名言を自分のものにする

 

> > >

 

プロフェッショナルマネージャー

■著者:ハロルド・ジェニーン


特に私が印象に残ったのは、解説のファーストリテイリング社長、柳井正のコメントである。

 

『成功したベンチャー企業の経営者は、なぜか業界団単に集い、人脈を広げると称して、夜の会合やパーティに好んで出席する人が少なくない。だが、異業種交流会も、お客様や社外の人間と接することの少ない内側の仕事をしている人にとっては、ときには必要だと思うが、やりすぎても効果がないだろう。

 

『人脈』といっても、その人が自分を信頼してくれるという状況にならない限り、人脈があるとはいえない。人脈をつくるには、自分の本業に専念することで信頼してもらうしかない。本業で結果を出せば、全然知らない人でも、訪ねれば会ってもらえるし、どんな質問にも答えてくれるものだ。

 

エゴチズムの真の害悪は、抑制されない個人的虚栄心が高進すると、その本人が自分自身のエゴの餌食になってしまうことだ。彼はやがて自分自身がおこなった新聞発表や、部下のPRマンが彼のためこしらえた賛辞を信じ込むようになる。そして自分自身と虚栄心の中にのめり込んで、他人の感情への感受性を失ってしまう。常識も客観性も失われる。そして意思決定の過程を脅かす厄介者となる。

 

僕は夜の会合やパーティを遠慮させてもらっている。僕はずっと失敗を続けてきたが、確実に一勝は挙げた。それでも『ずっと失敗は続けてきた』という思いの方が僕にとっては強いからだ。僕がやるべきことは、まだまだ本業に専念することだ。』

 

このコメントは、そっくりそのまま私の人生で役に立つ瞬間があった。エゴチズムに支配された、これと状況がぴったり当てはまる取引先の経営者に、この文章をそっくりそのまま投げつけてやったのだ。

 

当然、人間は痛いところを突かれると、反発して自己防衛する。だから、私とその経営者との関係は縁が切れたが、私は間違ったことを言っていない。とても清々しい心を持って、人生を先に進めることができた。

『利益』の追求のため、『コンコルドの誤謬』を重んじるその人の経営法も、わからないことはない。だが、『利益』を重んじすぎ、見失っていたものが、人として大きな損失だったのだ。

周りの人間は皆、その人の評価を高くしていた。『すごい○○がいる。』と。だが、私や、柳井氏から言わせれば、その人はただの『欲張り』だということだ。『人間として幸せになるために利益を追求する』はずなのに、いつの間にか、『他の人間を軽んじ、自分の利益だけを追求する、人間性を失った獣』になってしまっていたのだから。

 

まあ、私も同じ経営者。気持ちは分からないでもない。経営者は、鬼にならなきゃいけないし、孤独に耐えなければならない。

経営者とは、どれだけその孤高の道を生きる、覚悟が固まっているかということにかかっているのではないだろうか。

 

 

 


[初読年齢 24歳]

著者:一瀬雄治 (Yuji Ichise)


プロフェッショナルマネージャー

スポンサーリンク

広告

 

↑ PAGE TOP