『室町時代の庶民』
上記の記事の続きだ。この頃、民衆の力がまとまりだして全国で『一揆(いっき)』が見られるようになる。彼らは同じような境遇同士で同盟を結び、集落を作り、『惣村(そうそん)』といわれる村を作っていた。その中で『寄合(よりあい)』という話し合いがあったり、村の掟が決まったり、村の中での年貢の配分が決まったりした。
日本において何らかの理由により心を共にした共同体が心と行動を一つにして目的を達成しようとすること。
現在でも村や市の長が市長、村長などとしてその集団を代表し、時には国家の方針にも逆らおうとする動きを見せることがある。例えば、国家の決めた決断に反対するとか。そういう風に、国家とは別の『小規模な単位の集団』が見られるようになり、それらが自治的、自立的な性格を持つようになった。
土一揆/徳政一揆 | 民衆を中心とした蜂起。借金の帳消しなどを要求 |
国一揆 | 国人(土着の武士)を中心とした蜂起 |
一向一揆 | 一向宗(浄土真宗の信者)を中心とした蜂起 |
その背景にあったのは、
で、彼らも彼らで追い詰められていたのだ。そして窮鼠が猫を噛み、一揆に繋がったのである。
そうした動きもあり、室町時代の特徴として、民衆が歴史の表舞台に現れた時代でもあった。これまでの時代では、
といった立場の話は出てきたが、一般庶民の話はほとんど出てこない。それは彼らがほとんど活躍していないか、あるいは悪い扱いを受け、押さえつけられ、力を発揮できなかったからだった。しかし、彼らはこの時代に前述した理由で追い込まれていたのとは別のところで、農業や工業、都市民の生活水準の向上を果たしていたのだ。
農業 | 同じ水田で稲と麦を作る『二毛作』が普及 |
手工業 | 鋳物師、鍛冶、研師が荘園領主から独立 |
この2つの発展が商業を活性化させ、各地の特色を生かした特産品が生産されるようになり、貨幣が浸透して貨幣経済が発展する。下記の記事に書いたように、かつて村上天皇は『本朝十二銭』の最後となる『乾元大宝(かんげんたいほう)』という貨幣を作った。日本で最初の流通貨幣と言われるのが『和同開珎(わどうかいちん)』だ。そのモデルになったのは天武天皇の時代に作られた富本銭で、和同開珎以前にあった通貨は、
の2つである。ここから平安中期まで12種類の波形が作られ、それらをまとめて『本朝十二銭』と呼ぶ。その最後の貨幣がこの『乾元大宝』である。だが、結局この貨幣は質が低く、流通が広がらず、これ以降豊臣秀吉が発効する金貨まで、貨幣が作られることはなく、中国から輸入したものを使用していた。
商業が発展した室町時代には、銭の需要が増加するが、この時もまだ『宋銭』、『明銭』、つまり中国で作られた貨幣を輸入して使っていた。
室町時代の庶民たちの変化
[左:初鰹を売る振売。「守貞漫稿」より 右:箱詰めのすしを売る振売。「守貞漫稿」より]
時代劇でよく見るこうした行商人がこの頃になると頻繁に見られるようになるわけだ。そして、高利貸しをした酒屋・土倉(どそう)は莫大な営業税を払う代わりに幕府の保護を受け成長し、後の戦国末に台頭する『豪商』の先駆けとなった。
鎌倉時代および室町時代の金融業者。現在の質屋のように物品を質草として担保とし、その質草に相当する金額の金銭を高利で貸与した。
日本マクドナルド創業者の藤田田はこう言った。
『GHQのGIたちはユダヤ人を軽蔑しながら、彼らに頭が上がらなかった。彼らに金を借りていたためである。ユダヤ人は浪費家のGIたちに高利で金を貸し、金銭的に優位に立っていたのだ。それはまるで、幕末期の商人が武士に金を貸して、経済的な実験を握ってしまったのと同じであった。敗戦国日本に駐屯し、我が物顔で闊歩しているGIの、そのまた上を行く人種がいたことは、私には痛快な驚きであった。敗戦で生きていくための精神的な支柱を失っていた私の前途を示す、一筋の光明にも思えた。』
ユダヤ人というのは、お金儲けが上手い民族と言える。
この3つの民族は、常に賢い民族と言われる。その中でも、特にユダヤ人はお金儲けが上手だ。それは一体なぜだろうか。彼らは最初、迫害されていた。そして、『軽蔑される仕事』しか用意されなかった。それが『金貸し』だった。お金を貸して利益を得る。そういう商売は、当時は軽蔑されていた。
ユダヤ人たちは、そういう『汚い仕事』しかできず、しかも故郷を追いだされて迫害された。しかしアインシュタインがこう言ったように、
彼らには『推進力』があった。だから彼らはいつでもどこでも何かしらの問題を起こすが、しかしその一方で、ずば抜けた能力を発揮させていった。つまり彼らには経済力と影響力があったのだ。そして、米国にいたユダヤ人は、
といった世界に深く根を張り、力を持っていてそのおかげで米国からの支援を掴み取ったのだ。そしてその米国に続き、西欧諸国もイスラエル側についた。こうして
『アラブ連盟』VS『西側諸国』
という図式が成立していったのである。
高利貸しが幕府の保護を受けて成長。簡単に言うが、これは長い間民衆が強いられてきたその地位からの脱却の可能性を切り開く糸口でもあり、この世界を惑わせる危険因子が生まれたことを懸念すべき瞬間でもあった。
1929年にアメリカで起きた世界恐慌。その窮地からアメリカ経済が復興したと言えるのは、『ニューディール政策』というよりは、第二次世界大戦における武器の生産だったという。武器と麻薬は倫理的な話を一切無視すればただただ儲かる。例えば、三菱グループの創始者岩崎彌太郎も、坂本龍馬も、武器商人のグラバーと一緒に武器を売買し、利益を得た。
[グラバー(右)と岩崎弥之助]
違法行為スレスレの倫理をないがしろにした商売は、確かに儲かる。そして、大きく儲かれば大きな力を持ち、物理の法則で考えても、力を持った者が更に力を得るのは容易になる。雪だるまを想像すればいい。小さい雪だるまと、大きい雪だるま。ごろっと一周転がったとき、多くの雪を付着させたのはどっちだと思うだろうか。
つまり、問題は端緒だ。発端に、何があったか。つまり私はこの『高利貸しが幕府の保護を受けて成長』という一文を、決してないがしろにすることはできないのである。
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