ハニワくん
先生
なぜ『メソポタミア文明』は世界最古の文明じゃないのに一番有名なの?わかりやすく簡潔に教えて!
ここで『文字』の原型を作ったり、現代にも影響する大きな爪痕を残したからです。
ハニワくん
博士
メソポタミア文明は世界四大文明の中で最も古い文明ですが、それ以前にも文明はありました。
しかし、それ以前の文明はそれほど大きくありませんので『大文明』とは言えず、また、そこで発展したものもそう目立ったものはありません。しかしメソポタミア文明では、
- 1週7日制
- 60進法
- 楔形文字
- 太陰暦
- ハンムラビ法典
という現代にも影響する大きな爪痕を残しました。特にこの『世界最古の文字』というところがポイントで、文字があれば『国の名前や人物名』等を、その文字を解読して理解することができるわけです。つまり、文字がない時代のことは解読しようがないので、メソポタミア文明よりも更に7000年以上前にあった中国の長江文明には何があったかわからないということになります。
博士
ハニワくん
先生
世界の文明
メソポタミア文明
覚えた『世界四大文明』はもう違う?人類最古の『文明』とは何か
上記の記事の続きだ。世界四大文明のうち『メソポタミア文明』についてみてみよう。メソポタミア文明は『世界最古の文明』ということではない。その前にあった中国文明の『長江文明』などは、『紀元前14000年』頃からあったので、『大きな文明』だと考えるのが妥当だろう。四大文明というのは文字通り、『世界の文明の中で早めにできた大きな文明』という解釈となる。
だが、いまだに多くの参考書ではメソポタミア文明やエジプト文明が世界最古の文明という形で説明している。確かに『仰韶(ぎょうしょう)文化』という『文化』はもっと前からあったと説明されているが、『文明』、つまり『長江文明』等もはるか昔からあったと説明している参考書は今のところあまりない。
まだまだわかっていないことも多いということだろう。また、歴史は常に覆されるものだ。例えば、
- 坂本龍馬が教科書から消える
- 聖徳太子は存在しなかった
- 西郷隆盛の顔は本当の顔じゃない
等のように、また20年もすれば新しい見解を持っているだろう。
メソポタミア文明が残した爪痕
しかし、なぜメソポタミア文明がこんなに有名なのか。世界史の教科書の先頭に書かれているのもこの文明である。それは人々がこの文明期に、
- 1週7日制
- 60進法
- 楔形文字
- 太陰暦
- ハンムラビ法典
という現代にも影響する大きな爪痕を残したからだ。下記の記事に書いたことを見てみよう。
普通、時計は24時間で設定されていますよね。昔の人が月の満ち欠けをみて、ひと月が大体30日周期で周ることを見ながらカレンダーを作ったことが由来だと言われています。メソポタミア人はそれが12回くると一年だとわかっていました。ですからこの『12』という数字を軸にして、一日を12個の区切りで考える発想がありました。しかしエジプト人はそれを『昼』と『夜』で分け、昼の12時間、夜の12時間という考え方をしました。そうして一日の時間は24時間であるという考え方が根付いたのです。
参考
どうして1日は24時間なの科学なぜなぜ110番|学研サイエンスキッズ
このようにして、1日を『24時間』だと決めたり、1時間が『60分』だと決めたり、1週間が『7日』だと決めたりしたわけだ。そして何より『楔形文字』を作った。これが現在わかっている最も古い文字だといわれている。文字の誕生である。
ただ、厳密には細かい歴史がある。Wikipediaにはこうある。
ウルク文化期(紀元前3200年)にシュメール人によって絵文字としての性格が強いウルク古拙文字が発明されたが、長期間繰り返し使われるうちに、次第に単純化・抽象化されて、青銅器時代初頭(紀元前2500年)には約1,000文字のシュメール文字になり、青銅器時代末期(紀元前2000年)には約400文字(ヒッタイト語楔形文字)から約200文字(アッカド語楔形文字)になった。シュメール文字はシュメール語に用いられる他、アッカド語(アッカド語楔形文字)、エラム語(エラム語楔形文字)、ヒッタイト語(ヒッタイト語楔形文字)、楔形文字ルウィ語に借用され、また古代ペルシア語(古代ペルシア楔形文字)やウガリット語(ウガリット文字)などに独自の文字の発達を促す役割をはたした。
楔形文字はいきなり生まれたわけではなく、メソポタミア文明の中心にいたシュメール人が作った『絵文字』のようなものが徐々に進化していったということだ。それも、紀元前3200年から始まって、1000年以上の時間をかけて少しずつ進化していったのである。
また、この『世界最古の文字』というところがポイントで、文字があれば『国の名前や人物名』等を、その文字を解読して理解することができるわけだ。つまり、文字がない時代のことは解読しようがない。記録がないからだ。ということは、メソポタミア文明よりも更に7000年以上前にあった中国の長江文明には何があったかわからないということになる。
ということで、『世界最古の楔形文字が発見されているメソポタミア文明』というのは、『歴史がわかる最古の文明』ということになり、メソポタミア文明が一番有名になっているということなのである。
ちなみにそのシュメール人だが、実はメソポタミア文明ができてから1000年も経ってから現れている民族だ。そして、そのシュメール人が楔形文字を作り出していることから、シュメール人が『名前が解明できる最古の民族』ということになるのである。
楔形文字によって断言できる歴史
歴史がわかる最古の文明 | メソポタミア文明 |
名前が解明できる最古の民族 | シュメール人 |
『法律』を作ったシュメール人
またこのシュメール人というのは『法律』を作り出している民族ということにもなる。文字を作ったということは、それで法律を作って人々の思想を統一化させることができたということだ。少なくとも影響を与えることができた。同じ思想を共有することができたわけだ。その前にも『口頭』で何かを伝え、タブー視させたことはあるかもしれないが、やはり文字があるとないとでは影響力が違う。
このシュメール人が作った法律を元に作ったのが『ハンムラビ法典』だ。
[ハンムラビ法典に描かれているハンムラビ(左側)、右側の王座に座っている人物は太陽神シャマシュ]
『目には目を、歯には歯を』
という有名な一文があり、
- 刑法
- 民法
- 商法
- 税法
等の細かい条例が定められていて、後世にも大きな影響を与える基本となるのである。更に具体的にいえば、
- 『一般市民の目を損なった者は、その視力を奪われる。』
- 『他人の奴隷に損害を与えたものは、その奴隷の値の半分を支払わなければならない。』
というような内容があったようだ(全282条)。この『一般市民の目を損なった者は、その視力を奪われる』という項目が『目には目を歯には歯を』という一文として後世に伝わったのだろう。
だが、このハンムラビ法典を作ったのはシュメール人ではない。彼らは長い間メソポタミア文明を支配していたが、紀元前24世紀頃に遊牧民の『セム語アッカド人』に滅ぼされている。アッカド人はシュメール人と違ってメソポタミアを『広範囲』に支配した。シュメール人は『点』に支配していたので、それよりも広く支配したわけである。
そして紀元前19世紀に『セム語アムル人』が登場。彼らが『バビロン第一王朝(古バビロニア王国)』を建国し、紀元前18世紀、6代目ハンムラビ王の時代に、メソポタミア全域を支配することになる。そう。このアムル人のハンムラビが支配した紀元前18世紀に、ハンムラビ法典が制定されるのだ。そして道路や灌漑などの公共事業にも力を入れるようになり、文明は発展していった。
[ウルのジッグラト(ウル第3王朝)(紀元前2100年頃)]
ちなみにここに出てきた『ウル』や『ウルク』というのは町名であり、それがわかったのもこの楔形文字のおかげである。
この『目には目を歯には歯を』という法律だが、この考え方は現代にも影響しているし、それからちょっと後の『ユダヤ教の世界』にも影響を及ぼした。
なぜイエスは死刑になった?キリストの裏にいた『イエス・ゼロット』の存在とは
ユダヤ教の教えとイエスの『更新』
上記の記事に書いたように、ユダヤ教が教典としていた旧約聖書にあったのは、
旧約聖書
というものだったが、イエスが教えたのは、
キリスト
という教えだった。復讐ではなく、愛でもって赦し、負の連鎖を終わらせる。イエスの考え方は、まず最初にあったユダヤ教のその考え方に対抗するために生まれたものである。ユダヤ教というのは『紀元前1300年頃』に始まったと考えられているが、彼らの聖典である旧約聖書にも、ハンムラビ法典にある『目には目を歯には歯を』という言葉が記されているわけである。
だが、実際にはこの言葉は間違った解釈がされているようだ。『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 公立高校教師YouTuberが書いた』にはこうある。
『やられたらやり返せ!』という意味にとらえられがちですが、実際のところは、当時は復習が過剰になることが多かったため、『正当な程度の復讐をしなさい』『人に与えた害は自分に返ってくるのだから、人に害を及ぼさないようにしなさい』という意味合いがあったようです。『目には目を』は、『復讐を防ぐため』の”抑止力”の言葉だったのです。
つまり、先ほどの旧約聖書の考え方では、まさに『やられたらやり返せ!』という解釈をしてしまいがちだが、実際には『こういうことにならないように』するための抑止力として、この法律が存在していたという。つまりこういうことだ。
フランスの小説家、プレヴォは言った。
そしてそれは宗教だけじゃなく、人間がそこにいる以上、まるで伝言ゲームのように事実は間違って伝わっていってしまうということがわかるワンシーンである。しかしこれを見てもわかったように、このメソポタミア文明で作られた事実は、旧約聖書にも影響を与えるし、現代の法律の基礎にもなっている。文字の基礎にもなっているのである。
そう考えると、やはりこのメソポタミア文明というのは『世界四大文明』に数えられるし、もっと古い文明があったとしても、ここ以上の発展と影響力を持っていたかとなると、それは怪しいということになるのである。
神話をルーツにした四大文明
ちなみに上記の記事に書いたのはこうだ。
世界6大宗教も、そうじゃない消滅した古代宗教も、その大部分はこの農耕時代の初期に生まれたものである。そして人類4大文明も狩猟採集時代から形成されていた神話をルーツにしているのだ。
法律もルールもほとんどない時代から、集団生活をするにあたって、急に秩序が必要となっていった。それまでは、
- 一夫多妻
- 殺人
- 他人を傷つける
- 盗む
- 嘘をつく
こういった行為がタブー視されていなかったのだ。食べるものがなければ、人の食べ物を殺して奪うこともあった。人間の知能は、ほとんど動物と変わらなかったのである。そして『宗教』、『神』の力を借り、人の統制を図ろうとした。
- 宗教(神)
- 法律
このような『人間以外の理性』の存在を用意することによって、人々は自分たちの『思想(生き方)のモデル』をイメージするようになり、秩序を保つようになり始めるのである。
メソポタミアの神々の王『マルドゥク』とペルシャの絶対神『アフラ・マツダ』
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