人の理想の睡眠時間は?
『6.5~7.5時間』です。
なぜか、『7時間』よりも短くても、長くても、死亡率が少し高いのです。また、ショートスリーパー、ロングスリーパー等がいますが、例えばショートスリーパーは遺伝が関係していたり、あるいは仮眠を間に取っていたりするので、『天才がショートスリーパーだから』という理由で真似をしても効果は得られないということを知っておきましょう。彼らは決して、ショートスリーパーだから天才なのではないのです。そのあたりをはき違えないようにしましょう。
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そもそも、人が眠るのはなぜでしょうか。
それは、『ホメオスタシス』が関係しています。
人間が常に正常でいるための機能。
『睡眠不足で死ぬことはない』という言葉がありますが、その答えの一つは、『睡眠不足になると強制的に眠くなって結局寝るので、その時の睡眠によって体調は回復する』というものです。『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』にはこうあります。
睡眠の質が悪いと86もの病気にかかるリスクが生まれる
『睡眠不足で死ぬことはない』 ときどきこうした言葉を耳にしますが、睡眠専門家の立場からすれば、とんでもない話です。睡眠の質が健康に及ぼす影響を甘く見てはいけません。たとえ睡眠不足が直接の死因にはならなくても、睡眠の時間的な不足や質の悪さがもとで病気になり、命を縮めるケースもはいくらでもあります。
たしかに『睡眠不足になると強制的に眠くなって結局寝るので、その時の睡眠によって体調は回復する』ため、睡眠不足が直接の死因にはなりません。しかし、睡眠が不足すると86もの病気にかかるリスクが生まれ、早死にする確率も高まるとカナダのラバル大学とアメリカのウィスコンシン大学の研究チームが警鐘を鳴らしています。つまり、
『睡眠不足は結果的に死を招く問題を引き起こす』
と言えるわけですね。『図解雑学 睡眠のしくみ』にはこうあります。
眠らないと人はどうなるか?
断眠は精神機能に悪影響を及ぼす
『一晩くらいの徹夜なら平気だ』という人もいれば、『少しでも寝ないと無理。体がもたない』という人もいるように、人間が起きて活動していられる時間、言い換えるならば断眠が可能な時間の幅には個人差があるようだ。長い断眠によって最も悪影響を受けるのは精神機能である。これは完全な断眠だけではなく、長期間にわたる睡眠不足でも同じことが言える。では、具体的にどのような状態が起こるのだろうか。
ここでは『断眠は精神機能に悪影響を及ぼす』として、以下のような症状が起こると説明しています。
断眠3日目くらいから徐々に体の不調が現れ、意識がもうろうとしてきます。そして感情の起伏が激しくなり、平常心も保てませんから、この時点ですでに、
はできない状態だと言えます。更に5日目にもなると幻覚が見えたり、幻聴が聴こえたりと、精神状況は破綻していきます。したがって、断眠を続けると自然と脳が眠くなるのは、人間のホメオスタシスが正常に働いている証拠です。例えば、すねで鋭利な角を思いっきりローキックしようとしたり、一歩間違えたら転落する高い崖に登ったり、ちょっと触っただけでパクっと切れてしまいそうな刃物を見たとき、人は間違いなく『怖気ずく』わけですが、それは『自己防衛本能』でもあり、『ホメオスタシス』でもあります。
もちろん厳密には違うものですが、どちらも『人間が正常でいるための機能』という意味で一致していて、ホメオスタシスはある種の自己防衛本能なわけですね。ですからそれら自己防衛本能と同じように、長い間断眠などをしていると、その機能によって生体防御メカニズムが働き、無意識のうちに脳を眠らせてしまうというわけです。
では一体人は、何時間寝るのが理想なのでしょうか。これに関してはいくつかの意見があります。まず、
という分類があります。単純に、『短時間しか眠らない人』と『長時間眠る人』です。しかもそこの分類される錚々たる人物の名前を見ると、一体どちらの睡眠が理想なのか、首をかしげてしまいます。
トーマス・エジソン
発明家。『睡眠は時間の浪費だ』と話し、一日平均4時間程度の睡眠だったという。
ドナルド・トランプ
アメリカ大統領。自分の成功は毎晩3~4時間しか眠らないことにあると話している。
ビル・ゲイツ
マイクロソフト創業者。企業当時には『スリープレスビル(眠らないビル)』と呼ばれた。
孫正義
ソフトバンク創業者。大学生のころ、一日平均約3時間。長くても5時間の睡眠だったという。
ナポレオン・ボナパルト
フランス第一帝政の皇帝。夜に3~4時間しか眠らなかったと伝えられている。
参照:『PRSIDENT2018.9.17号』
これだけの偉人がショートスリーパーとして生活をしていたと言われています。そしてロングスリーパーの代表にはあの『アインシュタイン』がいます。毎日10時間以上寝ていた彼はこの偉人らと並べても全く引けを取らない偉人中の偉人ですから、こうなるとショートスリーパーとロングスリーパーの一体どちらが人として正しいのかということが疑問になりますね。
『疲れが確実にとれる「眠り方」のコツ』にはこうあります。
一日に必要な睡眠ってどれくらい?
睡眠時間というのは、連日5時間睡眠でもまったく問題ないという人もいれば、9時間は寝ないと疲れがとれないという人もいる。しかしその一方で、『理想的には8時間の睡眠をとるのがよい』などといわれたりもしている。(中略)統計を取ると、睡眠時間の分泌はきれいな釣り鐘形を示し、睡眠時間が6~9時間のところに、全体の60~70%の人がおさまる。それより睡眠時間が多かったり少なかったりする人が、おのおの15%ほどいる。そのうち毎日9時間以上の睡眠を必要とする人を『長眠者』、毎日6時間未満で十分という人を『短民者』と呼ぶが、このように睡眠時間は人によって案外バラバラなものなのだ。『一日8時間説』というのは、こうした統計において8時間程度寝ている人がいちばん多いことなどから、おおざっぱな目安としていわれるようになっただけで、じつはさしたる科学的な根拠はない。
そしてこの本ではナポレオンやアインシュタインの例を出して、『というわけで、その人なりに満足して眠れていれば、長眠でも短眠でもかまわない。』とまとめています。結果としては、
『ショートスリーパーでもロングスリーパーでも、本人がその睡眠に満足していればそれでOK』
ということになります。 一番重要なのは、本人が朝起きて『十分に寝た』と実感できるかどうかだということですね。これに関しては『「脳ストレス」に強くなる!セロトニン睡眠法』にもこうあります。
実は理想の睡眠時間には、人それぞれ個人差があります。自分が気持ちよく目覚められる時間が理想の睡眠時間なのです。
まさにこれが答えになるでしょう。
ただこのショートスリーパーですが、実は彼らには意外な事実が隠されている可能性があります。キーワードは、
です。まずは遺伝から見ていきましょう。
『スタンフォード式最高の睡眠』にはこうあります。
ナポレオンの子はナポレオン1?『ショートスリーパー』は遺伝だった!
(省略)ショートスリーパーについての研究で、何十年も6時間未満睡眠なのに健康なアメリカ人親子を調べたことがある。彼らの遺伝子のうち、生体リズム(人の体に備わったリズム)に関係する『時計遺伝子』に変異があることがわかった。そこで、この親子と同じ時計遺伝子をもつマウスをつくって睡眠パターンを観察すると、やはり睡眠時間が短かった。
つまりショートスリーパーであるということには、遺伝が関係している可能性があり、だとしたら通常の体質の人が彼らのような真似をしてもただ睡眠不足に陥るだけの話です。
それからもう一つは『仮眠』です。『脳が突然冴えだす「瞬間」仮眠』にはこうあります。
世界の偉人や著名人も実践していた昼間の『仮眠』
(省略)しかし、ナポレオンは居眠りの天才でもありました。当時の主な移動手段は馬でしたが、ナポレオンはよく、馬に乗って揺られながら仮眠を取っていました。また、会議中にも居眠りをしていたようです。(中略)アメリカの発明王トーマス・エジソンも、短時間しか眠らなかったことで有名です。(中略)しかし彼も、1日に4時間しか眠らなかったわけではありません。夜の睡眠は短かったのですが、日中には短時間の仮眠を繰り返しとっていました。ですから1日のトータルの睡眠時間で見ると、普通の人並みに眠っていたようです。
その他、本では小説家であり釣り名人の開高健の話もあります。夜はほとんど眠らず、眠くなったらごろりと横になり、1時間半眠る生活を送っていたというのです。この『1時間半』という睡眠時間は、非常に重要なキーワードとなってきますので後で説明します。
しかしこのようにして考えるとやはり、ショートスリーパーといっても実際には仮眠を取っていたり、遺伝の力があるわけですから、彼らの真似をして短時間睡眠をしても、体調を崩して終わってしまうのがオチでしょう。事実、そういう実験をしてそうなってしまった人がいるようです。彼らは『ショートスリーパーだから偉人』なのではないのです。その決定的な事実を理解するために見るべきなのは以下の記事です。
さて、先ほどの『1時間半』というキーワードはなぜ重要なのでしょうか。
先ほどの『「脳ストレス」に強くなる!セロトニン睡眠法』にはこう続きます。
ならば1時間でもいいのかといえば、もちろんそうではありません。ある程度の睡眠時間は誰にとっても必要です。その答えは、睡眠のメカニズムにあります。睡眠は、まず目を閉じるところからはじまります。目をつぶると脳波は起きているときに出ているβ(ベータ)派からα(アルファ)派に変わります。さらにウトウトするとΘ(シータ)派が出るようになり、意識が遠のいてδ(デルタ)派という脳波が出てくると、完全に眠った状態です。δ派がしっかり出るまでで、だいたい90分くらいの時間がかかります。
つまりこういうことです。
人が熟眠感を得るためには脳波をこの『δ派』にする必要があります。この状態になると自律神経は副交感神経が優位になっていて、体温は低下しています。これが『ノンレム睡眠』といわれる深い睡眠です。
脳は起きて身体が眠っている。浅い睡眠。Rapid Eye Movement。急速な眼球運動を伴う眠り。瞼の中で目がぎょろぎょろと動いていることから、REM睡眠と名付けられた。
脳も体も眠っている。深い睡眠。
人間の睡眠で一番深い眠りは、最初の90分のノンレム睡眠にあります。したがって、この時間の寝入りをどれだけスムーズに行えるかで、睡眠の質が変わってくるわけですね。睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返して行われます。
このように、『δ派のノンレム睡眠』を『4回』ほど繰り返すと睡眠時間は『約7時間』になります。しかし、ベッドについてその瞬間に眠れる人はいませんから、ベッドに0時についた場合、『約7時間半』ほど経った、7時30分に起きられれば、十分な睡眠ができたことになります。また上の図を見てもわかるように、1時間しか寝ないとなると『ノンレム睡眠中に起きる』ことになります。 しかし、ノンレム睡眠というのは深い眠りの状態で、どちらかというと目を覚ますのは浅い睡眠の状態であるレム睡眠です。したがって、1時間しか寝ないというのはこの睡眠リズムから考えると、無理があるのです。
『「脳ストレス」に強くなる!セロトニン睡眠法』にはこう続きます。
昼間のうちに、私たちの脳には目や耳からたくさんの情報が入ってきますが、それらは一時記憶としてキープされています。そのなかには、どうしても覚えておきたいこともあれば、たいして重要でないこともあります。そうした記憶の分類と保管をする作業が、レム睡眠のときに行われているのです。つまりレム睡眠を1回すぎないと、記憶は断片として放りっぱなしにされた状態のままというわけです。レム睡眠をきちんととっていない人の記憶脳の部屋は、ものが散乱して散らかっていて、必要なものが見つけにくかったり、なくしてしまうような状態です。きちんとレム睡眠をとっている人の部屋は、あるべき場所にものが収まり、必要なときに必要なものをすばやく取り出せる整理整頓された部屋というわけです。
つまりこういうことです。
レム睡眠にはきちんとこのような役割があるので、浅い睡眠と言えど、これをないがしろにすることはできないんですね。したがって、ノンレム睡眠だけの睡眠で起きようとすることは、健康的な睡眠とは言えません。とくに、受験生などが試験の前にギリギリまで勉強し、1時間だけ寝てテストに行くというのは、わかりやすいNG例ですね。しっかりと睡眠を取り、記憶の整理をし、必要な情報を定着させることで、人は物事を脳に記憶させていくのです。
『枕革命 ひと晩で体が変わる (講談社+α新書)』にはこうあります。
レム睡眠とノンレム睡眠
(省略)ですから、新しい体験をたくさんした日には、レム睡眠は長くなると言われます。また、知能指数(IQ)の高い子供は、普通の子供と比べてレム睡眠の時間が長いという報告があります。体が眠っている間に処理しなければいけない仕事がそれだけたくさんあるということでしょう。
このようにしてレム睡眠は欠かせないので、『1時間睡眠』だとレム睡眠にたどり着かないため、あまり健全ではありません。また、下記の記事に書いたように、睡眠時間が短すぎると様々な病気のリスクが上がるというデータがあります。
『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』にはこうあります。
睡眠の質がインスリンの働きを左右する
近年、そうしたインスリンの働きが、睡眠不足によって低下するという研究結果が続々と報告されています。オランダのライデン大学の研究チームは『睡眠時間が短すぎると、たとえ血糖値が正常な人でも、インスリンの作用を受ける細胞の感受性自体が悪くなり、糖尿病になるリスクが高くなる』との研究結果を発表しました。またアメリカのシカゴ大学も興味深い発表を行っています。その内容は、健康な若者たちの睡眠時間を4時間に制限したところ、ブドウ糖を処理する能力が急激に落ち、たった1週間で初期の糖尿病患者のような高血糖状態になってしまった、という衝撃的なものでした。
この2つの能力が糖尿病の予防にとって重要だということは、記事を見ればわかります。睡眠不足が続くとたとえ健常者でも『軽い糖尿病状態』になってしまうという事実がわかっているのです。
記事にも書いたように、睡眠が不足すると86もの病気にかかるリスクが生まれ、早死にする確率も高まるとカナダのラバル大学とアメリカのウィスコンシン大学の研究チームが警鐘を鳴らしています。睡眠不足になると、日本で『5大疾患』とされている、
はおろか、
等のさまざまな病気の原因となってしまいます。『病気を治したければ「睡眠」を変えなさい』にはそれらについての詳細が書いてあります。例えば本にはこのような事例を載せています。
ただ、下記の記事に書いたように、睡眠時間が短すぎると様々な病気のリスクが上がるというデータがあります。
本にはこうあります。
こうした例が示すように、毎日6.5~7.5時間コンスタントに眠れば血圧の上昇は抑えられます。それが難しければせめて6時間は睡眠を取りましょう。5時間を切ると高血圧を発症するリスクは一気に高まることを覚えておいてください。
また、『肥満外来の女医が教える熟睡して痩せる「3・3・7」睡眠ダイエット』にはこうあります。
アメリカのコロンビア大学の論文によると、睡眠時間が7時間の人と5時間の人を比較すると、5時間の人のほうが肥満率が52%も高いことがわかっています。睡眠時間が4時間になると、肥満率は73%にまで上昇することが報告されています。
さらに『不眠症の科学』にはこうあります。
睡眠不足の危険性を考える
徹夜までしなくても、睡眠不足が続くと事故を起こしやすい状態になります。一晩の睡眠時間を5時間に制限したところ、眠気が強くなり車線をはみ出して対向車との正面衝突する危険が高まることを示しています。
睡眠時間は5時間になると、交通事故のリスクが増えるのです。また、普段8時間寝る人が2時間睡眠時間を削るだけで、体重1㎏あたり0.54gのアルコールを飲んだのと同じ眠気が起こることがわかりました。
体重1㎏あたり0.54gのアルコール
もしこの量のお酒を飲んだ状態で運転をした場合、酒気帯び運転で25点、酒酔い運転と認められれば35点の違反点数を科せられます。つまりこれだけを見ても、
ということで、踏んだり蹴ったりなのです。
ですから、やはり特別な遺伝でもかかわらない限り、睡眠は6時間以上取ることを原則とした方がよさそうです。
また、この『6.5~7.5時間』という数字が推奨されるのにはほかにも理由があります。『スタンフォード式最高の睡眠』にはこうあります。
眠りの借金が寿命を縮める
(省略)2002年にはサンディエゴ大学のダニエル・F・クリプケ氏らが米国がん協会の協力を得て実施した100万人規模の調査では、アメリカ人の平均的な睡眠時間は7.5時間だった。6年後、同じ100万人を追跡調査したところ、死亡率が一番低かったのは、平均値に近い7時間眠っている人たち。彼らを基準にすると、それより短時間睡眠の人も、逆に長時間睡眠の人も『6年後の死亡率が1.3倍高い』という結果が出ている。
なぜか、『7時間』よりも短くても、長くても、死亡率が少し高いのです。更に、『免疫力を高める眠り方』にはこうあります。
日本でも、睡眠と死亡率の関係を調べたデータがあります。それによると、7時間から8時間睡眠をとっている人の死亡率がいちばん低かったそうです。
として、この本では『7時間38分』という数字が理想だと主張しています。やはり、 『6.5~7.5時間』、つまり平均で7時間の睡眠を取ることが睡眠時間の理想と言えそうです。ただ、下記の記事に書いたようにトレーニングをしている人は、人一倍休養が必要なため『8時間』必要だと感じる人が多いと言えます。私もそうですね。
実はこのくらいの睡眠時間を取る人のことは『バリュアブルスリーパー』とも『バリアブルスリーパー』とも言われています。
『価値のある』という意味。
『変化しやすい』という意味。
バリアブルスリーパーの場合は、ショートスリーパーにもロングスリーパーにもどちらにもなりやすいことから、白くも黒くもなるという意味でこの名がついたと言われます。
バリュアブルというのはその意味からして、『最も理想的な睡眠時間を取る人』ということでしょうか。これらに関しては専門書でその記述が違いますので、著者がどういう意図でつけているかは厳密にはわかりませんが、ここまで見てきた人なら、確かにこの睡眠時間を取る人が『最も理想的な人』であることはわかりますね。
つまり人は『バリュアブル(バリアブル)スリーパー』になることが理想的だと言えるのです。ただ、日本人の8割がこのバリュアブルスリーパーなので、多くの人は無意識にこの問題を解決しているかもしれません。ただ、事実を知るのと知らないのとではモチベーションも得られる効果も違いますからね。今後は今まで以上に安心して、『平均7時間』の睡眠を取り続けましょう。
さて、私はたまに『1時間の仮眠』をするときがあります。実際には30分ほど寝られればいいと持っているのですが、気づいたら1時間経っているときがあります。
実はそれだけの仮眠はNGとされています。先ほど言った話にも逆らいますし、仮眠の専門書である『脳が突然冴えだす「瞬間」仮眠』にはこうあります。
長すぎる仮眠はかえって寿命を縮める!
南ヨーロッパや南米に行くと、お昼過ぎにレストランやショップが閉まってしまうことがあります。『シエスタ』と言って、みんな昼寝をしてしまうからです。(中略)ただ、シエスタが健康に悪影響を及ぼすこともあります。シエスタが長すぎると、心筋梗塞が起こりやすくなるのです。心筋梗塞の患者さんと健康な人を調べたところ、シエスタが20分以下の人は心筋梗塞になる危険率が23%低下しますが、45分の人で1.3倍、1時間半の人で1.7倍とリスクが上がることがわかっています。また、シエスタの時間と死亡率にも深い関係があります。イスラエルからの報告によると、女性ではシエスタの習慣がない人に比べて、1時間以下のシエスタをしている人は心筋梗塞におる死亡率が4.7倍、1~2時間の人は5.6倍もありました。男性では、シエスタを1時間以下しかとらない人は全くしない人と同じ程度の死亡率でしたが、1~2時間の人で2.6倍、2時間以上になると13.6倍も死亡率が高くなっていました。
仮眠というのは『20分』が最適な時間だと言われているのです。しかし私はハードなトレーニングもしていて、仮眠直前までぎっちりとデスクワークをしていることから、ベッドで横になって、気づいたら1時間ほど眠っているときがあります。しかしそれは『気絶』に近い状態で、起きると結構スッキリしています。
いやぁよく眠れた!回復できたかな!
という清々しい気分になっているのです。筋肉というのは、トレーニングで破壊して、栄養を摂った後、十分な休息をする必要があります。ボディビルダー等も、トレーニングをした日は気づいたらウトウトと寝ているということがあるようですが、これは物理的に、筋肉が回復するための『修復時間』も兼ねている仮眠なので、そうネガティブな印象はありません。
また、私の場合は『シエスタ』ではなく、あくまでも『仮眠』です。ヨーロッパのシエスタは、『店を閉める』ほど徹底しているわけですが、実際に見てみなければわからない、何か『他の事情』もないでしょうか。気になるのは、『仮眠』ではなく『シエスタ』の時間の長さと健康問題について分析されていることで、『日本人が行う仮眠』であっても答えは同じなのか、気になるところです。
実際、あのラグビーで有名な五郎丸選手がいる早稲田大学ラグビー部では、廊下にプロテインが置いてあって、好きなだけ摂取できます。そして、スケジュールの中には『スリープ』という時間があって、ガッツリ運動し、しっかり栄養を摂った後は、ぐっすりと眠ることがトレーニングの一環として取り入れられているのです。
彼曰く、『起きるといつも、ここがどこだか一瞬わからなくなります』ということですが、それくらいハードな生活をしている人の『仮眠』と、別にそうでもなく全体的に常識化している『シエスタ』とでは、少し意味も違ってくるような気もしますよね。
それに私の場合、この仮眠を取り入れてから、『口唇ヘルペス』の持病に悩まされることが激減しました。以前であれば、すぐに口元が痒くなって、ヘルペスウイルスが暴走して腫れてしまっていたのですが、それは体を酷使する私の性格上、当たり前のことでした。しかし、
酷使する分、休憩も全力でやろう
と考えるようになり仮眠を取り入れてから、ヘルペスウイルスが暴走することが激減したのです。これは、仮眠によって疲れが回復し、免疫力が強化されたことで、ウイルスの暴走を抑えることができるようになったからと見て間違いないでしょう。
口唇ヘルペスは一生の持病ですから、一生薬を飲むことを覚悟していたのですが、かつては『年に数回』病院で飲み薬(バルトレックス)を処方してもらっていたのが、ここ10年以上一度も病院には行っていません。少し痒くなったらすぐに市販の塗り薬(アクチビア)を塗ってぐっすり眠れば、悪化することなく未然に抑えることができるようになりました。こうしたことを考えるとやはり、
『自分が気持ちよく目覚められる時間が理想の睡眠時間』
ということかもしれませんね。自分の理想の睡眠時間を知っているのは、自分の体なのです。
ただ、『「脳ストレス」に強くなる!セロトニン睡眠法』にはこうあります。
大切なのは睡眠時間よりも、いつ、どのように眠るかです。同じ8時間睡眠でも、昼間の睡眠ではメラトニンは分泌されません。しかし夜の2~6時に眠れば、メラトニンが分泌されるため、単に疲れをとるだけでなく、脳とカラダにいい眠りを得ることができます。
やはり寝るのは昼間よりも夜が理想的です。メラトニンというのは快眠物質ですから、これが分泌されないのは不眠の原因となります。こうした様々な細かい仕組みのこともあって、
『人は大体22~8時くらいまでの時間に、6~8時間くらい寝れば、元気でいられる』
という事実が存在し、そこから『8時間睡眠神話』や『深夜の成長ホルモンゴールデンタイム神話』等が浮かび上がったのでしょう。それで大体あっているのですが、更に厳密に言うならやはり、
『自分が気持ちよく目覚められる時間が理想の睡眠時間』
ということになりますね。