ハニワくん
先生
いくつか質問があるんだけど、わかりやすく簡潔に教えて!
- ヘラクレイトスは何をした人?
- パルメニデスは何をした人?
- アナクサゴラスは何をした人?
- デモクリトスは何をした人?
- ゼノンは何をした人?
1.『万物は流転する』と主張した人で、最初に『哲学者』と名乗った人でもあります。
2.『万物不変』だと言って、ヘラクレイトスの意見に対抗した人です。
3.『種子論』を主張した人で、物体は限りなく分割されうると考えた人です。
4.『原子論』を主張した人で、ヘラクレイトスとパルメニデスの意見は両方存在する、という一つの考えを提示した人です。
5.『ゼノンのパラドックス(アキレスと亀)』で師匠ヘラクレイトスの『万物流転』を否定しようとした人です。
ハニワくん
博士
ここで言う『万物』と彼らの思索の理由については、下記の記事を見ると意味が分かります。
タレスから始まった哲学ですが、『神の仕業でないなら何なのか』というテーマを、こうして様々な哲学者たちが考え尽くしたわけですね。そして『ああでもない、こうでもない』と議論を交わし、切磋琢磨し、より正確な答えを磨き上げていったということです。
博士
ハニワくん
先生
『哲学』し合ったギリシャ人
ギリシャ7賢人の一人『タレス』と、サモスの賢人『ピタゴラス』の哲学とは
上記の記事の続きだ。ギリシャ7賢人の一人『タレス』と、サモスの賢人『ピタゴラス』が古代ギリシャに哲学を作り始めた。だが、最初に『哲学者』と名乗ったのはヘラクレイトスという男だった。
ヘラクレイトス
ヘラクレイトスは、『万物は流転する』と主張した。同じ川の水は二度と踏めないように、すべての事物、現象は変化するということだ。
タレス
アナクシマンドロス
アナクシメネス
ヘラクレイトス
ヘラクレイトスの『万物流転』は、『対立するものの争いから万物が生まれる』という発想だった。例えば、『酸素と油』が対立すると『火』が生まれる。『火と水』が対立すると『煙』が生まれる。これが世界を支配する論理だと主張した。彼のこの論理のことを『ロゴス』と言う。なんてことはない。日本人じゃないから『論理』と言わなかっただけだ。意味は同じである。
このヘラクレイトスのロゴスは、後のヘーゲルの『弁証法』に大きく影響してくる。近代哲学の完成者、ゲオルク・ヘーゲルの言う『弁証法』とはこういうものだ。
『ある一つの主張(テーゼ)があれば、必ず反対意見(アンチテーゼ)が存在する。これを否定せず、お互いの良いところを取り入れて、統一(アウフヘーベン)し、新たな考えを創り出せば、一つ高い次元の知識が完成する。これを繰り返していけば、人間がいつか絶対的な真理である『絶対知』を手に入れることができる。弁証法は人間の思考や進化だけではなく、自然や社会など世の中すべての進化の原理原則だ。』
この『絶対知』を手にするまでの一連の手法が弁証法だ。弁証法は人間の思考や進化だけではなく、自然や社会など世の中すべての進化の原理原則だというのが、ヘーゲルの主張である。
パルメニデス
ヘラクレイトスは『万物は流転する』という考えなので、永久不変の真理を認めない。だが、その考え方を真っ向から否定したのがパルメニデスだ。
ヘラクレイトス
パルメニデス
パルメニデスが言ったのは『万物不変』だった。『あるものだけがある』というのが彼の主張。例えば先ほどの『水と火』等で考えると、水は水。火は火であって、『煙』は水と火から出たものではないということだ。これが『存在論』の始まりである。
アナクサゴラスとデモクリトス
そこに更にアナクサゴラスの『種子論』、デモクリトスの『原子論』が加わる。アナクサゴラスは、物体は限りなく分割されうるとし、この無限に小さく、無限に多く、最も微小な構成要素を、「スペルマタ」(spermata、種子の意味)と呼んだ。
デモクリトス
これによって、『万物流転』を主張したヘラクレイトスと、『万物不変』を主張したパルメニデスの意見は、両方存在する、という一つの考えを提示した。
エレア学派のゼノン
更にそこに、エレア学派最大の哲学者と言われるゼノンが登場する。ゼノンはパルメニデスの弟子にあたる人物だ。だからその正反対の主張をしたヘラクレイトスとは思想的に対立する位置にいるわけだが、ゼノンとヘラクレイトスの共通点は『ヘーゲルの弁証法』である。ヘーゲルはこの時代から2000年以上も後に生まれる人間だが、ゼノンの対話によって論理を展開する方法は、弁証法や、ソクラテス等への考え方に影響する。
ソクラテスは、無知を装った質問で、相手に無知を自覚させるという『問答法』という手法で、真の知識を探ろうとさせた。
ソクラテス
などと言って質問攻めにするため、相手が自分の無知を自覚することになる。だが、中には感情を逆なでされたと腹を立て、怒り狂う者もいた。ソクラテスが冤罪を着せられたのも、この『問答法』が一つの原因となった。とにかくこのようなソクラテスの生き方には、ゼノンのそれが影響していると言えるわけだ。
ゼノンと言えば、『ストア派の創始者』にも同じ名の有名人がいるが、今回の場合は違う。このゼノンは、師であるパルメニデスと対立するヘラクレイトスの『万物流転』の考えを論破しようと考えた。ヘラクレイトスの『万物流転』は、『万物の変化は空間と運動を通じて成り立つ』というものだったため、これが成立しないということを証明する必要があった。そこで考えたのが『ゼノンのパラドックス』。例えば、『アキレスと亀』である。
いくらアキレスが走る速度が速くても、それよりも少し先に亀が出発すると、アキレスは亀に永遠に追いつけない。なぜなら亀がいた場所にアキレスが到達するときには、亀はすでにそこにはいないからである。
当然、これは『詭弁』であり『屁理屈』だ。アキレスはすぐに亀に追いつき、そしてすぐに追い抜く。だが、もしこの動画にあるように、アキレスが『亀のいる地点に到達する』ことを目的とした場合、追い抜いてしまった後は亀はもう前にいないので、二度とその目的は達成できない。走っても走っても達成できない。なぜなら、すでに亀を追い越したからだ。しかしそれも一番最初に追いついたときにその目標はもう達成するのだから、『アキレスは亀に追いつく』こととができるし、『亀のいる地点に到達する』ことができる。
だがとにかくゼノンは、ヘラクレイトスの『万物流転』を否定したかったわけだ。だから空間と運動の矛盾を説明するために、このような独特の考え方をしてみせたのである。
まあとにかくこのようにして、タレスから哲学が始まり、ああだこうだと意見を言い合い、人は徐々に『真実』の実態の把握に成功していくのである。やはり最初に哲学しただけあって、まだまだ手探りだ。しかし、古代ギリシャ人の中でも賢い人間たちが集まって意見を言い合うわけだから、それぞれの意見はすべて一理ある。我々は今、真実を知っているからこそそれを考える手間を省けているが、最初に真実に到達するとなると、このようにして手さぐりになるのは世の常である。
ソクラテスは言った。
我々は彼らがした苦労をせずに済んでいる。それは、彼らが哲学してくれたからだ。
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参考文献