睡眠薬の副作用はある?大量に飲むと本当に死ぬの?
どんな薬にも副作用はあります。また、現在の睡眠薬は大量に飲んでも死にません。
現在の睡眠薬は副作用も非常に少なく、長期間使用しても問題ありません。昔の睡眠薬は呼吸機能や循環機能を抑制する作用があったため、大量にのむと死亡したり、依存性が高かったりして問題がありました。しかし最近は呼吸機能や循環機能に影響を与えない睡眠薬の開発が進み、現在処方されている脳の中のベンソジアゼピンという受容体に作用する睡眠薬は、こうした副作用はほとんどありません。
ただ、どんな薬でも用法用量を間違えて服用したり、体に合わない、体調に合わないということはありますので、油断することはできません。また睡眠薬には『超短時間型』、『短時間型』、『中時間型』、『長時間型』の4つがありますので、それを使い分けることが求められます。
Contents|目次
不眠症は以下の4つの種類に分けられます。
不眠の種類
入眠障害 | 床についてから30分以上寝つけない |
---|---|
中途覚醒 | 夜中に何度も目が覚める。再び眠るまでに時間がかかることが多い |
早朝覚醒 | 予定の起床時間より2時間以上早く目が覚める |
熟眠障害 | 長く眠ったとしてもぐっすり眠ったという感じが得られない |
もちろん上記の記事に書いたように、『不眠の原因』は『音、温度、ニオイ、ストレス』等様々なものがありますが、『不眠の種類』となると、この4つが挙げられるわけです。ですから、睡眠薬を使用する際もこれらの種類に合わせる必要があるわけですね。
しかしそもそも睡眠薬というのは使用してもいいのでしょうか。何かイメージ的に、自殺する人が飲むような、そういう負のイメージがついていますよね。『ササッとわかる「睡眠障害」解消法』にはこうあります。
現在の睡眠薬は副作用も非常に少なく、長期間使用しても問題ありません
不眠症の人には睡眠薬が処方されます。睡眠薬というと、『睡眠薬自殺』を連想して、体によくない、飲み続けるとボケるなどという人がいますが、そのようなことはありません。昔の睡眠薬は呼吸機能や循環機能を抑制する作用があったため、大量にのむと死に至ることもありました。また、依存性も高く、飲み始めるとやめられないこともありました。しかし最近は呼吸機能や循環機能に影響を与えない睡眠薬の開発が進み、現在処方されている脳の中のベンソジアゼピンという受容体に作用する睡眠薬は、こうした副作用はほとんどありません。
負のイメージを作ってしまっていたのは『昔の睡眠薬』のようですね。ですから、今の睡眠薬を大量服用しても死ぬことはできませんので、『睡眠薬=自殺』というイメージは時間が経てばこの世から消えそうですね。
実際、高齢者を除いて、毎日1錠程度の睡眠薬を長期間服用しても、心身の機能になにも悪い影響を与えないことが世界的に見てもわかっています。ですから、『高齢者等体が弱っている人』が『10年以上の長期服用を毎日続ける』というような極端なことがない限り、睡眠薬が悪影響を及ぼすことはないでしょう。というか、このような条件がそろっている場合は、別に睡眠薬じゃなくても何らかの影響を与えますからね。
『睡眠薬で自殺』と言えば、2017年にロバート・デニーロ主演の『Wizard of Lies』という映画が放映されました。これは実話で、株とか投資とかそういう話で、大勢の有名なアメリカ人富豪者を巻き込んだ主人公の投資家がお金を集め、そして失敗して莫大な借金を残し、死者や、人生が破綻した人を大勢出してしまった事件と、その張本人の人生を描いた映画なのですが、順風満帆にいっていたと思っていた彼の家族は、その事件とともに崩壊。そして唯一の支えだった妻も、彼女自体は何もしていないのに、巻き添えを食らって散々な目に遭い、ついには自殺をすることにしました。
夫婦で大量の睡眠薬を飲んで死ぬことにするのですが、しかし、幻覚を見るだけで、結局は死ねなかった、というシーンがあります。これは現実では2008年やそこらの話ですから、もうその時点で、睡眠薬で死ぬことはできなかったということになるかもしれません。
ではここで、睡眠薬についての様々な問題点の答えをまとめてみましょう。
大量に飲むと死んでしまうの?
そういうことはありません。それは一昔前の睡眠薬ですね。
最近は呼吸機能や循環機能に影響を与えない睡眠薬の開発が進み、現在処方されている脳の中のベンソジアゼピンという受容体に作用する睡眠薬は、こうした副作用はほとんどありません。
睡眠作用が残ってしまって翌日眠くなるのでは?
たしかにその通りです。
ですから、薬の種類を見極める必要があります。これに関しては処方する医師が適切な指示と薬を出してくれます。素人判断で飲んでしまうとそういう副作用に悩まされることになります。
種類はどういうものがあるの?
『超短時間型』、『短時間型』、『中時間型』、『長時間型』の4つがあります。
後でこれについて詳しく説明します。
睡眠薬がなければ寝られないようになるんじゃないの?
医師の指示に従うことがベースなら、依存性を心配する必要はありません。
しかし、やはり素人判断で薬を使うとなると、睡眠薬以外の一切の薬で、副作用や乱用、以前性等の問題が起きます。
睡眠薬と併用してはいけない薬はある?
あります。
それについても下記に詳細をまとめます。
Q.睡眠薬は飲んでどれくらいで効いてくるの?
30~40分程度です。
睡眠薬は途中で飲むのをやめていいの?
いいえ、医師の判断を仰ぎましょう。
睡眠薬なしでも寝られると思って薬を飲むのをやめると『反跳現象(跳ね返り)』という、不眠が強くなる現象が起きる場合もあります。この場合も、医師がしっかりと指導してくれているはずですから、それを遵守しましょう。
一つ一つ詳細を見ていきましょう。まず最初の『睡眠薬と死』については書きましたね。以前は『バルビツール系』と呼ばれる睡眠薬しかなかったのですが、現在は『ベンソジアゼピン系』の睡眠薬が出ているので、安全性がグンと増しました。『詳しくわかる睡眠薬と精神安定剤』にはこうあります。
ベンソジアゼピン系の睡眠薬は安全である
数十年前には、バルビツール系の睡眠薬が主流だった時代がありましたが、今はバルビツール系の睡眠薬が用いられることはほとんどありません。バルビツール系の睡眠薬は、脳の睡眠や覚醒を司る部位に直接的に作用するためにかなり強力な催眠作用をもっていますが、脳の中の呼吸を司る部位(脳幹網様体)にも抑制的な作用を及ぼすなど、脳のかなり広い範囲にまで影響を及ぼすため、安全性に疑問が残ります。また、バルビツール系の睡眠薬のなかには、全身麻酔薬にも似たようなものもあります。バルビツール系の睡眠薬を大量に服薬した場合、呼吸が停止するなどの作用が出ないとも限りません。
こう考えると先ほどの映画の主人公は『ベンソジアゼピン系の睡眠薬』を大量服用したから自殺できなかった、と言えるでしょう。
現在の睡眠薬は『ベンソジアゼピン系の睡眠薬』ですから、服用によって死に至ることはまずありませんので安心です。
次は『作用が残ること』、そして『薬の種類』についてです。たしかに睡眠薬は作用が残るので、そのようなことを避けたい場合は、あまり強い薬を飲まないことが求められます。
例えば上記の記事に『短期出張したときの時差ボケの解消法』について、書きました。人間の体が時差に順応できるのは1日に1~2時間程度で、10時間の時差がある場合は、現地時間に合わせるためには5日間以上かかる計算です。ですからどうしてもその間に時差ボケがきつい場合は、
等の『超短時間作用型』の睡眠薬や、『ドリエル』等の睡眠導入剤を使うわけです。これらであれば、朝には作用が抜けているので副作用で悩むこともほとんどないということですね。
このように、『超短時間型』といった効果の弱い薬なら、作用が残ることもほとんどなく、翌日の注意力や集中力にも影響はほとんどありません。しかし、老人等の体が弱っている人であれば別で、やはりそのような状態の人は薬の作用がいくら弱くても、代謝が悪いために翌日に影響を及ぼすこともあります。また、夜中に目が覚めてトイレに行くときなどは、そのせいでふらつき、転倒してしまうこともあるので注意が必要です。この場合は、必ず処方してくれる医師の指導に従うようにしましょう。
またこうしたケースにおける『市販薬』ですが、睡眠導入剤のようなタイプの薬は、こういう単発的なケースに適しています。しかしこれは厳密には『睡眠薬』ではないので、これを長期服用して不眠症を治すのはNGです。慢性的な不眠がある場合は、医師の処方で貰える睡眠薬を使って治療することが推奨されています。
薬の種類には、以下の4つがあります。
下に行くほど効果が強くなるわけですね。では、それぞれの薬の種類を見てみましょう。(一番左の『実際の時間』と『作用時間』が違うのは、実際には3~4時間だけ効果がある、というようなイメージです。実際の効果は少し短いということですね。)
睡眠薬の作用時間による分類
分類/実際の時間(作用時間) | 一般名 | 商品名 |
---|---|---|
超短時間型/3~4時間(6時間以内) | ゾピクロン、トリアゾラム、ゾルピデム | アモバン、ハルシオン、マイスリー |
短時間型/5~6時間(12時間以内) | ブロチゾラム、エチゾラム | れんどるみん、デパス |
中時間型/7~8時間(24時間以内) | ニトラゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム | ベンザリン、ネルボン、ユーロジン、ロヒプノール、サイレース |
長時間型/中時間型以上(30時間以内) | クアゼパム、フルラゼパム、ハロキサゾラム | ドラール、インスミン、ベノジール、ソメリン |
ではここで冒頭で説明した4つの『不眠の種類』に適切な睡眠薬の種類をまとめてみましょう。
それぞれの不眠に適した睡眠薬の種類
入眠障害 | 短時間型、超短時間型 |
---|---|
中途覚醒 | 中時間型、長時間型 |
早朝覚醒 | 短時間型と長時間型を使い分ける |
熟眠障害 | 短時間型と長時間型を使い分ける |
まずは『入眠障害』ですが、これは『寝つきが悪い』だけなので、薬も効果の弱いもので十分です。したがって、市販の睡眠導入剤だけでも問題ないというケースも多いでしょう。私などもこの入眠障害たる状況には何度もなったことがありますが、どうしてもという場合は、漢方薬や市販の睡眠導入剤を飲んで寝ています。このような薬を服用した場合、
という形で睡眠をすることになります。また『中途覚醒』は『夜中に目が覚める』ということであり、『早朝覚醒』も似たようなもので『朝早く目が覚める』わけですが、この場合は比較的作用時間の長い睡眠薬が適しています。ただ、ここに更に『入眠障害』、つまり『寝つきも悪い』という要素が加えられるとなると、いくつかの薬を併用したほうが効果を見込めるようになります。
ということですね。『詳しくわかる睡眠薬と精神安定剤』にはこうあります。
2種類の睡眠薬を使う場合でも、医師の処方通りに用いているならば、問題はほとんどありません。
ただこの『早朝覚醒』と『熟眠障害』については、短時間型、中時間型、長時間型のいずれかを使い分けることが必要となるので、状況によって使うべき薬が違います。また、これに関しても医師の指導をしっかりと遵守するようにしましょう。そうすれば適切な使用方法がわかるはずです。現在の日本では主に『超短時間型』と『短時間型』の2種類が使われるため、それ以上の効果を持つ薬を使用する場合は、少し注意が必要かもしれません。効果が強いですからね。このような効果の強い薬を飲む場合は、先ほど言ったように『途中で飲むのをやめる』ことのリスクも大きくなります。いずれによせ素人判断で薬を使うのはやめましょう。
睡眠薬の量を増やさなければならないではないか、睡眠薬なしでは眠れなくなるのではないか、等の疑問を持っている人もいるかもしれませんが、これについても医師の指導を守っていれば問題ありません。とにかくもう以前のように強い作用がある睡眠薬はありませんから、副作用に悩まされることも激減したということですね。しかも、現在進行中で更に安全な睡眠薬も開発が進んでいます。
それは『非ベンソジアゼピン系の睡眠薬』と呼ばれる薬で、簡単に言うと現在のベンソジアゼピン系の強化版です。弱点を克服し、更に高い効果も得られるので、レベルアップした形ですね。実は、ベンソジアゼピン系の薬では先ほど言った『反跳現象(跳ね返り)』が起きる可能性があります。特に、
の睡眠薬ではこれが起こりやすいと言われていますが、これも新しい『非ベンソジアゼピン系の睡眠薬』であれば、このリバウンドが少ないと言われています。また、この2つのタイプの睡眠薬は、睡眠導入の効果が顕著にみられるということから、その効果を本人が自覚しやすく、精神依存されやすい傾向にあります。ですから先ほどは『現在の日本では主に『超短時間型』と『短時間型』の2種類が使われるため、それ以上の効果を持つ薬を使用する場合は、少し注意が必要かもしれない』と言いましたが、実際にはこの2つの薬を使用する際にも油断ができないということですね。
また、『効果の低下(耐性)』という問題もあります。ベンソジアゼピン系、新しい非ベンソジアゼピン系の睡眠薬は、連続使用しても催眠効果はそう簡単には落ちませんが、やはり何年も服用するとなると、耐性ができ、効果の低下も見られるようになります。しかしその場合はしばらく服用しない期間を設けると効くようになったり、色々とポイントがあるので、更に厳密な指示は担当医に直接仰ぐといいでしょう。
ただ実際には、そんなに長期間服用し続けて『睡眠薬がなければ眠れない』ような体質になること自体を避けなければならないんですけどね。睡眠薬というのはあくまでも一時的な処置であり、徐々に減らしていって、最終的には睡眠薬なしでも眠れるようになるのが最善の姿です。薬というのは昔になるほどどんなものでも何かしらの問題を見つけることができますからね。例えば、『新編 花粉症の最新治療』にはこうあります。
従来型の抗ヒスタミン薬は第一世代で効き目は早いが眠気も多い
従来型の抗ヒスタミン薬は第一世代ともいわれ、古くからアレルギー病の薬として処方薬にも大衆薬にも広く使われてきました。よく知られている副作用として、眠気や倦怠感、口やのどの渇きなどが多く、中枢神経の鎮静作用や副交感神経を抑制する抗コリン作用が強いため、処方薬としては次に述べる第二世代抗ヒスタミン薬に変わってきています。
このような、花粉症、鼻炎薬というジャンルの薬も昔は『眠気』、『喉の渇き』等の副作用が強く現れてしまっていました。私もよく飲んでいたのでわかりますが、もうこういう薬を飲んだら眠くなるのは覚悟していたほどですね。しかし現在ではそういうことはもうありません。薬の開発が進められたからです。
ただし、併用してはいけない薬があります。まずは『お酒』です。アルコールと一緒に飲んだり、お酒を飲んだ後に飲むとふらついたり、記憶がとんだり、奇行に走ったりすることがある可能性があります。お酒と薬というのは基本的に相性が悪いので、控えるべきでしょう。少量の飲酒なら、その数時間後に飲んでも問題はないでしょう。
では『睡眠薬と併用してはいけない薬 』を見てみましょう。
睡眠薬の効果を弱める薬
消化管で吸収を抑制する | 制酸剤 |
---|---|
代謝を促進して睡眠薬の血中濃度を下げる | 抗結核薬(リファンピシン)、抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール) |
睡眠薬の効果を強める薬
中枢神経系に抑制的に作用する | 抗ヒスタミン薬、バルビツール酸系薬剤、三環系、四環系抗うつ薬、エタノール(アルコール) |
---|---|
代謝を阻害して抑制的に作用する | 抗真菌薬(フルコナゾール、イトラコナゾール)、マクロライド系抗生剤(クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ジョサマイシン)、カルシウム拮抗薬(ジルチアゼム、ニカルジピン、ベラパミル「)、抗ウイルス薬(インジナビル、リトナビル)、抗潰瘍薬(シメチジン) |
これらの薬と一緒に併用すると、睡眠薬の効果を弱めたり、強めたりしてしまうため、控えてください。また、グレープフルーツジュースというのは基本的に薬との併用を避けた方がいい飲み物です。睡眠薬の場合は、代謝を阻害して、睡眠薬の血中濃度を上げるため、一緒に飲むないほうがいいと、されています。また、妊娠中の睡眠薬にも注意が必要です。『詳しくわかる睡眠薬と精神安定剤』にはこうあります。
妊娠中に睡眠薬を飲んでも大丈夫ですか?
(省略)新生児への影響は、ベンソジアゼピン系睡眠薬が胎盤を通過しやすいために、妊娠後半に服薬した場合、胎児の脳にも移行する危険性があります。その結果、出産後の新生児に影響がみられることがあるとされています。出産後の授乳に関しては、ベンソジアゼピン系の睡眠薬は母乳へ移行することが確かめられており、ベンソジアゼピン系の睡眠薬を服薬する母親は、新生児への授乳を行わないようにするのが一般的な考えです。
やはり妊娠中というのは様々な方向から見ても、とても慎重にならなければならない期間だということですね。睡眠薬というのはあくまでも一時的な処置であり、徐々に減らしていって、最終的には睡眠薬なしでも眠れるようになるのが最善の姿です。うまく使いこなして、早く自然睡眠できるようにしましょう。