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考察
目の前に、行くてを遮る獅子がいる。そう想像しただけで、獅子の怖さを知っている人は、身震いする。
知らない人は、今すぐ動物園に行くといい。私は25,6歳といった、人生で最もエネルギッシュな頃、ボクシングの経験もして、毎日トレーニングをして、という生活を続けていたその時、とある機会で久々に動物園に行くことになった。
そんな私だ。動物をある種のライバルの様な目で見て、勝てるかどうかイメージトレーニングしながら動物を見て回った。
大体の動物には、勝てた。というか、敵意をむき出しにする動物があまりいなかったのだ。
ゾウやキリンは、確かにとてつもなく大きかった。
大人になって初めて見たから、その存在がとても不思議だったが、彼らに敵意はなかった。従って、私が勝手に『ガンをつけたが目を逸らした人間』を見た時の様に、『勝ったと思い込んだ』だけかもしれないが、恐怖心が全く無かった。
しかし、その小さな動物園に、私が心から(これには敵わない)と思ったのが、二種類だけいた。それが、『シロクマとライオン』である。
シロクマの方は、外人プロレスラーよりも大きなガタイを想像すればわかりやすく、その大きなガタイの熊が、猿の様に機敏に檻の中をぐるぐる回っていた。私は鍛えているからすぐにわかった。
これに本気で襲われたらまず勝てない。
巨大な動物の恐ろしさを知った瞬間だった。そして極めつけは、百獣の王、ライオンである。
これはもう、こちらを『エサ』を見るかのような眼つきでじっと睨み、静と動のメリハリがすごい。じっと睨みつけて動かないと思ったら、こちらがカマをかけてサッとライオン側に動くと、それに合わせてこちらに近づいてきて、一歩もひるまず、全速力で私を『狩ろうと』してくる。
あの敵意と野性さは、桁外れである。
どこに逃げても、間違いなく捕獲され、食られてしまうと悟った。
さて、目の前にそんな獰猛な獅子がいる。
たいていの人はそれを見て引き返してしまう。その理由は、今書いたばかりだ。一言、『恐怖』なのである。
しかしもちろんヒルティのこの言葉は、比喩だ。実際に目の前にライオンがいるわけではない。それに対峙した時に感じる『恐怖』と同じだと表現しているだけだ。試練や困難を目の前にして、そこに『壁』を感じてしまうのである。
では、観点を変えよう。
カントは言った。
目の前にあるのは、『労働』という、いかにもストレスを負いそうな、ため息の出そうな、『負荷』である。しかし、その労働をした後に飲むビール、食べる食事の、何と美味しいことか。
『限界効用の逓減』とは例えば、仕事終わりの一杯目のビールは美味いが、二杯目、三杯目と味が落ちていく現象のことである。
つまり、『行くてを遮る獅子を見て引き返す人』は、まるで、『二杯目以降のビールの味』だけを味わって、この世を生きる人のようなものである。
人間にとって恐怖や負荷というものは、パートナーの様なものだ。それとどう付き合っていくかによって、人生に大きな差が出る。
※これは運営者独自の見解です。一つの参考として解釈し、言葉と向き合い内省し、名言を自分のものにしましょう。
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