夢遊病や金縛りの原因は?
この2つ症状の原因は似ています。
脳は眠っているのに体だけが目覚めてしまっている状態のときに起こるのが『夢遊病』。その逆で、脳は起きているのに体だけが眠ってしまっているのが『金縛り』です。夢遊病の場合は子供時代に表れることが多い症状ですが、大人でも出るときがあります。その場合『過剰なストレス』が原因であることが多いようで、例えば無理なダイエットが引き金になるということもあります。
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睡眠中に無意識に歩いてしまったりするいわゆる『夢遊病』はなぜ起きてしまうのでしょうか。マンガやなんかで面白おかしく描いているのを他人事として見るのはいいのですが、実際に家でそういう人を見たらドン引きしますね。またその人が普段しっかりしていればいるほどそうかもしれません。
例えば、お笑い芸人の出川さんのようないじられキャラで、そういうある種の異常さが個性で、周りにそれらを笑いに変えてくれるような環境があるならいいのですが、そうじゃない場合は、『ドン引き』ということになっても仕方ありません。あるいは普通に心配してしまいますしね。自分の家族がそういう行動をとっていたら、普通に心配です。私が子供のころ、叔父に対し、
なんか独り言をよくしゃべるな…
と思っていました。思っていただけじゃなく、直接それを茶化してもいました。叔父は、『それ』以外は何も問題なく(実際には子供に悪影響を与えるようなことをしていなかったということ)、ただの『いいおじさん』でしたので、そうして茶化すことも簡単にできたし、嫌いではありませんでした。しかし自分の自我が成長していくにつれ、物事の判断ができるようになり、知識がついてくると、その叔父の行動が『異常』だということがわかってきました。
ん?…やっぱりこの行動は、異常だぞ…
叔父は、『統合失調症』だったのです。当時は『精神分裂病』という名前でした。そのまがまがしくも恐ろしいネーミングに、子供のころの私は正直たじろぎました。両親の本棚にある数少ない本にさりげなく『精神分裂病』の何たらというタイトルの本があるのを見たときは、この家庭・親族に存在するある種の負の存在を垣間見た気がして、気分が落ち込んだのを覚えています。
しかしそんな私がその叔父についてどう思ったかというと、普通に心配しましたね。病気と分かったからといって接し方を大きく変えることもなく、いつか良くなることを期待しながら、そんなことを頭の片隅に置きながら自分の人生を先に進めました。結局、叔父は治らないまま50代で亡くなりました。その世話をしていた祖母は正直言って、最愛の息子が自分よりも早く亡くなったことはとても辛かったはずですが、同時にある種の解放感もあったでしょう。そのような発言をどこかでボソッとしているのを聞いたことがあります。
さて、この夢遊病は、今話した『精神分裂病』と何か関係があるのでしょうか。自分の意志とは無関係の部分で、勝手に行動してしまうあたり、統合失調症のそれと症状が似ているような気もしますね。『図解雑学 睡眠のしくみ』にはこうあります。
『夢遊病』とは
摩訶不思議な睡眠障害の一例
睡眠障害のうちの一つ『睡眠時随伴症』に含まれる『覚醒障害』を代表する疾患が『夢遊病』の呼び名で知られる睡眠時遊行症である。この夢遊病とは、睡眠中に突然布団から起きだして、歩いてみたり何かしらの行動を全く記憶していない病的な状態のこと。行動時間は、だいたい10分から15分と言われている。
では一度まとめてみましょう。夢遊病の正式名称は『睡眠時遊行症』であり、睡眠障害の一つということですね。睡眠障害にもいろいろ種類がありますが、そのうち『睡眠時随伴症』に含まれる『覚醒障害』を代表する疾患がこれです。統合失調症とは関係ないということですね。
統合失調症の場合、幻覚が見えたりして誰かと話を始めるのが特徴ですが、夢遊病の場合誰かと話すというよりは、『無言で行動する』パターンが多いのが特徴です。統合失調症のことを理解したければ、映画『ビューティフルマインド』を見るといいでしょう。ネタバレになってしまいますが、下記の動画で主人公の男性と話している背の高い男性は、『実在』しません。つまり、彼の妄想の中にいる人物なのです。
『心の病と精神医学』(ナツメ社)にはこうあります。
統合失調症(精神分裂病)の症状
- 統合失調症の基本症状
統合失調症の患者は表情が硬く不自然で、行動もぎこちなく、意味不明の話をしたり、突然にやにやと笑ったりする。また患者が醸し出す独特の雰囲気ー患者が別世界の住人に思え、対面した者に困惑をもたらすような感じーの『プレコックス感』も指摘されている。
こうして比べて見ると、夢遊病と統合失調症の違いがわかりますね。『ビューティフルマインド』は実話です。ノーベル経済学賞受賞の実在の天才数学者、ジョン・ナッシュの半生を描いた物語で、彼もまた生きている間、統合失調症に悩まされた人の一人なのです。映画を観ればわかりますが、その人生は壮絶です。普通の人がとても経験できない人生を生きることになります。それと比べれば、夢遊病はまだ軽い症状だと言えるでしょうね。
『図解雑学 睡眠のしくみ』にはこうあります。
この症状は、深いノンレム睡眠から覚醒へと移る際に見られるので、いわゆる脳は眠っているのに体だけが目覚めてしまっている状態のときに起こるものだ。ちなみに、夢遊病になまされている人は100人に1~6人くらいの割合と言われており、子供に多くみられる症状である。普通は、成長するとともに自然と治るケースが多い。よく、子供が夜中に尿意を催して起きたのはいいが、トイレではない場所でオシッコしてしまったりすることがあるが、これは夢遊病とまではいかないが強度の寝ぼけ状態と言えるだろう。
このように、夢遊病というのは子供のころによくみられるようですね。 ではここで、人の睡眠時のレム睡眠とノンレム睡眠の流れを見てみましょう。
脳は起きて身体が眠っている。浅い睡眠。Rapid Eye Movement。急速な眼球運動を伴う眠り。瞼の中で目がぎょろぎょろと動いていることから、REM睡眠と名付けられた。
脳も体も眠っている。深い睡眠。
このように、『深い眠りのノンレム睡眠』を『4、5回』ほど繰り返すのが、通常の睡眠の流れになります。夢遊病は、この深いノンレム睡眠から覚醒に移行するときにあらわれる現象だと言われています。
『脳は眠っているのに体だけが目覚めてしまっている状態のときに起こる』というのは、『金縛り』の真逆です。あの金縛りは、『脳は起きているのに体は眠ってしまっている』状況です。『図解雑学 睡眠のしくみ』にはこうあります。
睡眠時随伴症
(省略)『通常レム睡眠に伴う睡眠時随伴症』は、悪夢や金縛りと呼ばれる睡眠麻痺などが含まれる。心象現象として受け取られがちな金縛りは、レム睡眠にあるため骨格筋動かすことができないのに意識が覚醒状態にあることで起こるものだ。
それぞれの睡眠時随伴症の違い
夢遊病 | 脳は眠っているのに、体は起きてしまっている |
---|---|
金縛り | 脳は起きているのに、体は眠ってしまっている |
『脳とカラダの不思議 (にちぶんMOOK)』にはこうあります。
Q.金縛りの正体は?
A.科学的に証明されたレム睡眠時の睡眠麻痺
(省略)また、人はレム睡眠時に夢を見ていることが多いが、こうしたことが、金縛りを霊体験と結びつけて考えるようになった一因といえそうだ。怖い夢を見ているときに目が覚めて体が動かないと、半分寝ぼけたような状態になり、今見ていた夢が、現実なのか、自分でも判断できなくなるのである。
金縛りは『レム睡眠』という浅い睡眠のときに起こる『睡眠麻痺(正式名称)』なのですが、このレム睡眠では夢を見ていることが多く、更に、血圧や心拍数も起床時と同じくらい変化しているため、もし怖がってしまうと、『体(内臓)は怖がっているのに体が動かせない』という状態になり、鼓動も早くなるし、血圧も上がって、より恐怖心が増していくというわけです。
私は二度ほど『金縛り』の現象を体験しましたが、一度目は理論を知りませんでした。しかしその時はもうすでに私の自我は完全に確立されていたので、自分の意志の力だけでそれを力づくで解除しようと試みました。しかし脳は起きているのですが体は目覚めていませんので、体が動きません。
うおおお!!!動け動け動け!!
と念じてもなかなか動きませんが、自分の意志の力をここぞというばかりに発揮してみせる覚悟であきらめずに念じ続けたら、徐々に手が動き出し、何とか『金縛りを解除』できました。実際にはそうではなく、『脳と同じように体も起きた』というのが正確な表現ですね。そして二回目はそれから数年後に起きたのですが、その時はもうすでに理論を知っていましたし経験済みなので、同じように力づくで起き上がりました。しかし、まだお化けや幽霊の存在がなんであるかについてもよくわからず、意志もしっかりしていない子供のころにこの経験をしたら、私もそれが『金縛りだった』と言ってしまったかもしれません。
またこの金縛りは『ナルコレプシー』という睡眠障害を持っている人にもよく現れます。『お酒や薬に頼らない「必ず眠れる」技術』にはこうあります。
ナルコレプシーとは、オレキシンという脳内の神経伝達物質が足りないことによると考えられている睡眠障害です。睡眠時の脳波や眼球の動きはモニタリングしてみると、入眠時にはまずノンレム睡眠が出現するはずなのに、いきなりレム睡眠が出現します。これを入眠時レム睡眠と言って、ナルコレプシーに特異的に見られます。このとき、脳はまだ起きているのに、体はいち早く眠りに入って動かないという現象が起こり、これが金縛りとなって現れます。
先ほどの睡眠の流れを見てもわかるように、最初にあるのは『90分かけてノンレム睡眠へ』でしたね。しかし、この一番最初の入眠時が『レム睡眠』になってしまうのが、このナルコレプシーという睡眠障害です。レム睡眠は浅い睡眠ですから、金縛りのような現象が起きやすいと考えられています。
さて、『お酒や薬に頼らない「必ず眠れる」技術』にはこうあります。
不眠を引き起こすその他の病気
(省略)夜驚(やきょう)は、小学生くらいの年代の子供が、睡眠中、急に叫び声を上げたりして起きだす病気です。(中略)これとよく似たものに夢中遊行症があります。今までぐっすり眠っていたかと思うと突然起き上がり、部屋をうろうろと歩き回ったり、ドアや壁を叩いたり、ぼんやりあたりを見回したりします。その後、眠りにつきますが、やはり翌朝は覚えていません。夜驚も夢中遊行症も、まだ未成熟な脳に起きる夢との関連が指摘されています。年齢とともに改善してくるので、あまり心配せずに見守るようにします。
やはり夢遊病は子供のころによく起こり、成長するとともに徐々になくなる傾向にあるようですね。また呼び名としては、
といろいろあるようです。
しかし、大人になっても夢遊病が発症するケースもあります。その場合は、『過剰なストレス』が原因であることが多いようで、例えば無理なダイエットが引き金になるということもあります。
まあこれも統合失調症のそれと比べたら軽いものですね。しかしときにこの夢遊病で、階段から足を滑らせたりして事故を引き起こしてしまうこともありますから、ストレスが原因なんだとしたら、強いストレスを負う生活は避けたいものです。
これは飲酒でもそうなのですが、飲酒によって意識が酩酊し、あるいは記憶をなくすことがあります。私も何度かそういう経験がありますが、その時に自分のした行動の中にはとても無責任なことがあり、あるいは危険なことがありました。ある時は、寝ている間に『許容範囲を超えた態勢』を取ってしまい、朝起きたら右肩の健が伸びてしまっていて、数か月は肩を痛めた状態が続きました。
ストレッチを無理やりすると健が痛くなるのがわかると思いますが、あれを無理やり、寝ている間ずっと取ってしまっていて、手を伸ばして潰した状態で寝てしまったことが原因で、怪我をしてしまったんですね。人はいずれ必ず死にますから、防ぎようがないことは防ぐことはできません。しかし、お酒やストレスをできるだけ自分の身から遠ざけることはできますから、何か問題が起きてしまうまえに、『前始末』として日々の生活習慣を見直したいものです。