睡眠に効く食物や栄養素は?
『乳製品・魚類・大豆製品・ナッツ類・発酵食品』が挙げられます。
睡眠に必要なのはメラトニンです。そのメラトニンに必要なのはセロトニンです。そしてそのセロトニン生成に必要なL-トリプトファンは体内で合成されないため、食事によって摂取する必要があります。つまり、L-トリプトファンを摂取することが求められるわけです。そのようなことを一つ一つ考えていくと、これらの食物がピックアップできるわけですね。睡眠に有効な食物や栄養素はたくさんありますが、厳選するならこれが挙げられます。
睡眠に効く食物や栄養素は、実はたくさんあります。『○○を食べれば快眠できる』というものはないのです。しかし、それらの中から代表してピックアップできるのは、
となります。
それはまず下記の記事を見ると理解が早いのですが、睡眠は、
これらの物質をなくしては語れません。
『ササッとわかる「SAD 社会不安障害」 あがり症の治し方 (図解 大安心シリーズ)』にはこうあります。
3つの栄養素をバランスよく摂ることが大切
セロトニン生成に必要なL-トリプトファンは体内で合成されないため、食事によって摂取する必要がある。このトリプトファンがビタミンB6と結びつき、セロトニンが合成される。ブドウ糖はトリプトファンを脳まで効率よく運び、セロトニン生成を支える。
セロトニン生成に必要なL-トリプトファンは体内で合成されないため、食事によって摂取する必要があります。つまり、L-トリプトファンを摂取することが求められるわけです。それが睡眠の質を高めるために必要な栄養素なんですね。
その記事にも書いたことなのですが、『「脳ストレス」に強くなる!セロトニン睡眠法』にはこうあります。
食事でセロトニンの原料補給
(省略)トリプトファンは、ほとんどのたんぱく質食品に含まれていますが、特に多く含まれるのは、豆腐、納豆、大豆製品のほか、レバー、チーズ、牛乳、ヨーグルトなどの乳製品、マグロの赤身、バナナ、お米などです。また、トリプトファンがセロトニンを合成する際には、ビタミンB6が不可欠となります。食事と際は一緒に摂ることが大切です。ビタミンB6を多く含む食品は、ニンニク、ショウガ、豚肉やレバー、青魚などです。(中略)さらに脳のエネルギーとなるブドウ糖も一緒にとることが大事です。これは米、芋などの穀類のほかに果物などに含まれます。一般的に健康にいいとされるバランスのとれた食事をしていれば、おのずとトリプトファンを摂取することができます。
では一度まとめてみましょう。
実際にはトリプトファンだけを摂取していてはだめで、
のすべてをバランスよく摂取することが求められます。この時点で、もうすでに『睡眠のために摂るべき食事』がこれだけありますよね。ですから何度も言うように、『○○を食べれば快眠できる』というものはないということを覚えることが必要です。
しかし挙げた食物をよく見ると、
が含まれていますよね。更にこれらについての恩恵はすでにその他の記事で詳細をまとめていますので、併せてご確認ください。
乳製品
魚製品
大豆製品
ナッツ類
発酵食品
他にもいくつかあるのにこの5つをピックアップしたのは、
ということが言えます。たしかに、肉にも恩恵はたくさんありますが、下記の記事を書いていることがそれを外した理由の一つです。
高カロリー食をとっていると、ワキガの原因であるアポクリン汗腺や皮脂腺が肥大し、発達する傾向があります。『肉食→魚食→大豆食』に変えることで様々なメリットを得ることができます。更に、下記の記事では『日本人に合った食事』について書いていますが、日本人と大豆食というのは相性がとてもいいのです。味噌汁、豆腐、納豆、湯葉等ですよね。和食の代表食です。
また、納豆は大豆製品でもあり、発酵食品でもありますし、『湯葉』や『高野豆腐』については、『グリシン』という睡眠を誘う非必須アミノ酸を摂取できる利点もあります。ちなみにグリシンを多く含む食品は以下の通りです。
グリシンを多く含む食品
湯葉や高野豆腐は、ヘルシーかつ高たんぱくで、更にトリプトファンも含まれていることから、積極的に食べるべきだと考えられます。ただこのグリシンに関しては下記の記事にまとめたように、『グリシンと睡眠』についての研究結果を、いずれ中立機関が営利を目的としない形でしっかりと研究して、同じことを発表するまで過信しない方がいいでしょう。非必須アミノ酸ですから、体で作られる栄養素ですからね。
ですから、中には『睡眠に黒酢が効く!』という話もあるようですが、その理由がこのグリシン目当てということですから、そのあたりについてはまだあまり過信しない方がいいでしょう。ただ黒酢は元々体にとてもいい影響を与えるので、摂ること自体にデメリットはないと言えます。むしろメリットが多いですね。しかし、睡眠との関連性は定かではありません。
また牛乳ですが『疲れが確実にとれる「眠り方」のコツ』では『ホットミルク』についてこうあります。
牛乳の主成分は、水分とたんぱく質。水分は眠る前の水分補給の助けになる。タンパク質ではカゼインがもっとも多く含まれ、これが消化分解されると、体によいとされるさまざまなペプチド(アミノ酸がつながったもの)ができる。そのひとつに『オピオイド・ペプチド』と呼ばれる鎮痛・鎮静作用の強いペプチドが含まれるのだ。オピオイド・ペプチドは、ランナーズハイでおなじみのβエンドルフィンと同類の、いわゆる『脳内モルヒネ』のこと。神経の興奮を鎮め、リラックス効果で快眠を促してくれる。
つまりこういうことですね。
ホットミルクにはこのような鎮静効果があるので、乳製品がピックアップできるということです。『ナイトミルク』という、子牛がすんなり眠りに入れるようにメラトニンというホルモンが多く含まれている牛乳があるのですが、北欧ではそのナイトミルクを飲んで精神安定させ、うつ病のリスクから身を守ったり、睡眠の質を上げるのが習慣となっていることもあります。ちなみに日本の場合、大塚製薬から出ている『nemu』という牛乳がそれです。
では『食物繊維』は何でしょうか。先ほどの5つの栄養素を含む食材の中に、食物繊維は含まれていませんね。ゴボウやニンジン、キャベツ等、食物繊維が含まれる食物はたくさんありますが、なぜ睡眠にこれらが必要なのでしょうか。実はそれも冒頭に張ったトリプトファンの記事に書いてあります。
トリプトファンは本来、『体内では合成されないから食事から摂るしかない』と言われているのですが、それについて、新しい見解があります。『あなたの身体は9割が細菌』にはこうあります。
ただし、食べた細菌が腸内で工房を開いてセロトニンを増産してくれる、というほど単純な構図ではない。生きた細菌を体内に入れるとそれが合図となって、まずは別の物質であるトリプトファンの血中濃度が上がる。トリプトファンはセロトニンに直接変換されるので、幸福感を得るのに欠かせない物質だ。うつ病患者ではトリプトファンのの血中濃度が低いことが多く、トリプトファンを含むたんぱく質をあまり食べない国では自殺率が高いという。トリプトファン含有食品の摂取をやめると一時的に重症のうつ病になる。トリプトファン不足はセロトニン不足を意味し、セロトニン不足は幸福感不足を意味する。ここで注目すべきは、細菌を加えるとトリプトファンが増加するのは細菌がトリプトファンを産生しているからではないということだ。細菌は、トリプトファンを破壊していた免疫系の過剰反応を抑えるのだ。
トリプトファンは、『体内では合成されないから食事から摂るしかない』と言われていました。しかし、『トリプトファン』を直接摂るのではなく、『トリプトファンを破壊していた免疫系の過剰反応を抑える細菌』を摂ることにより、トリプトファンの血中濃度が上がるというのです。
ということで、腸内フローラを整えるような食事や栄養も、結果的にトリプトファンの血中濃度を上げることにつながるので、摂るべき食事や栄養は、さらに多岐にわたることになります。
例えば上記の記事に書いたように『青汁』もそうですし、大きなポイントとしては『食物繊維』が挙げられるわけです。
といった栄養素は、その腸内細菌の応援をするために必要不可欠なものですから、それを含むあらゆる食品が、結果的にトリプトファンの濃度を引き上げることにつながります。それに加えて、前述したトリプトファンを直接的に含む食品を摂取すれば、十分な量のトリプトファンが体内に補充されることになるわけです。そして、『発酵食品』の中にはそのうち『乳酸菌、オリゴ糖』が含まれています。それも発酵食品を代表食の中に入れた理由ですね。
では一度これらの食物と栄養素の役割をまとめてみましょう。
睡眠の質を上げるために有効な食物や栄養素
乳製品 | トリプトファンが豊富、トリプトファンを最大限に発揮させるために必要、オピオイド・ペプチドの快眠効果 |
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魚製品 | トリプトファンが豊富、トリプトファンを最大限に発揮させるために必要 |
大豆製品 | トリプトファンが豊富、トリプトファンを最大限に発揮させるために必要、大豆イソフラボンが万能 |
ナッツ類 | トリプトファンが豊富、トリプトファンを最大限に発揮させるために必要、カルシウム豊富で精神安定 |
発酵食品 | トリプトファンが豊富、トリプトファンを最大限に発揮させるために必要、腸内フローラを整える |
食物繊維 | トリプトファン減少を抑制、トリプトファンを最大限に発揮させるために必要、腸内フローラを整える |
やはりトリプトファンがカギになっていることがわかりますね。これらに含まれるマグネシウムやナイアシン、ビタミンB6等も、そのトリプトファンを最大限に発揮させるために必要な栄養素となります。
以上が睡眠の質を上げるために必要な食物や栄養素の代表ですが、睡眠と食事で考える場合、まだまだ考えるべきポイントはあります。
下記の記事には、
等が睡眠へ与える影響等についても記載しています。これは普段の食事というよりは、『寝る前に食べたり飲んだりするもの』ということでピックアップしているものですね。基本的に寝る前の飲食は『温かいもの』がいいのですが、ここでは逆に『冷やす』ことを意識した食事と、その理論についてまとめています。
また同じように下記の記事では、
等の『寝る前に飲んではいけないもの』について記載していますので、併せてご確認ください。利尿作用、覚醒作用があれば睡眠の質は低下しますからね。
また『唐辛子』等の辛いものを食べると体温が上昇し、そのあとに体温は急激に下降します。すると、人は眠くなります。
これは運転中の睡魔に勝つために『ガムを噛む』以外の眠気覚ましとして考えたとき、『トウガラシ等の刺激物は逆に眠くなる』という観点から見た事実ですが、もしかしたら寝る前に刺激物を食べると、この原理からして眠くなるかもしれません。
ただ、これは『快眠』とはまた別の話でしょう。恐らくそのような刺激物が胃の中にあると睡眠の質は高くなるよりは、むしろ低下しそうなものです。例えば私は以前、暴飲暴食をして胃を痛めたのですが、胃薬を飲んでも胃痛はなかなか治まらず、結局2時間ほど胃痛に悩まされて寝られませんでした。寝る前に食べる食事というのはやはり、『スープ』のような胃に優しいものが適していると言えるでしょう。
また上記の記事に書いたように、『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』で『良質な睡眠をもたらしてくれる栄養素』として、以下の栄養素を挙げています。
それらもよく見るとここで挙げた5つの食物や栄養素が軸になっているのですが、突き詰めるとこれだけの栄養素が睡眠に関わっているんですね。
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