キリスト教の礎 イエス・キリスト
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この話の続きだ。いや、この『殺人鬼』が生まれたときの話だ。殺人鬼は、イスラム過激派だった。その前に、これを書いておかなければならない。『世界がわかる宗教社会学入門』にはこうある。
宗教には、テロリズムのイメージがある。宗教とテロは関係性が強いのか。これはもちろん誤解で、実際はテロリストが宗教を口実にしているだけ。
さて、しかしこのイスラム過激派は、別に自分たちのことを『過激派』とは思っていない。物心ついたときからイスラム教の親の下に生まれ、イスラム教が浸透した国に生まれ、予言者ムハンマドとクルアーンを持って、アラーを拝めるのが普通だった。 前述した本にも、こうある。
『イスラム教は誤解されている。イスラム教ほど宗教に敬虔な教えはない。』
彼らにとっても別に、特別なことではなかった。皆やっている。親も、友達も、好きな人も、偉い人も、皆やっている。だから、間違っていると思わなかった。 (他の国の人が間違っているんじゃないのか。) とにかく人間なんてみんなそういう風に、自国のことをベースにして考えるものだ。それは日本人も、アメリカ人も、ロシア人も、韓国人も、中国人も、インド人も、北朝鮮人も、皆、同じはずである。
ある日、彼は『キリスト教徒』を名乗る人間が治める国が、自分たちの信仰を否定し、まるで『魔女狩り』の様なイメージで自分たちを制圧し、改宗させるか、絶滅させようという計画があることを秘密裏に知った。
彼は、今まで生きてきた自分の人生が否定されたこともさることながら、自分の最愛の家族や、信仰するアラー、ムハンマド、クルアーンという聖なる領域を侵されそうになったことで我を見失い、 (そんなことをさせてたまるか!キリスト教徒の悪いところは、昔からの言い伝えで知っているぞ!) と激昂し、信頼できる友人たちと、そのことについて真剣に話し合った。
(中略)
中略も何も、この話は全てフィクションだが、この間に、実に色々なことがあったことだろう。だがとにかく男は、突如自分の人生を奪われそうになったことで、気が動転したのだ。
例えばアリの巣があったとしよう。アリの巣をせっせせっせと築き上げた。長い時間をかけ、実に多くのアリたちがそれをコツコツと創り上げた。女王アリの居場所は一番最深部に。それを守るかのように、せっせせっせと一生懸命創り上げたのだ。 そこに、
アリたちは、どう思うだろうか。この人間にも、言い分はもちろんあるだろう。家にアリの行列が出来たなら、それを駆除しようと思うのは、よくある発想だ。
だが、『アリが食物を貪って害を及ぼした』のか、あるいは『ただ行列していただけ』なのかという些細な理由でも、また状況は大きく変わってくるような印象を持つ。だがとにかく、彼らの間に、それは起きてしまったのである。
(中略)
男はテロリズムに支配されるようになっていた。それというのも、(どちらが悪いのかわからないが)この戦争によって、最愛の家族を、友を、失ったからだ。
(こんな世界は、間違っている)
彼の心が叫ぶ。そして彼は爆弾を持って、とある建物へ向かった──。
その続きがこの記事だ。
マテオによる福音書 第5章。