ドーパミンである。『押すとドーパミンが出るボタン』をネズミで実験したとき、そのボタンを永久に押し続けたのだ。『脳とこころのしくみ』にはこうある。
ネズミは、最初の頃はボタンを押した後に一旦はボタンから離れるが、次第に自由に歩き回れるにもかかわらず、ボタンから離れず、体が衰弱するまで押し続けるようになる。これを自己刺激行動という。ドーパミンがもたらす快感はそれほど魅力的なのだ。
上記の記事に『クレプトマニア』について書いている。この病気も、実はこのドーパミンが関係している。
窃盗をやめられない病気。
クレプトマニアの女性は泣きながら言っていた。
そして違う女性は、ここにある原因がこのドーパミンであると言っていた。やめたくてもやめられない。スーパーやコンビニ等に行くと、どうしてもそれを盗みたいという衝動に衝き動かされ、気づいたらもう商品を盗んでしまっているというのである。この『暴走状態』の原因は、ネズミの例を考えてもやはりドーパミンだろう。ドーパミンというのはクレプトマニアの人だけではなく、
等の『ストレスの発散』をしているときにも出ている報酬系物質だが、そう考えると、これらの発散をやめられないという人は、この世に大勢いるのである。タバコもその範囲内である。『脳とカラダの不思議 (にちぶんMOOK)』にはこうある。
タバコを吸うと落ち着くのは、なぜ?
ニコチンをアセチルコリンと勘違いする脳
タバコを吸うと、気分が落ち着くとか頭がすっきりしてやる気が出る、とよくいわれるが、これはタバコに含まれるニコチンの効能によるものである。ニコチンは、記憶や学習に関係の深い情報伝達物質のアセチルコリンと似かよった分子構造をもっている。そのため、受容体はニコチンをアセチルコリンだと勘違いし、結合させてしまうのだ。ちなみにアセチルコリンは、やる気を出させる物質ともいわれる。体内で生成されたアセチルコリンは酵素によって分解されるが、ニコチンは分解されないため、受容体に長くとどまり、アセチルコリンよりも強い刺激を脳に与え続ける。これによりドーパミンやノルアドレナリン、セロトニンなどの働きも活発になっていく。タバコを吸うと頭がスッキリしたように感じるのはこのためだ。
しかし、喫煙を続けていると、アセチルコリン受容体の感度は徐々に下がっていく。いきなり禁煙した場合、ニコチンの手助けを失ったアセチルコリンは思うように働けない状態に陥る。これがイライラや集中力低下に繋がるため、なかなか禁煙できないのである。
このようにして、人が快楽を求めようとするとき、そこには必ずと言っていいほど『ドーパミン』が存在しているのである。しかしこのタバコの例を見てもわかるように、
人がそれを欲する『からくり』を理解しておかないと、無意識の部分でこのようなドーパミン依存体質に陥ってしまって、何らかの依存症になることになる。
その他、恋愛も、衝動買いも、人の愚痴を含めたおしゃべりも、すべてその根幹にはこのドーパミンが関係していて、人は無意識にでもその強い作用に影響されている、ということを知ることが依存体質から抜け出す第一歩となる。
ちなみに2017年に出た『SLEEP』にはこうある。
電子機器はドーパミン製造機だ
(省略)ところが近年になり、ドーパミンは快楽と無関係であることが明らかになった。快楽の感情は、オピオイドという物質の作用がもたらす結果として生まれるという。ドーパミンは、探究という行為にのみ関係する物質だったのだ。獲物を探す、先がどうなるのかを知る、といったことをするだけで、ドーパミンは分泌される。脳波ドーパミンがじわじわ分泌される状態が大好きだ。そんな脳が、インターネットにハマらないわけがない。
ここに出てきた電子機器、インターネットの話もさることながら、実際には快楽を感じるのはドーパミンではなく、『オピオイド』という物質だという。したがって、私がこのあたりの事実を分かりやすく説明するときにはいつもこう話している。
迷路でゴールを探しているときに出ているのがドーパミン。ゴールしたときに出ているのがオピオイド。
何にせよ、人はこの快楽物質の為に生きていると言っても過言ではないほど、これの『虜』になってしまっているようだ。私は、このある種の呪縛から解放された人間こそが、真の自由を手に入れた人間であり、『成功者』の名に相応しい人だと判断する。