風林火陰山雷
私も常々人生のモットーにしている兵法、俗に言う『風林火山』とは、語呂がいいから短縮された言葉だ。本来の語源は、
(ふうりんかいんざんらい)。孫子の兵法である。
『 風 』
其の疾きこと風の如く。
(無駄を切り詰めて風のように速く)
『 林 』
其の徐(しず)かなること林の如く。
(見極めた引き際は林のように静かに)
『 火 』
侵し掠めること火の如く。
(攻めると決めたら火のように燃え尽きるまで)
『 陰 』
知りがたきこと陰の如く。
(陰のように気配を消して情報を得るべし)
『 山 』
動かざること山の如く。
(山のように動かない時を見極めよ)
『 雷 』
動くこと雷霆(らいてい)の如し。
(動くと決めたら雷のように疾く)
この言葉の大きなポイントは、『自然』を参考にしている点だ。自然、すなわち、地球。我々は地球に生きて、地球は自然で成り立っている。人間、とくに力を得た者や能力のある者は、常々傲慢に陥りやすいが、この兵法を心得ることができるのであれば、大自然のあの大きな実力を味方にできる。
大自然の前では人間の力など皆無に等しい。いかに我(エゴ)を捨て、自然と同化することができるかどうかが大きなカギだ。最後に勝ったのが、ウサギではなくカメだったように、勝負(時間)に焦って結果を求めれば、一時に膨張があったとしてもそのバブルはいつか弾ける。 "膨張"と、"成長"は違う。半年後だろうが30年後だろうが、弾けないのが成長、弾けてしまうのが膨張である。
ついこの間、『時間』と『固定観念』を味方につけて、のめり込まず、極めて俯瞰的に、ゲームセンターのカードゲームをやってみた。
すると、10年前は『運』に"頼み"、自分の『運』を"過信"し、射幸心にまみれた想像通りの悲惨な結果三昧だったのに対し、それらを味方につけた私は、このゲームを攻略することができた。偶然かと思って後日もう一度同じ感覚でそのゲームをやったが、やはり同じように攻略することができたのだ。
昔はお金があればあるほど、例えば一万円持っていたら一万円全額つぎ込んでしまうほどヒートアップして、見事に惨敗してしまっていたのに対し、たったの1000円で、もはややろうと思えば一生遊べるだけのコインの増やし方を見極めた。もちろん、隣にいた他のプレイヤーには同じことは起こっていない。つまり、
私が"主体者"だったのだ。時間、ルール、固定観念、そして運、といったその全てに対して。
もちろん、ゲームセンターのコインの増やし方を見極めたところで、換金できるわけでもないし、 難易度やそれ自体の価値は極めて低い。だが、確かに私の脳裏に一つの大きな雷が落ちたのだ。まるで、長者番付の大物投資家が見極めた奥義に似た、確かな人生の極意が、そこにあったようだった。
あるゲームセンターのUFOキャッチャーでは、一万円かけても絶対に獲れなかったアイテムが、あるゲームセンターのUFOキャッチャーでは、2000円前後で獲れる。私はこの人生に起こる全ての出来事に、常にアンテナを張っているが、
ホームとアウェイ、
成長と膨張、
火事場の馬鹿力、
限界効用の逓減、
デレゲーション、
そして、風林火陰山雷。
今までの半生の、すべての『回り道』も、"必然だった"といえるよう、ここを見極めなければならない。その大いなるヒントが、この言葉の芯にあると見た。
by:一瀬雄治 (Yuji Ichise)
サルベージエンタープライズ株式会社代表取締役社長。
1983年、東京都生まれ。