始まる。ここが大きな分岐点だ。この温暖化によって、現代人に近いライフスタイルを構築し始めるようになってくるからだ。人類は農耕や牧畜を始めるようになり、『生産経済』を知るようになる。
獲得経済 | 狩猟・採集 |
生産経済 | 農耕・牧畜 |
そして、人々は集落を作るようになる。そこで集団生活をするようになるわけだ。この時代を『旧石器時代』という。
このように洞窟等で暮らしていた人々は、村を作って集落を作り、そこで集団生活をするようになる。そして下記の記事に書いたような流れが作られるわけである。
秩序の必要性
『世界の神話 神話の生成と各地の神話。神々と英雄の活躍』にはこうある。
かつて狩猟採集時代には食べ物がなくなれば他人のものを奪う略奪は当然だった。略奪の過程で死傷するのも当然のこととされたが、多くの人が1つの場所に集まって住んでこんなことがあれば、共同生活自体が不可能な大混乱が起こるしかない。それで共同生活する構成員は自ら進んで秩序を守るようになる。泥棒を禁じ、殺人や、他人を害する行為を禁じた。つまり道徳や倫理が必要になった。
『狩猟採集時代には食べ物がなくなれば他人のものを奪う略奪は当然だった。略奪の過程で死傷するのも当然のことだった』。人間というのは、ほぼ動物に近い生き方をしていたのだ。食べ物がなくなれば人のものを奪い、相手を殺すこともあった。性生活も乱れていた。しかし、当時はそれが『乱れている』という意識もなかったわけである。
そしてそこに『宗教』の力が加わるわけだ。
- 一夫多妻
- 殺人
- 他人を傷つける
- 盗む
- 嘘をつく
こういった行為がタブーとされるようになり、ルールというルールが人間社会に登場するようになった。世界6大宗教も、そうじゃない消滅した古代宗教も、その大部分はこの農耕時代の初期に生まれたものである。そして人類4大文明も狩猟採集時代から形成されていた神話をルーツにしているのだ。このあたりの記事は下記の記事にまとめているので、併せて確認していただきたい。
労働力
そのようにして人々は集落を作って集団生活をし、農耕と定着生活が始まるわけだ。その中でやはり重視されたのは、
- 広い土地を持つ
- 多くの労働力を持つ
ということだった。ここでいう『労働力』とはまさに『子供』のことだった。
このようにして母系社会が父系社会に変わることで、労働力がある人間が強くなり、冒頭に書いたような流れ、つまり『国家を作る』ような動きが見られるようになってくるのである。そして、その労働力の一つである『子供』を増やすことも重視された。こうした背景も手伝って、人類は農耕と定借生活に入ると、人口が増えていくのである。
農地不足の深刻化
しかし、
- 人口の増加
- 乾燥地帯の増加
という2つの要因によって、徐々に『農地不足』が深刻化してくる。乾燥したらどうする。何を求める。そう。『水』である。こうして人々は『灌漑農業』を知るようになるのである。
人工的に水を土地に供給して行う農業のこと。
原始時代→旧石器時代へ。そしていよいよ、この灌漑農業を軸にして人類は『大きな文明』を作るようになるのだ。『四大文明』である。
四大文明
- メソポタミア文明
- 中国文明
- インダス文明
- エジプト文明
この中で最も古い文明は、メソポタミア文明である。紀元前3500年、今から5500年前ということになる。そしてすぐにエジプト文明が生まれた。下記の記事でさらにそのことについて詳しく触れている。重要なのは、この4つの場所がすべて『大乾燥地帯』だったということだ。乾燥していたからこそ大河を求め、水の付近で文明を作ったのである。
だが、大河というのは水だ。水は生命の源でもあり、『災厄の源』でもある。そうして人はそこで治水工事を覚え、それを利用して灌漑農業を作り、生産力を上げていくことになる。
河川で行う改良工事。治水対策の一つ。
ちなみに、『ノアの箱舟』もこの灌漑農業が生活の軸だった時代に生まれた神話の一つである。当時、水はとても貴重だった。人々が生きていくために必要不可欠な、命の恵みだった。しかし、自然災害はあった。人間が予測できない出来事がいくつもあり、とくにこうして『水』を通して人はその被害の甚大さを思い知ることが多かった。そして、洪水や稲妻等を通し、人はそこに『太刀打ちできない存在』を見たのだ。
紀元前3500年、今から5500年前、世界最初の大文明『メソポタミア文明』が生まれた。ほとんどは乾燥対策として、大河の近くに人々が移動したことが理由だ。だが、
- オルメカ文明(紀元前1200年前)
- マヤ文明(紀元前2000年前)
といった、乾燥とは関係ない地域でも文明は生まれた。しかしそこにもエーゲ海があったり、トウモロコシの生産が順調だったりして、根幹には『生産』、つまり『生きていくためのエネルギー源の確保』があったのである。
『満足』と『贅沢』
ソクラテスは言った。
そう考えると、ただ生きていくために生きていた時代は、『満足』を追い求め、それが満たされると人々は『贅沢』を追い求めるようになったと考えることができる。
『マズローの5段階欲求』で考えてみよう。『マズローの5段階欲求』とは、人間の欲求を5段階に分けて示したものである。その人間の基本的欲求を低次から述べると、以下の通りである。
- 生理的欲求(Physiological needs)
- 安全の欲求(Safety needs)
- 所属と愛の欲求(Social needs / Love and belonging)
- 承認(尊重)の欲求(Esteem)
- 自己実現の欲求(Self-actualization)
出典:『マズローの欲求5段階説』
まず一番下に『生理的欲求』があることがわかるわけだが、まず、人間も含めたあらゆる生命は、自分の命を守るために、そのエネルギー源を確保したり、睡眠を取ったり、排せつ物を処理したりする必要がある。
『狩猟採集時代には食べ物がなくなれば他人のものを奪う略奪は当然だった。略奪の過程で死傷するのも当然のことだった』。人間は原始時代、そういう動物と変わらない時代を送っていて、そして旧石器時代に入り、更に農耕と定着生活を送るようになり『新石器時代』に入るわけだ。
人間の『低次の欲求』は徐々に満たされるのが『当たり前』になっていく。そして人は満足から『贅沢』を求めるようになり、自己実現という名の様々な欲求を満たす過程で、人に格差がつくようになるのである。『エリア別だから流れがつながる 世界史』にはこうある。
力をもつものがほかの人間を使役し、階級の差が生まれ、王や神官、貴族による君主国家が全世界で始まろうとしていた。
人々に格差が生まれるようになった起因をひも解くと、人々が満足から『贅沢』に目を向けるようになった事実にたどり着くようになる。
ルソーが書いた自身の著書『人間不平等起源論』の文中にはこうある。
「人間が一人でできる仕事(中略)に専念しているかぎり、人間の本性によって可能なかぎり自由で、健康で、善良で、幸福に生き、(中略)しかし、一人の人間がほかの人間の助けを必要とし、たった一人のために二人分の蓄えをもつことが有益だと気がつくとすぐに、平等は消え去り、私有が導入され、労働が必要となり、(中略)奴隷状態と悲惨とが芽ばえ、成長するのが見られたのであった」
- 階級
- 身分
- 貧富
- 差別
このようなものがあると、確かにそこには格差が生まれ、人間関係が不平等となる。ルソーは、
ルソー
と言って、自然状態に戻ることが最善だと考えた。とにかく、こうして人々は文明を作った。大河の近くで作り、そしてそこで数々の神話も生まれた。文化も、命も生まれた。人間が栄えた。栄えるために、水が必要だったのだ。
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