金持ち運を掴む黄金法則
今回のPRESIDENTの特集、
『金持ち運を掴む黄金法則』 の話は、なかなか真理をついている。
お金持ちではない私がいうのもなんだが、私にも世の中の"偽物"と、"本物"を見極めるぐらいのことはできる。今回の記事を通して、大いに内省をする価値があると判断し、自分の今までの半生や、読んできた書物、見てきた人間関係を思い返しながら内省する。
今回の記事で8つの自然の理法に集約された、
原理原則。
1.良い仕事ということに集中している
人を喜ばせるために仕事をしている。稼ぐ人というのは、お金儲けの為だけには働いていない。まわりの人を楽しませたり、社会に貢献するために働き、その結果としてお金持ちになっている。お金を追いかけて生きている人でも、たまたま時流に乗って、一時的に羽振りがよくなることはある。しかし、そうした稼ぎ方はけっして長続きしない。
■金儲けを求めることは、野心ある人間なら必ず通る道だ。だが、私も含めた幾多のその野心家は、金に支配され、金に重きを置き、人としての価値を失ってしまう者が多かった。
2.大胆だが、大雑把ではない
ときに人を驚かせる大胆な行動をしたかと思うと、一方でこまやかな気配りも忘れない。稼ぐ人の行動を観察していると、このような二面性を持っていることに気づかされる。ロマンチストも多いようだ。自分の中に高い理想があり、その実現のためなら
苦労もいとわない。ときにはみんなが恥ずかしがってやらないようなことも平気でやるので、まわりはびっくりする。
社会貢献の意識が無く自分に都合のいいようにふるまうのは、たんなる自己中。それに対し、高い使命感や自分なりの哲学を持ち、みんなの役に立つものを生み出すために必要なこだわりを貫く人がエゴイスト。こだわるところには徹底的にこだわって、貫けばいい。成功する人はこうした頑固さを見せたかと思うと、それ以外のところはこだわりが少なく、むしろ周囲にうまく合わせていく柔軟さを兼ね備えている。
自分の中で譲れる部分とそうでない部分が明確に区別できているので、人に対して素直になれるのだ。柔軟なところは極端なくらいに柔軟なので、いままでとまったく違うことを、それもいきなり初めて、まわりを驚かせることもある。
しかし、根本的なところでブレがないので人に好かれるし、人と一緒にお金も付いてくる。その逆が確固たる自分の軸が無く、『あれが儲かりそう』『いや、こっちがいい』とあちこちに手を出す人だ。このような人の周りには、お金目当ての人しか集まってこない。その結果、お金の切れ目が縁の切れ目になる。
■行動を大胆にできる人間は、人生が一度しかないことを知っている。だから、それを知らない人から見れば(それは多くの人に当てはまるが)、大胆に見えるが、本人はただ、その事実から目をそらさず、理解し、そして行動に移しただけだ。
ちょうど、400m走の最後に全力疾走をする人のそれによく似ている。このレースの距離が400mだと知らずに、永遠に続くと思っている人は、当然、余力を残しながら走ることになり、急にダッシュをした彼らの行動は、大胆に見えるだろう。
また、社会貢献意識がなく、ただの金儲けのために自分の築いた地位や財産を
正当化する人間が少なくないが、私が見てきた、財をなした人間は皆、金儲けを10割として考え、手段を選ばず、社会貢献の姿勢は、大体がそれをカモフラージュするための偽善が多い。
そういう人間の心は歪曲している。傲慢、裏切り、早死に、脱税、逮捕、告げ口、隠ぺい、私はそういう、人間の在るべき姿を軽んじ、魑魅魍魎が跋扈する世界に生きる人間から、よく、『もったいない』と言われることがあるが、"利"の為に"義"を軽んじ、自分を曲げ、楽をしてまで金儲けをする方が、よほど人生を無駄に過ごしている。
『自分に正直であることは、なんと困難なことだろう。他人に正直である方が、はるかに易しい。』
byエドワード・F・ベンソン
一度しかない人生を、たかだが地球の一つの生命である人間がつくった"金"に支配され、真理をおざなりにして成功者を気取る。それで人間としての矜持が満たされるのであれば、その誇りも大したことはない。
彼らの共通点は、こような"真理"をついた人間を脅威に思うところだ。
当然、見栄が強い人間が多いため、表面ではむしろこうした真理に批判や攻撃をし、自己防衛を図る。だが、真理とは心の内部に必ず突き刺さる。私自身も、真理をもって毅然と対峙した人間が数人いて、対象者はすべて5000万以上の財産を持っている者だったが、ある人間は私(正確には真理)と向き合い、そして敗北を認めることを"損"とし、その"損"を穴埋めするために私の資産を横領し、またある人は、私(真理)に対して開き直って詭弁をまくしたて、弁護士を用意してまで、自己弁護を図った。
それほど、"真理"とは強大で、驚異的な力を秘めているのだ。その"真理"に逆らい、あるいは知らずして財を成してしまった人間は危険だ。彼らのような人間のことをうまく言い表しているのは、プロフェッショナル・マネージャーを人生の座右の書とする日本一の経営者。ファーストリテイリング社長、柳井正のこのコメントである。
『エゴチズムの真の害悪は、抑制されない個人的虚栄心が高進すると、その本人が
自分自身のエゴの餌食になってしまうことだ。
彼はやがて自分自身がおこなった新聞発表や、部下のPRマンが彼のためこしら
えた賛辞を信じ込むようになる。そして自分自身と虚栄心の中にのめり込んで、他人の感情への感受性を失ってしまう。常識も客観性も失われる。そして意思決定の過程を脅かす厄介者となる。』
本当は彼らも理解っているのだ。
だがお金や権力があれば、いくらでもそれを誤魔化し、正当化できるため、これを戒めない。
そして真理とは、一時的に誤魔化すことはできても、変えることは絶対にできない。
気づいたらそうして焦って膨らませた膨張は、はじけているだろう。それこそが、成功を追求する人間が大いに留意し、気をつけなければならない、よくある人生の落とし穴だ。
また、
自分の中で譲れる部分とそうでない部分が明確に区別できているということの背景にある真理は"不易流行"といい、『あれが儲かりそう』『いや、こっちがいい』とあちこちに手を出す人の背景にある真理のことを"弾み車効果と悪循環"というが、どちらも決して見て見ぬふりをしてはいけない、重要な要素、理法である。
不易流行。
私も兼ねてからこの言葉を座右の銘として置いているが、まだまだ未熟だ。それに、かつては私もこの悪循環の典型だったといえる。まだ8つのうち2つだ。黄金の原理原則をその手に取るのは、容易ではない。
by:一瀬雄治 (Yuji Ichise)
サルベージエンタープライズ株式会社代表取締役社長。
1983年、東京都生まれ。