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考察
『自己の重要感』とは、自分が重要な存在だと認められたことの認識。つまり、軽んじられて、見下された、とは正反対の認識である。まずゲーテが言うのは、この自己の重要感を相手に認識させるべきだということ。それによって、相手の優越感と慢心を煽り、油断と隙を生ませるべく一つの要因となる。
かの『レッドクリフ(赤壁の戦い)』において、曹操軍の遣いが、旧友である周瑜に近づき、情報を盗もうと企んだ。周瑜は、久しぶりの旧友との再会に喜んだフリをして、酒を飲み、酔っ払い、偽の情報をさも『機密情報』かのように仕立て上げ、酔いつぶれてやむを得ずそれを盗まれてしまった、という状況を故意に作り上げた。『メタの世界』を操り、『表面上の勝利』は、相手にくれてやったのである。そして『水面下の主導権』を握った。まさしく今回のゲーテの言う通りの事例である。
『人間が自己の敵対者の長所を認めるとき以上に大きな利益はめったにない。このことが彼に、敵対者に対する明確な優越を与える。』
この場合周瑜は、自分が馬鹿になりきって、『相手の優越感』を煽り、慢心させ、転落させて、最後に『自分の優越感』を得たわけだ。ゲーテが言っている『彼』というのは自分で、『敵対者』が相手だから、『自分が相手を認めれば、自己の重要感が満たされ、相手が優越感を覚える』ということではない。
『敵対しているような忌み嫌うべく存在ですらも、正当に評価する冷静沈着な平常心を持っている』。そういう公明正大な見識と器の大きさを自分で確認することができるということだ。往々にして忌み嫌う敵対者の長所を褒められる人間はいない。だが、そういう曇った目で相手を見誤ると、結果的に自分の立場が不利になる。
戦局を有利にするためにも、相手の長所や短所は全て公正に評価し、そのうえで戦略を立てなければならない。それが結果的に自分の勝利へと繋がり、『優越』を与えることになる。それから、『敵対者』というぐらいだから、相手もこちらのことを敵視している。だが、そういう負の渦にいる真っ最中に、『それを持っていたら敵対などするわけがない曇りのない眼』でもって相手を観ることができたら、それはもう『敵対』を超越した境地にいることになり、ただ敵対している相手よりも上の境地に立つことができる。そういう意味でもある。
そもそも、お互いがその境地にいたら『敵対』などしない。争いをする姿は人間の真の姿からはかけ離れているからだ。勝ち負けの話で言うならば、実際は先にその負の渦から抜け出した人間が勝ちなのである。
ブッダは言った。
※これは運営者独自の見解です。一つの参考として解釈し、言葉と向き合い内省し、名言を自分のものにしましょう。
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