今から書く記事は、約7年間における研究の集大成である。ここに書いたことを正確に理解することができたなら、それは、とてつもない財産になるだろう。もっとも、天才でも億万長者でもない私が言っても、説得力はないが。
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去年の1月にまとめた、クリティカル・マス、最近このことについて、自分の中でもクリティカル・マスに達したので詳細を書く。上のリンクを見ればわかるが、量が積み重なって質的な変化を起こす臨界点のことを、クリティカル・マスと言う。たとえば、スポーツや楽器のクリティカル・マスは『一万時間』だと言われる。最初は練習しても上達しないが、一万時間を突破すれば、突然、技術が飛躍的に伸びると言われている。
これは、『PRESIDENT』にて取材を受けた物理学者と、『非才』という本を参考にして発覚した事実だ。そしてこの問題は、数年前全く別の事例にて、仕事のプレゼンの時に取引先に私が提出した、『キャズム』の背景にある経済学の現象にも通じている。
キャズムとは、上にリンクした記事を見ればわかるが、現代日本人にわかりやすい例で言えば、『売れない芸人』と、『売れる芸人』の間にある、”確かな溝”のことである。”それ”を理解している、あるいは偶然併せ持った芸人はその溝を飛び越えるが、理解していない人間は、いつまでもその溝を越えられない。
だが、最初に『これ』を意識したのは、今からおよそ6、7年前の、イチローのこのセリフである。
これを聞いてすぐに思いついたのは、おそらく小学生頃に聞いていた、エジソンのあの言葉である。
『99%の努力と、1%の才能』
そして、記者からのこの一言に対し、『よく1万回も失敗したのに挫折しませんでしたね。』エジソンが言ったこの一言。
まるで、1万1回目のその成功の為には、1万回の再挑戦は必須だったと、言わんばかりの発言だった。
そして、イチローの言葉から1年も経たないうちに『ザ・ベストハウス123』で特集をしていた、『セレンディピティ』。更にその『セレンディピティ』は、その後すぐに『東大京大で一番読まれた本』の帯で話題沸騰した、『思考の整理学』の中でも見ることができた。
セレンディピティとは、例えば『ザ・ベストハウス123』の特集では、今や世界的に有名になった文具『ポスト・イット』が誕生したときに、起きた現象で説明されていた。1969年、大手化学会社3Mで働くスペンサー・シルバー氏は、接着剤の開発に没頭していた。だが、試行錯誤の末、ようやく出来た接着剤は、粘着力の弱い、失敗作だった。
何かひっかかるものを感じたシルバーは、失敗作を顕微鏡で観察。すると、粘着部分が、美しい球体をしている。この時、シルバーは直感した。
これは、何かに使えるかもしれない
もう一人の主人公、アート・フライ。教会で賛美歌を歌っていたフライが歌集のページをめくった、その時、しおりが落ちた。そのしおりを、拾おうとしたその瞬間、フライの脳が大きな幸運を引き寄せる。
失敗作の接着剤。歌集から落ちたしおり。この2つが、偶然、結び付き生まれた、世界的大ヒット商品、ポスト・イット。その発想は、(落ちない程度に軽くくっつくしおりが欲しい。)そう思った時、生まれたものだった。現在では、再生紙のポスト・イット、強粘着のポスト・イットなど、世界で1千種類もの商品を開発、大きな利益をもたらしている。2人の男の、直感とひらめきが引き寄せたこの現象こそ、『セレンディピティ』なのである。
この段階で、私はこの問題に対する研究の興味は、俄然引き上げられていた。
だが、まだまだ続いた。それから間もなく、世界のホームラン王、『王貞治』の特集で、全く打つことができなかった新人時代から、想像を絶するほどの努力を重ねて、偉業を達成するまでになった経緯を見た。
王をコーチした荒川氏は言う。
『みんな王の半分も努力できないでしょ。それくらい王は努力したと思います。』
そして、その当時の監督でもあった、バッティングの神様といわれた川上哲司監督も、
『俺は王ほど努力できないな。』
と言ったというのだ。当然コーチのいう『皆』とは、他の”プロ野球選手”も含まれているのだ。
そしてもう一度『非才』から抜粋するのは、サッカー界の貴公子、ベッカムのこの発言だ。
次は天才芸術家、ミケランジェロのこの言葉。
そして、前回書いたこの記事、
世の人間の多くは、明るくて綺麗な景色(成功)しか見ない。だが実際は、そこにたどり着くまでに、誰にも注目されずにただひたすら、孤独で、死ぬ思いをして泥沼を駆け上がった、壮絶な過去や歴史があるのだ。
スカイツリー、なでしこJAPAN、平泉(世界遺産)、
注目されるのはいつだって、輝いてからだ。
ここまでのデータを総合的に分析した時、もう答えはすぐそこまで近づいている気がするが、まだ終わらない。
昨日”無意識”に、社員へこの『クリティカル・マス』について話をしたのだ。病気で引っ込み思案で主体性が無く、『自分の人生の成長が遅れても親は文句は言わない』などとほざいている、甘えが骨の芯にまで染みついている社員に、周りへの悪影響も考えて、いつものように『それでもやらなければならない』という責任について話をしている中で、そんな自分でも、4年間一度も体調を崩さなかったその健康な身体がある、ということを軸にして、『自分にしかできない努力を積み重ねろ』と、助言をしたのだ。
その引き合いにクリティカル・マスの原理の話をして、卓球の愛ちゃんや、タイガー・ウッズ、イチロー、彼らのあの『向き合い度』で、『1万時間』。あの熱意をもって、1万時間かけたとき、ようやくクリティカル・マスに達するのだと。だから、もし手を抜いてこれからの10年を過ごしたならば、35、6歳といった、ちょうど転職適齢期も過ぎて、脳科学的にも、体力的にもピークを下るそのときに、もうそこから何らかの理由(結婚、借金、親の死等)で、その時に『やりたい』と思っても、すぐに動き出せる機動性もなければ、身動きすら取れなくなってしまう、と。
上に挙げた3つの例のように、クリティカル・マスとは、閑古鳥が鳴いていたと思ったらある瞬間から、一気に跳ね上がる、盛り上がる、エネルギーが放出する、開花する、という現象の臨界点をいうのだ。だが、10年後、その現象を起こすには、今から、ひとつも手を抜かずにやるべきことをやりつづけることが、必須なのだ、と。
まだまだだ。そのすぐ後に読んだ『PRESIDENT』の5.14号には、『もしドラ』でも有名な、P・F・ドラッカーの、興味深い事実が書いてあった。組織の経営や管理に関する新しい概念を生み出した功績から『経営学の父』と称され、20世紀のおける最も偉大な思想家の一人として数えられるドラッカー。だが、そんなドラッカーの人生にも、貧乏な時代があったというのだ。
27歳頃、定職はなく、女子大の非常勤講師やヨーロッパに対しての経済レポートを提出して細々と暮らしていた。それでも、彼は腐ることなく、将来の目標に向かって執筆活動を行った。
次の言葉が重要である。
以前、PRESIDENTにはこう書いてあった。
ドラッカーの著書は、なぜこれほどの時を経ても尚、人々に読み継がれているのか。ひとつには、普遍的な原理原則について述べているからと言える。現在、書店にある流行の経営本は、『これさえやれば収入が増えますよ』とか、『こういう手法を行えば効率が良くなりますよ』という底の浅い議論に終始している。しかし、ドラッカーの本は違う。読めば読むほどに経営の本質への理解が深まるのだ。
この話の根幹にあるのは、私が以前 『ビジョナリー・カンパニー②飛躍の法則』で見つけた真理、『ハリネズミの概念』、そして、『弾み車効果と悪循環』に通じている。
まだだ。更に『PRESIDENT』の6.18号には、脳科学者の茂木健一郎氏が この『1万時間の法則』について取り上げていた。また同号で、認知心理学者も同じ現象を紐解いていた。
『ただの偶然とは思えないような神秘的な一致が起こることはしばしばあります。たとえばペニシリンは、実験中のシャーレに、偶然青カビが紛れ込んでいたのを見た科学者の、”直感”で発見された。こうした『偶然の一致』は、科学の発展の歴史にはなくてはならないものです。
ただ、 発見というのは、科学者が常にそのことを考えていたからこそ生まれるわけです。偶然の一致が生み出す『発見』があまりに脚光を浴びてしまうがゆえに、科学のもう一つの重要な『正当化の文脈』 ──思いつきや発見が正しいか検証し、裏付けする段階は見逃されがちです。この裏付けを怠ると、単なる偶然の一致を特別な何かなのだと後で意味付けしてしまうのです。』
この言葉の意味は、王のコーチ、荒川氏が、なぜ、『みんな王の半分も努力できないでしょ。それくらい王は努力したと思います。』という言い方をしてそれを説明したかという、心理背景に通じている。
そして再び『非才』の帯、『ウッズ、フェデラー、ベッカム、イチロー…みんなはじめから天才だったわけじゃない。』という言葉の意味に基づく、著書の内容。極めつけは、この記事である。
さらなる研究で、同じく注目に値する結果が発見された。ロンドンのタクシー運転手──免許証を取得するには、厳しいことで有名な試験に合格しなければならない──についての研究で、彼らの空間ナビゲーションをつかさどる脳領域は、タクシー運転手以外の人たちよりもかなり大きく、またその領域は、仕事の経験に応じて成長を続けることがわかったのだ。
脳の変化において重要な役割をになうのは、神経線維を覆う『ミエリン』という物質で、これは脳内の信号伝達速度を飛躍的に向上させる。コンサートピアニストの脳スキャンを行った2005年の実験では、練習にかけた時間とミエリンの量に比例関係が認められた。
だが、脳の変化という物語のテーマは、ミエリンだけではない。 目的性訓練は、向上を求める中で新たな神経接続を作りだし、 脳の特定部位を増大させ、このためエキスパートは改善を探求するなかで、脳の新しい領域を利用できるようになるのだ。
(中略)これで、知識構築のプロセスそのものが、知識を蓄えて処理するハードウェアすらも変えてしまうことがわかった。非常に高度なソフトウェアをダウンロードする過程で、コンピュータの内部回路が奇跡的に初代ペンティアムからペンティアム4にアップグレードされるようなものだ。
それなら、熟練者がほかの人間をはるかにしのぎ、超人に見えても、何の不思議もないだろう。文字どおりの意味で、彼らには特定の専門分野用のために加工されたそれぞれの異なるコンピュータが搭載されているのだ。
ここまでに前述した人達にある共通点は、 『疑わない心』だ。 『自信』とは、『自分を信じる』と書く。挫折も経験するだろう。 乗り越えられそうにない試練にも直面するだろう。だが、それでも自分を信じて貫いて、 その過程で息絶えたのであればそれは、
(『ワンピース』 第1話『俺はルフィ!海賊王になる男だ!』)
“命を使い切った”。
そう考えるのが、彼らの生き様だ。自信に満ち溢れてるから『天才』に見える彼らは文字通り、 自分を信じて、疑わなかったのだ。疑わない心、それが強さだ。
私は今、ドラッカーのいうように、 『成長の準備』の段階にいて、 年齢的にも彼のその時代と同じだ。
上に挙げたことで、まだどこか腑に落ちていないことがあれば、 トドメに考えるべきなのは、この言葉である。
そして、ここまで読んだ人は、いつも私が引き合いにだすこの言葉に隠された真意を見極める力が、引き上げられているだろう。
数年前、10年付き合った旧友との別れ際に送ったこのメッセージ。刹那的に生きる、彼らがこれをいつ理解するかは、彼ら次第だ。強要はできない。
彼らが私のことをどう評価・批判しようが勝手だが、一つだけ、絶対的な真実を、改めて力強く言いたい。『時間』の使い方を、見誤るな。『時間』こそは、70億人全ての人間、生命に平等に与えられている、財産である。過ぎた時間だけは、2度と、永遠に戻ってこないのである。時間の使い方で、人生の全てが決まる。天才はそれを知っていた、あるいは、信じて貫いただけだ。