ハニワくん
先生
聖書にある不思議な話は本当のことなの?わかりやすく簡潔に教えて!
世界一人口が多いクリスチャンを失望させることは言いづらいですね。
しかし、それを踏まえてあえて言うなら、聖書にある不思議な話は『神話』から来ているものです。
ハニワくん
博士
『神話』は自由な発想で生まれました。
そして『宗教』は人に規律を作るために生まれました。旧約聖書はそんな自由な神話の流れを汲んでいるので、自由な発想で想像された物語が書かれています。神話から宗教へ移り変わるとき、急に『黒⇒白』にコントラストがはっきりするわけではありませんでした。グラデーション的に、徐々に論理的に説明できるようなシナリオへと移り変わり、そして現在の『科学』へとつながっていくのです。
博士
ハニワくん
先生
Contents|目次
聖書の登場
稲妻、洪水、地震。あまりにも力強いあの正体を知らないとき、人はそこに『何を見た』かわかるだろうか?
神話=『めちゃくちゃ(混沌)』。宗教=『きっちり(秩序)』の理由
ユダヤ神話(一神教)とギリシャ神話(多神教)はなぜ和解できたのか?
この話の続きだ。とにかく人間はまず最初に『神話』を想像し、そして人をまとめるために『宗教』を作った。そうじゃなければ、
- 一夫多妻
- 殺人
- 他人を傷つける
- 盗む
- 嘘をつく
こういった行為がまかり通り、秩序ができずに社会が成り立たない。そして、ルールというルールが人間社会に登場するようになった。しかし問題なのは、このルールを『誰が』人間たちに植え付けるかだ。やはりテストステロンの影響もあるだろうし、権力同士が争いあって、意見を聞かない人間も現れる。統率が取れないのだ。
そこで登場するのが『神』である。そう。いよいよここで、人間社会に『神』という『人間の上にあるもの』が登場するのである。
神話=『めちゃくちゃ(混沌)』。宗教=『きっちり(秩序)』の理由
しかし、上記の記事で考えたように、『神話』というのはもっと自由で、めちゃくちゃだった。
神話 | 狩猟採集時代に生まれた | 自由でめちゃくちゃな発想 |
宗教 | 農耕社会を作る過程で生まれた | 秩序を作るためのきっちりとした規範 |
神話は完全に、人の自由すぎる発想から生まれたものである。雷や地震を受け、
きっとこういう存在がいて、お怒りになっているんだ!
などと、ただ『イメージする』だけの段階だったわけだ。そして言語の発達とともにそれが言葉で言い伝えられていく過程で、様々な神話が、世界各国で生まれるようになった。その名残が『旧約聖書』にも残っているのである。
旧約聖書とは
いつ書かれたか | およそ紀元前1300年頃~。 |
最初の記者 | モーセ。 |
ユダヤ人にとって | 唯一の正典であり、現在も行動を律する文字通りの法である。 |
キリスト教徒にとって | イエス・キリストの出現を約束する救済史として読む。 |
まず旧約聖書はつぎはぎ的に補強されているので、紀元前1500年頃から始まって、その後更に1000年以上かけて徐々に作りこまれている。ユダヤ人にとってはイエスの存在は『神の生まれ変わり』ではないので、後にできた『新約聖書』は正典ではないが、キリスト教徒にとっては、旧約聖書に書かれているのは『イエス・キリストがどのように生まれるか』ということが書いてある正典であると解釈する。
新約聖書とは
いつ書かれたか | およそ紀元前4年~紀元100年頃。 |
最初の記者 | イエスの弟子たち。 |
キリスト教徒にとって | 『神との新しい契約』と解釈したところから生まれた書物。 |
[14世紀のラテン語聖書写本。]
これで旧約聖書と新約聖書の概要がわかったはずだ。では、その旧約聖書の『創世記』には、この世界がどのように作られたと書かれているのか見てみよう。
自由な発想は聖書だけにあるのではない
このイメージを分かりやすく映像化している映画がある。『ノア約束の船』だ。
とにかくこのようにして、旧約聖書には『神がこの世界を作った』としている。冒頭の記事に書いたように、当時こういう2つの説が考えれたわけだ。まず『神』が最初からいる説。
そして『カオス』から神が生まれた説。
旧約聖書にあるこのヘブライ(ユダヤ)神話を除き、たいていの神話はカオスから始まっている。
各地の創造主(一例
エジプト | アトゥム |
中国 | 盤古(ばんこ) |
- ギリシャ
- ローマ
- エジプト
- インド
- 東南アジア
- 北アメリカ
世界各地で想像された『天地創造』は、まずカオスが最初にあって、そこから創造主(神)が生まれ、その神が宇宙を含めた自然や生命を作ったと考えていった。ちなみに日本では『創造主』という位置づけの神はいないが、まず最初に天地開闢(てんちかいびゃく)という、ここで言う天地創造があり、その次に、神世七代(かみのよななよ)7人の神が生まれた。
神世七代
- 国之常立神(くにのとこたちのかみ)
- 豊雲野神(とよぐもぬのかみ)
- 宇比邇神(うひぢにのかみ)・須比智邇神(すひぢにのかみ)
- 角杙神(つぬぐいのかみ)・活杙神(いくぐいのかみ)
- 意富斗能地神(おおとのじのかみ)・ 大斗乃弁神(おおとのべのかみ)
- 淤母陀琉神(おもだるのかみ) ・阿夜訶志古泥神(あやかしこねのかみ)
- 伊邪那岐神(いざなぎのかみ)・伊邪那美神(いざなみのかみ)
※左が男、右が女の神
この一番最後にあるのが『イザナギ、イザナミ』で、7番目に生まれた神として最も有名である。彼らの子孫をざっとまとめるとこうなる。
アマテラスやスサノオ等多くの神の父神であり、神武天皇の7代先祖とされている。
つまり、天皇の始祖は『天地創造(天地開闢(てんちかいびゃく))』の後に生まれた、この7代の神である。
様々な想像された人間の起因
- 泥で作れらた
- 男の肋骨で女が作られた
- 魚、石、動植物が人類に進化した
- 卵から生まれた
- 天から降りてきた
- 大地や水から上がってきた
旧約聖書にあるのは『泥でアダムが作られた』というもの。日本や韓国にあるのは『空から神が降りてきた』というもの。しかし、ここまで考えればわかったように、どれも『神話』の領域を出ないということが分かるはずだ。つまり、とても自由な発想が行われているのである。
自由な神話が徐々に現実味のある話へ
神話と宗教の違いをもう一度見てみよう。
神話 | 狩猟採集時代に生まれた | 自由でめちゃくちゃな発想 |
宗教 | 農耕社会を作る過程で生まれた | 秩序を作るためのきっちりとした規範 |
しかし当然、神話から宗教へ移り変わるとき、急に『黒⇒白』にコントラストがはっきりするわけではなかった。グラデーション的に、徐々に論理的に説明できるようなシナリオへと移り変わり、そして現在の『科学』へとつながっていくのである。
『世界の神話 神話の生成と各地の神話。神々と英雄の活躍』にはこうある。
しかし、19世紀末、ダーウィンが進化論を発表した。人間が猿から進化したという学説は、宇宙、自然、人間の誕生についての人間の信念を完全にひっくり返してしまった。
『ドラゴンと海獣の死』があったからこそダーウィンはこの世に名を遺せた
まず最初に神話があり、そしてこれらの神話が各宗教の基礎になり、それに反発するような形で哲学が生み出されるようになった。
そして『科学』的知識が豊富になったわけだ。しかし、現在でも過去の名残は完全には消えておらず、神話的に想像された『天地創造』のシナリオや、宗教的に想像された『それぞれの慰め』の正当化シナリオは、今を生きる多くの人々の心にも通用するものがあり、奇しくもそれが原因でこの世は混沌(カオス)に陥っているのである。
該当する年表