二度寝はしていいの?しちゃいけないの?
ケースバイケースです。
飛行機や新幹線で寝て起きて、まだ着いていなければもう一度寝ますが、この『二度寝』は特に問題ありません。しかし、普段の生活で朝起きて、そしてもう一度寝るという『二度寝』の場合、疲労の観点から言うとNGです。こうした二度寝はとても気持ちいいものですが、実際は、二度寝の間中ずっと、起きなくてはいけないという気持ちと、もう少し寝ていたいという気持ちの葛藤が続き、心身が疲れてしまうからです。遅刻や自分を甘やかす癖をつけることの弊害を考えても、『二度寝をするくらいなら早くに寝る』方がいいでしょう。
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二度寝についてどういう印象があるでしょうか。これに関しては意見が割れるでしょう。しかし、次の話を聞けばすぐに一段落つきます。
二度寝は許されます。冷静に考えればわかると思いますが、例えば飛行機や電車に新幹線に乗っていて仮眠を取ります。そして、気が付くと、まだ目的地ではありません。周りを見渡すと多くの人が仮眠をしています。それを見て、
ふぁあ…さて、もう少し寝るか…
と再度眠りにつくことは間違いなく『二度寝』ですよね。したがって、別に二度寝はしてもいいのです。ただし、状況によっては許されませんよね。例えばそれによって遅刻をしてしまうということであれば、認められません。ということで、正確に言うと二度寝とは、許されるときと許されないときがある、ということになります。
では、『許される』という客観的な視点ではなく、睡眠における科学的な話で、何か二度寝によって失ってしまうものや、マイナスに働いてしまうものはないでしょうか。『疲れが確実にとれる「眠り方」のコツ』にはこうあります。
二度寝がいけないのには理由があった
(省略)しかしじつはこの二度寝、疲労回復のための睡眠としてはよろしくない。浅い眠りでまろんでいるような状態、これがじつに気持ちいいのだが、実際は、二度寝の間中ずっと、起きなくてはいけないという気持ちと、もう少し寝ていたいという気持ちの葛藤が続き、心身が疲れてしまうのだ。
ではここで睡眠時の人の脳波の動きを見てみましょう。
人が熟眠感を得るためには脳波をこの『δ派』にする必要があります。この状態になると自律神経は副交感神経が優位になっていて、体温は低下しています。これが『ノンレム睡眠』といわれる深い睡眠です。
脳は起きて身体が眠っている。浅い睡眠。Rapid Eye Movement。急速な眼球運動を伴う眠り。瞼の中で目がぎょろぎょろと動いていることから、REM睡眠と名付けられた。
脳も体も眠っている。深い睡眠。
睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返して行われます。
例えばこのように、『δ派のノンレム睡眠』を『4回』ほど繰り返すと睡眠時間は『約7時間』になります。しかし、ベッドについてその瞬間に眠れる人はいませんから、ベッドに0時についた場合、『約7時間半』ほど経った、7時30分に起きられれば、十分な睡眠ができたことになります。
これを考えたとき、上記の記事に書いたような目覚まし時計の使用方法が有効になります。つまりこういうことです。7時に起きる場合のケースですね。
この際、1度目のアラームは『ごく微音で、短いもの』にすることがポイントです。なぜなら、もしこの時にレム睡眠なら睡眠が浅いので、これで起きられますし、もしノンレム睡眠なら、うるさいアラームによって起きるととても不愉快な目覚めになるからです。ノンレム睡眠の状態でも、そのわずかなアラームでしっかりレム睡眠へと移行するので、1度目のアラームは『ごく微音で、短いもの』で十分なのです。
つまり、人は『ノンレム睡眠(深い睡眠)』の状態で起きてしまうと、不愉快になります。まだ寝足りないような気がして、睡眠に不満を覚えます。このようにして、レム睡眠とノンレム睡眠をリズムよく繰り返すことで人は熟睡でき、そして目覚めもよくなるのです。しかし、二度寝をしてまうと、二度目の睡眠は浅い睡眠であるレム睡眠になります。状況的に遅刻が許されない場合だと、
もう少し…
などという葛藤が生まれ、しかしその中ではきちんと起きるべき時刻を意識していることになりますから、睡眠はどうしてもレム睡眠になってしまうのです。すると、リズムが狂った状態で起床することになり、起きたときに不快感があります。つまり人は、
という条件がそろうことによって、目覚めが悪くなるんですね。二度寝はまさに、後者の条件を揃えてしまうのです。したがって、目覚めが悪く、疲労感が残り、あまりいい影響は与えないということが、この本の理論ですね。
ただし、その理論を踏まえた上で、二度寝を肯定する専門家もいます。『肥満外来の女医が教える熟睡して痩せる「3・3・7」睡眠ダイエット』にはこうあります。
寝だめ、二度寝、OK
(省略)『3・3・7睡眠法』で眠る場合、寝だめと二度寝は禁止していません。『寝だめをしたら、7時間という睡眠時間を超えてしまうのではないか』『二度寝をしたら、寝始めの3時間は中断せずに眠る、というのが難しいだろう』などと、疑問に思うかもしれません。ですが肝心なのは、体が楽になるかどうかです。寝だめや二度寝をしたことで、体と心が軽くなるならそれはプラスと判断します。
『体と心が軽くなるなら』ということに重きを置き、この専門家の場合は二度寝を推奨します。ただ、
ということ、かつ『その日の夜に眠れないようなことがないようにする』という条件を守ることが前提なので、推奨というよりも『ケースバイケースでOK』というようなことですね。
先ほどは『二度寝は疲労につながる』ということですから、もし『体と心が軽くなる』なら、二度寝をしてもいいということです。つまり、レム睡眠とノンレム睡眠のリズムが狂わず、目覚めがよくなり、心身がスッキリしているのであればそれでもいいということですね。
事実、上記の記事で昼寝や仮眠についてたっぷりと考えていますが、二度寝も一種の『仮眠』と同じです。仮眠とは、『足りないと思う睡眠を補うためのちょっとした睡眠』ですから、二度寝をするときは、仮眠をするときと同じ心理状況になります。仮眠が推奨されるように、二度寝が認められるケースはたくさんあるでしょう。例えば、冒頭に挙げたような状況などがそうですね。
仮眠の本もたくさんありますが、例えばそうではない、『トップアスリートが実践している最強の回復法』にはこうあります。
居眠り、ちょっと寝は効果十分
(省略)オフィスで、昼休みのちょっとした空き時間に居眠りをする。あるいは1時間半デスクワークをしたら10分か15分で居眠りをする。こうしている人の方が、ぶっ通しで仕事をしている人より健康であり、仕事もはかどります。また、リタイアして時間が十分あるというかたは、居眠りを積極的にすべきです。こうしていれば、夜に何度起きても問題はありません。
この専門家の場合、夜に眠れなくて何度起きても、仮眠をたくさん取っていれば問題ないということを教えています。これは少し他の専門家らと違う意見です。『脳が突然冴えだす「瞬間」仮眠』にはこうあります。
長すぎる仮眠はかえって寿命を縮める!
南ヨーロッパや南米に行くと、お昼過ぎにレストランやショップが閉まってしまうことがあります。『シエスタ』と言って、みんな昼寝をしてしまうからです。(中略)ただ、シエスタが健康に悪影響を及ぼすこともあります。シエスタが長すぎると、心筋梗塞が起こりやすくなるのです。心筋梗塞の患者さんと健康な人を調べたところ、シエスタが20分以下の人は心筋梗塞になる危険率が23%低下しますが、45分の人で1.3倍、1時間半の人で1.7倍とリスクが上がることがわかっています。
また、シエスタの時間と死亡率にも深い関係があります。イスラエルからの報告によると、女性ではシエスタの習慣がない人に比べて、1時間以下のシエスタをしている人は心筋梗塞におる死亡率が4.7倍、1~2時間の人は5.6倍もありました。男性では、シエスタを1時間以下しかとらない人は全くしない人と同じ程度の死亡率でしたが、1~2時間の人で2.6倍、2時間以上になると13.6倍も死亡率が高くなっていました。
仮眠というのは『20分』が最適な時間だと言われているのです。ただ、このデータはあくまでも『シエスタ』のものですからね。日本におけるこうした仮眠がどういう影響を与えるかということは、どの本にも書いてありません。とにかく多くの専門家は、
という条件が 揃っている場合は、二度寝を推奨することが多いようですね。
しかし、私の部下のように『二度寝をして遅刻を繰り返し、制裁金を払い続ける』ような人は、ただちに生活習慣を改める必要があります。たとえその二度寝によって一時的に『体と心が軽くなる』実感を得ても、それは麻薬やタバコ、飲酒によっても同じ効果が得られるという事実を理解する必要があります。
それらのものを服用すると、人は一時的に多幸感に包まれます。嫌なことを忘れられて、ハッピーな気分になります。まさに、『体と心が軽くなる』わけです。ですが、その代償に払うものが多すぎます。危険ドラッグがまだ『合法ドラッグ』だったとき、その効果を期待して服用した若者が、車を運転、暴走させ、人を轢き、無辜な命を奪ってしまいました。
また、浜辺でお酒を飲み、気分がよくなり、飲酒運転をして暴走気味に家に帰る途中、海に行くはずだった3人の女性を轢いてしまい、命を奪ってしまった事件もあります。それもこれもあれも全部、『体と心が軽くなる』からということで、その効果を期待した結果なのです。ですから、その『体と心が軽くなるなら』という事実を曲解し、
それが目的なら何をしてもいいんだ
と誤解しないようにしましょう。 私の部下はその一時的な目的は達成しても、長期的には常に『心と体が重い』状態を負い続ける人生を強いられています。彼は心がとても弱く、すぐに現実から目を逸らしてしまうので、その他にも様々な精神的な問題を抱えています。こういう例を知っている以上、私は二度寝を『心と身体が軽くなる』という理由だけでは推奨しません。ですから、『二度寝をするくらいなら早くに寝る』という単純な事実を真正面から受け止める方が、色々とスムーズに話は進むのではないでしょうか。
さて、それではなぜこんなにも人は二度寝の魔力に弱いのでしょうか。実は先ほど言った『二度寝は一種の仮眠である』という考え方は、厳密に言うと違います。『脳も体も冴えわたる1分仮眠法』にはこうあります。
なぜ二度寝は気持ちいいのか?
(省略)それがたったの1分でも、5分でも二度寝は至福の時間です。その点で朝の二度寝と仮眠は大きく違っています。眠気のピークに仮眠をすると頭がリフレッシュします。しかし、二度寝したときのような心地よさは感じられません。なぜか?これには『コルチゾール』が関係していると考えられてます。(中略)”コルチゾールの分泌量は、明け方から増え始め、朝起きる頃にピークをむかえる。その後、量はだんだんと減り、夕方から夜にかけて最低レベルとなる”
コルチゾールというのは、『抗ストレスホルモン』だとあります。日中の活動に備えるために、人は起床前にコルチゾールを出すので、コルチゾールが大量に分泌されると我々は多幸感を得ることができるのです。まるで、『お母さんの子宮のなかにいるような絶対的な安心感に包まれる』と本にはあります。
ですから、その部下が二度寝をやめられない理由がよくわかりますね。部下は『究極のマザコン君』ですからね。言い過ぎでも何でもありません。彼と11年、いや、1年も一緒にいれば身に染みて理解しますよ。私の親も最初は言いすぎだとか、私に問題があるという方向で完全に誤解していました。私の部下には、それくらい言っても何一つ問題ないのです。今ではその親も、
とさえ言うくらいですからね。状況を知らない人は実に身勝手なものです。私が彼を『究極のマザコン君』と言ったのなら、そうなのです。世の中にはいろいろな人がいるのです。
さて、このコルチゾールですが、ここには『抗ストレスホルモン』とありますが、実は『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』にはこうあります。
問題児コルチゾールの本当の働き
(省略)コルチゾールはストレスが生じたときに分泌される『ストレスホルモン』だとして問題視されるようになった。50以上のホルモンが体内で分泌され流れる中で、唯一の問題児というレッテルを貼られている。(中略)だが現実にはコルチゾールは悪者ではない。健康で体の働きを最適に保つために、なくてはならない存在だ。(中略)適切にコルチゾールを生成すればメラトニンも適量になる。
上記の記事にコルチゾールとメラトニンとの関係について書きましたが、たしかにこの本にも、
『コルチゾールは生体のリズムを日々管理する副腎ホルモンだ。たとえるなら、体内に備わっているコーヒーメーカーのような存在だ。私たちは毎日副腎ホルモンが新しいコーヒーを入れたとたんに目が覚める。夜は、副腎ホルモンというコーヒーメーカーのスイッチが切れて眠りに落ちる。』
とあります。しかし、『ストレスホルモン』とか『唯一の問題児というレッテルを貼られている』とありますよね。先ほどは『抗ストレスホルモン』とありましたし、それで考えるなら、『ストレスに対抗するためになくてはならない、貴重なホルモン』と考えるのが普通です。しかしそうではなく、唯一の問題児と見られているのは、妙な話ですね。
このあたりは、素人の見解と専門家の見解がごっちゃになってしまっているのかわかりませんが、しかしよく見るとこの本もコルチゾールは『ストレスに対抗するためになくてはならない、貴重なホルモン』という方向で説明していますから、やはりコルチゾールは『ストレスの原因』ではなくその真逆の働きをしてくれるホルモンでしょう。それであれば『コルチゾールが大量に分泌される朝の二度寝は、多幸感を得られる』という事実ともつじつまが合いますからね。
さて、様々な二度寝の状況について考えてきました。その上でもし、
という条件を満たせるなら、二度寝はぜひともするべきでしょう。