睡眠不足が原因で病気になる?
はい。睡眠の質が悪いと86もの病気にかかると言えます。
睡眠不足は日本で『5大疾患』とされている、
はおろか、
等のさまざまな病気の原因となってしまいます。例えばノンレム睡眠より深い睡眠に『徐波睡眠』がありますが、徐波睡眠は『成長ホルモンを分泌し、細胞組織を修復する』『免疫機能を高める』といった役割も果たします。つまり、こうした機能がおろそかになることで、様々な病気にかかりやすくなるということですね。
Contents|目次
睡眠不足によって何らかの病気になるということはあるでしょうか。『睡眠不足で死ぬことはない』という言葉がありますが、その答えの一つは、『睡眠不足になると強制的に眠くなって結局寝るので、その時の睡眠によって体調は回復する』というものです。
しかし、『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』にはこうあります。
睡眠の質が悪いと86もの病気にかかるリスクが生まれる
『睡眠不足で死ぬことはない』 ときどきこうした言葉を耳にしますが、睡眠専門家の立場からすれば、とんでもない話です。睡眠の質が健康に及ぼす影響を甘く見てはいけません。たとえ睡眠不足が直接の死因にはならなくても、睡眠の時間的な不足や質の悪さがもとで病気になり、命を縮めるケースもはいくらでもあります。
睡眠が不足すると86もの病気にかかるリスクが生まれ、早死にする確率も高まるとカナダのラバル大学とアメリカのウィスコンシン大学の研究チームが警鐘を鳴らしています。どんな原因にしろ、睡眠できなくなる状態は決して『無敵の状態』ではなく、むしろ『危険な状態』なのです。睡眠不足になると、日本で『5大疾患』とされている、
はおろか、
等のさまざまな病気の原因となってしまいます。ではどれだけ眠ればいいかということは下記の記事に詳しく書きましたので、併せてご確認ください。
まあ平均してざっと言うとなると『7時間』くらいでしょう。これくらいの睡眠時間が毎日、規則正しい時間で確保されているのであれば、睡眠不足の問題に悩まされることはまずありません。もちろんその『規則正しい時間』というのは『朝の太陽光を浴びて、夜に寝る』という概日リズムを守ったものですので、それに関しても詳細は下記の記事を併せてご確認ください。
約24時間周期で変動する生理現象で、動物、植物、菌類、藻類などほとんどの生物に存在している。人間の場合、『24時間と数分』のリズムが内在していて、実際のリズムと数分ずれている。
ではここで睡眠時の人の脳波の動きを見てみましょう。
人が熟眠感を得るためには脳波をこの『δ派』にする必要があります。この状態になると自律神経は副交感神経が優位になっていて、体温は低下しています。これが『ノンレム睡眠』といわれる深い睡眠です。
脳は起きて身体が眠っている。浅い睡眠。Rapid Eye Movement。急速な眼球運動を伴う眠り。瞼の中で目がぎょろぎょろと動いていることから、REM睡眠と名付けられた。
脳も体も眠っている。深い睡眠。
人間の睡眠で一番深い眠りは、最初の90分のノンレム睡眠にあります。したがって、この時間の寝入りをどれだけスムーズに行えるかで、睡眠の質が変わってくるわけですね。睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返して行われます。
このように、『δ派のノンレム睡眠』を『4回』ほど繰り返すと睡眠時間は『約7時間』になります。しかし、ベッドについてその瞬間に眠れる人はいませんから、ベッドに0時についた場合、『約7時間半』ほど経った、7時30分に起きられれば、十分な睡眠ができたことになります。
『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』にはこうあります。
免疫力を上げ、新たな活力を生み出す『徐波睡眠(じょはすいみん)』
ノンレム睡眠の間、脳は深い休息モードに入っています。その眠りの深さはステージ1~4の段階に分けられ、もっとも深いステージ3や4の睡眠は、脳波に大きく緩やかな波が現れる『徐波睡眠』と呼ばれます。人の眠りはまずノンレム睡眠から始まり、次にレム睡眠が現れます。ふたつを合わせると約90分の周期となり、その周期が一晩に4~5回繰り返されます。ただ徐波睡眠が現れるのは2~3周期まで。その後はほぼ浅い睡眠だけになり、徐々にレム睡眠の割合が増えて朝、目覚めるというわけです。
先ほどの表示では『ノンレム睡眠90分+レム睡眠15分=115分』となっていましたが、この本では『二つ合わせて約90分』とありますね。これに関してはばらつきがありますので、大体この程度と考えておけばいいでしょう。例えば、『ササッとわかる「睡眠障害」解消法』にはこうあります。
ノンレム睡眠とレム睡眠の組み合わせの一つのサイクルを『睡眠単位』といい、1睡眠単位は90~120分。一晩に3~6単位あらわれる。
とあります。このノンレム睡眠とレム睡眠の組み合わせを『睡眠単位』と呼び、それは大体1睡眠単位90~120分ですから、大体これくらいということですね。この睡眠単位は一度の(例えば7時間程度の)睡眠で3~6単位ほどあらわれるわけで、先ほどの表示では(2回目)とか(3回目)というやつがそれです。『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』という本では、これを単位ではなく『周期』と呼んでいますが、これも大体そういうイメージで覚えておけばいいでしょう。
ポイントは『徐波睡眠が現れるのは2~3周期まで』というところですね。つまり(3回目)あたりの睡眠単位(周期)のとろこまでしか、この徐波睡眠は現れないということになります。そしてこの徐波睡眠こそが今回のテーマである『睡眠不足と病気』に関係する非常に重要なカギなんですね。
『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』にはこうあります。
徐波睡眠は、『成長ホルモンを分泌し、細胞組織を修復する』『免疫機能を高める』といった役割も果たします。『ぐっすり眠れた』という熟睡感を作り、『今日もがんばるぞ』との新たな活力を生み出すのもまた、徐波睡眠の特徴です。
もっとも心配される大脳への悪影響
では徐波睡眠が十分でなかった場合、体には何か悪い影響があるのでしょうか。当然ながら大アリです。まずもっとも心配されるのが大脳への悪影響です。
徐波睡眠がもたらす恩恵
徐波睡眠をどれだけきちんと取れるかということが人間の健康につながっているわけです。
例えばこの『成長ホルモン』ですが、これが一番出るのは最初の90分です。『スタンフォード式最高の睡眠』にはこうあります。
『最初の90分』を深くせよ!
(省略)とりわけ最初の90分間のノンレム睡眠は、睡眠全体のなかでもっとも深い眠りである。この段階の人を起こすのは非常に難しく、無理に起こすと頭がスッキリしない。法はを測定すると、非活動状態であることを示す『大きくて、徐行運転のようなゆっくりとした波形』が出現するので『徐波睡眠』とも呼ばれている。(中略)睡眠メンテナンスで意識したいのが『最初のノンレム睡眠』をいかに深くするかということ。(中略)『最初の90分が眠りのゴールデンタイム』といわれているが、まさに黄金だ。たとえば、グロースホルモン(成長ホルモン)がもっとも多く分泌されるのも、最初のノンレム睡眠が訪れたとき。
よく『睡眠のゴールデンタイム』は『22~2時』の4時間だと言われています。その時間さえ寝ていれば成長ホルモンが分泌され、熟眠感を得られるため、中にはその4時間だけしか寝ないという医者もいます。しかし、実はゴールデンタイムというのはその時間ではなく、『最初の90分』なんですね。ですから、この『最初の90分』のノンレム睡眠、つまり『徐波睡眠』をしっかりとれるかどうかということが熟眠のカギとなるわけです。だからこれらのカギをピックアップし、様々な独自の意見があります。例えば、
という考え方です。しかしこれらは少し偏っていて、人がしっかりと疲れをとるために必要な睡眠時間というのは人それぞれで違います。例えば、
等の偉人たちは短い睡眠時間であるショートスリーパーとして有名ですが、『スタンフォード式最高の睡眠』にはこうあります。
ナポレオンの子はナポレオン1?『ショートスリーパー』は遺伝だった!
(省略)ショートスリーパーについての研究で、何十年も6時間未満睡眠なのに健康なアメリカ人親子を調べたことがある。彼らの遺伝子のうち、生体リズム(人の体に備わったリズム)に関係する『時計遺伝子』に変異があることがわかった。そこで、この親子と同じ時計遺伝子をもつマウスをつくって睡眠パターンを観察すると、やはり睡眠時間が短かった。
つまりショートスリーパーであるということには、遺伝が関係している可能性があり、だとしたら通常の体質の人が彼らのような真似をしてもただ睡眠不足に陥るだけの話です。ですから、たとえその『最初の90分』が『ゴールデンタイム』であり、『徐波睡眠』として大きな恩恵を得られるとしても、それだけの時間さえ寝ていればそれでいいということではないということですね。それで済む人もいれば、済まない人もいるということなのです。しかしとにかく徐波睡眠はとても大事だということですね。
では、少し難しい話ですが、徐波睡眠をとらないとなぜ大脳に悪影響を与えるのかという流れを見てみましょう。
疲労物質は徐波睡眠によって取り除かれるため、これがないと大脳に悪影響を与えるわけですね。また、成長ホルモンが担う役割も見てみましょう。本来人の体の細胞は日中の活動でダメージを受けるのですが、成長ホルモンが毎晩修復を行うため、病気になりません。
ということで、徐波睡眠を取ることは人が健康に生きていくためには欠かせないことなのです。
そして、徐波睡眠の恩恵でそれと同じくらい重要なのが『免疫機能を高める』ということです。人間は免疫力によって細菌やウイルスから身を守っているわけです。免疫力はいわば『警備隊』です。
免疫細胞の種類と働き
免疫細胞の種類 | 主な働き | |
---|---|---|
顆粒級 | 好中球 | 体内に侵入した病原体を食べる |
好酸球 | アレルギー反応 | |
好塩基球 | (同上) | |
単球 | マクロファージ | 体内に新入した病原体を食べる。リンパ球と情報交換、抗原提示 |
樹状細胞 | (同上) | |
リンパ球 | β細胞 | 病原体を攻撃する抗体の生産 |
ヘルパーT細胞 | 免疫システムの統率 | |
キラーT細胞 | 過剰な免疫反応を抑制 | |
NK細胞 | がん細胞やウイルス感染細胞を攻撃 |
免疫力というのは、上の表にあるような免疫細胞たちの『総合力』のイメージです。これを見てもわかるように、彼ら警備隊がいてくれるからこそ、人間は驚異的な存在、つまり『犯罪者』から自分の身を守ることができるのです。『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』にはこうあります。
徐波睡眠不足は細菌感染やがんの原因にもなる
また徐波睡眠が足りないと、細菌やウイルスを攻撃する免疫力も下がってしまいます。(中略)『寝不足続きで風邪をひいた』という経験は誰もがあると思いますが、これは免疫力の低下が原因です。ちなみにひどい風邪をひくと何時間も続けて眠れるのは、眠くなる成分が薬に含まれていることに加え、深く眠ることで体自体が自らの免疫力を高め、ウイルスを撃退しようとする力が働くためだといわれます。
そして免疫力という警備隊の力が弱まれば、風邪のウイルスだけじゃなく、他のありとあらゆる細菌の感染も容易にし、そしてがんの原因ともなるのです。例えば私は持病で『口唇ヘルペス』を患っているのですが、これは疲労などで免疫力が下がっているときに必ず発症します。潜んでいるウイルスが口元に降りてきて、皮膚を食い破って増殖しようとするんですね。
私がこれをよく発症するタイミングは『睡眠不足』状態に陥っているときです。私の場合、スケジュールが結構ハードなので、仕事の合間にハードなトレーニングが入っていたりします。ボクシングのミット打ちもしますし、懸垂から、重いダンベルを使った追い込みまで、結構本気でやります。ただでさえ仕事で頭をフル回転させるのに、体自体を更に酷使するわけです。ですから私の言う『睡眠不足』というのは先ほど考えたように『疲労物質を除去すべき時間が足りない』ということになります。つまり私は、人一倍睡眠を取り、疲労物質を除去しなければならないのです。
五郎丸選手で有名な早稲田大学のラグビー部は、練習のスケジュールに『スリープ』という項目があるそうです。それはとても理にかなっています。筋肉はたくさん酷使したあと、たっぷりと栄養をとり、そしてぐっすりと休養をとることではじめて増強するのです。
私がよく『口唇ヘルペス』を発症していたときは、『仮眠』を全くしていなかったときです。私は仮眠を取るようになって5年以上経ちますが、面白いほどにそれ以降、ヘルペスで悩まされることが激減しました。一度ヘルペスが発症したら一生ものなのですが、たとえそうであっても、そして私のように体を酷使する毎日を送っていても、『仮眠』という睡眠をしっかりと確保していれば、免疫力が回復して、ウイルスの暴走を抑えることができるんですね。
ですから私はこの『仮眠(睡眠)』の実力をよく理解しています。ここで取り上げたのは『徐波睡眠』ですが、私のように『昼前に20分ほどの仮眠を2回ほど入れる』ような生活であっても、ウイルスの暴走、細菌の感染は抑制できるようです。
また、睡眠不足はうつ病の原因にもなるといいましたが、そもそも、『うつ病患者の大半は不眠傾向にある』と言われています。
そして不眠傾向の人は、そうでない人に比べて『うつ病になるリスクが40倍高い』とまで言われています。つまり、
ということで、うつ病と睡眠というのはとても密接な関係があります。『家族のためのよくわかるうつ』にはこうあります。
うつ病の症状2 体の変化
極端に疲れやすくなり、体にもさまざまな症状が表れます
(省略)代表的な身体症状にはまず『睡眠障害』が挙げられます。睡眠障害にもいくつか種類があり、主なものは入眠障害・熟眠障害・早期覚醒・中途覚醒の4つですが、生物学的な原因の強いうつ病では、早朝に目覚めてしまう『早朝覚醒』が多いとされています。逆に、昼や夕方まで眠ってしまい、いくら眠っても熟眠感が得られない『過眠』になる人もいます。
うつ病になるとこのような症状が表れるようになります。どちらもその睡眠では熟眠感が得られないため、常に『睡眠不足』に近い状態が続きます。ですから心身の疲労回復がうまくできず、慢性的に疲労困憊し、衰弱しきったような状態になります。また、うつ病になると睡眠障害だけじゃなく、
等の問題も引き起こします。ですからよく『寝て食べてセックスができれば、うつ病ではない』と言います。こう考えると、睡眠というものは心身の健康面を測る一つのパロメーターですね。当サイトにはうつ病について考える記事もたくさんありますので、併せてご確認ください。
また現在うつ病とは無関係の人も、『睡眠不足→うつ病になる』というパターンに該当しないように気をつける必要があります。上の記事にも『必要以上の重荷を負う』というキーワードがありますが、普段の仕事や家事、ストレス等がそうだし、またその『重荷をリセットする』役割のはずの『睡眠』をおろそかにしてしまうことは、心身の健康にとって危険なことです。
また、うつ病の患者には『セロトニン』が不足している共通点があります。このあたりのホルモンのことについては下記の記事で詳しく書きました。
『ササッとわかる「SAD 社会不安障害」 あがり症の治し方 (図解 大安心シリーズ)』にはこうあります。
3つの栄養素をバランスよく摂ることが大切
セロトニン生成に必要なL-トリプトファンは体内で合成されないため、食事によって摂取する必要がある。このトリプトファンがビタミンB6と結びつき、セロトニンが合成される。ブドウ糖はトリプトファンを脳まで効率よく運び、セロトニン生成を支える。
これは『あがり症』の本ですが、あがり症もうつ病も同じく『セロトニン』という脳内物質がキーワードになります。セロトニンは、やる気を高める『ドーパミン』と、不安を高める『ノルアドレナリン』とをコントロールし、精神を安定させる神経伝達物質です。
上記の記事で、これら『ドーパミン、ノルアドレナリン』を『サーカスの猛獣』にたとえ、『セロトニン』はそれを抑える『猛獣使い』だと表現しました。セロトニンがあるからこそ、人間の精神は不安定から脱却できるのです。
例えば、セロトニン生成に必要なL-トリプトファンは体内で合成されないため、食事によって摂取する必要があります。つまり、L-トリプトファンを摂取することが求められるわけです。そして、朝日を浴びることでセロトニンが出て、快眠物質の『メラトニン』は、光を浴びてからおよそ15時間後に分泌されます。メラトニン自体は、太陽光や電子機器等の『光』に含まれるブルーライトを浴びた直後は、分泌が抑制されます。ですから、朝7時に太陽光を浴びた場合は、22時にメラトニンが分泌され、眠気が出てくるわけです。
つまりまとめると、
『L-トリプトファンを摂り、朝にしっかり起きて朝日を浴びてセロトニンを出し、精神を安定させ、同時に活動的になり、その後15時間後にメラトニンを出し、快眠できれば、疲労も回復でき、その睡眠でトリプトファンもうまく利用でき、朝の朝日でまたセロトニンを作ることができる』
ということになるわけです。ですからこれをさらにかみ砕いて言うと、
というポイントをしっかりと抑えれば、人の心身というものは健康に向かうことができるようになります。したがって、もしこれらの要素をおざなりにしてしまえば、それが祟って次々と体調が悪化していくことになるわけですね。これは『人間の仕組み』ですので、逆らうことなく、ごく単純にこれに素直に従って生きることが求められています。人は、酸素がなければ死にます。植物は、水がなければ枯れます。このような『真理』は決して逆らうものではなく、従うべきもの。もし老化や原因不明の難病以外で自分の体調が悪化したのなら、もしかしたらこれらの『真理』に知らぬ間に逆らってしまったのかもしれません。
また、睡眠不足はうつ病だけじゃなく『認知症』の原因ともなりえます。
『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』にはこうあります。
平均寿命を迎えるころまでに4割の人が認知症になる…大変に重い現実です。ただ裏を返せば『6割は認知症を発病しない』ということでもあります。ではその6割に入るにはどうすればいいのでしょうか。答えは明快!質のよい睡眠をきちんととればいいのです。睡眠には認知症を防ぐ作用があるためです。
認知症には、
と種類がありますが、最も多いのはアルツハイマー病です。アルツハイマー病は脳が委縮し、知能や体の機能が衰えていく病気です。夢遊病の症状がある人は、将来パーキンソン病や、認知症になるリスクが比較的高いとも言われています。
このアルツハイマー病になる原因は『βアミロイド(老人班)』というたんぱく質が脳に溜まり、脳内神経細胞を破壊することです。
βアミロイドにはこのような繰り返しがあり、これがバランスよく保たれていればアルツハイマー病は発症しません。しかし、睡眠不足によって脳内のβアミロイドの量が増加すると、やがてアルツハイマー病になる可能性があるのです。日中に増えたβアミロイドを脳内から処理するために必要な睡眠時間は、『6.5時間以上』だと言われています。一時的に短時間睡眠になることはいいのですが、それが慢性化するとなると、こういうリスクも増えてくることを忘れてはなりません。
『疲れをとるなら帰りの電車で寝るのをやめなさい』にはこうあります。
2015年には、脳内にアミロイドβが増えると睡眠の質が悪くなり、さらにアミロイドβがたまりやすくなる悪循環を引き起こすことを示唆する研究結果も発表されている。
睡眠不足は見えないところで、様々な悪循環、負のスパイラルを作ってしまう原因となるのです。ただ、老人の場合はどうすればいいでしょうか。加齢によって睡眠の質は低下し、睡眠時間も減ってきますから、その場合は以下のようなポイントを押さえることが必要です。
βアミロイドを処理するためのポイント
ただ、このポイントなのですが、これは専門家によっては意見が分かれます。先ほど実ゴールデンタイムというのはその時間ではなく、『最初の90分』だとありましたよね。ですから、この『最初の90分』のノンレム睡眠、つまり『徐波睡眠』をしっかりとれるかどうかということが熟眠のカギとなるわけです。したがって、『午後10~午前2時』にこだわる必要はないということです。
また仮眠ですが、確かにこの本にも『1時間以上の昼寝はだめ』だとあります。アルツハイマー病の多くは1日3時間程度昼寝をする傾向があり、長すぎる昼寝はアルツハイマー病のリスクを上げると説明しています。そして、『30分程度の定期的な昼寝の習慣には、アルツハイマー病のリスクを5分の1程度にまで下げる効果がある』と説明しています。
しかし、下記の記事で昼寝や仮眠について考えましたが、仮眠の専門家は、『20分以上の仮眠はNG』だとしています。また、睡眠負債を返済するために必要なのは、『6~15分ほど目を閉じる』のが一番効果があるとあり、ここでも『20分以上の仮眠はNG』だとしています。このあたりでは意見が割れているので、総じて考えると、
『20~30分くらいの仮眠が理想的』
だと言うことになるでしょうか。その仮眠も、『目を閉じるだけ』のものと、実際に仮眠するものといろいろありますが、大体このくらいの時間横になって、目を閉じて、意識としては『寝たつもり(休んだつもり)』になるのが一番いいのかもしれません。
『疲れをとるなら帰りの電車で寝るのをやめなさい』にはこうあります。
『記憶を司るのは脳の海馬という部分ですが、睡眠時間が少ない子供はこの海馬の体積が小さくなっている。成人を対象にした研究でも、しっかり睡眠時間をとっている人のほうが記憶力が高いというデータが出ています』
どちらにせよ睡眠は人間の記憶や脳に大きな影響を与えることは間違いありません。『徐波睡眠』をしっかりと取り、足りない分は『20分程度の昼寝や仮眠』で補い、心身のメンテナンスを忘れないようにしましょう。私は30歳になる前からそれを取り入れていますが、先ほどのヘルペスの話のように、かなり心身の調子がよくなりましたね。また、アスリートとなると大学生から、早ければ中学・高校生からすでに『仮眠』の時間をトレーニングの間に設けています。筋肉の成長を常に求められる彼らにとっては、仮眠は当たり前のことなのです。もし仮眠に対してネガティブなイメージがあるというのなら、それはただ『知識不足』なだけかもしれません。