便秘では口臭は出ない?
ある便秘の専門書を書いた医師は『どんなに重度の便秘の人であっても、診察に来院される人で口臭があった人はいない』と言います。
しかし、ある腸内環境に関する専門書には、『便秘になると腸内腐敗が起き、悪玉菌が増え、体臭の原因となり、もちろん口臭の原因ともなる』とあります。ということで、原則としては便秘で口臭が出ると言えますが、原則通りに口臭が出ている人は滅多にいないということになります。
Contents|目次
便秘をすると口臭が出るという話があります。腸内環境が悪くなって口から便臭がするというのですね。大便のニオイです。しかし私は口臭に関する本をいくつも持っていますが、
気になる「臭い」がみるみる消える100のコツ―ワキ、足、口の臭いから生活臭、服の臭いまですっきり
これらの本に『便秘で口臭が出る』という話をしている本は一つもありません。例えば下記の記事にそれら参考書をもとに口臭の原因について詳細を書きました。
口臭の原因は一つではない!様々な種類とその対策 – Inquiry. |
生理的口臭
呼称 | |
---|---|
一般的なもの | 加齢性、起床時、空腹時、緊張時、疲労時など |
ホルモンの変調などに起因するもの | 妊娠時、月経時、思春期、更年期など |
嗜好物・飲食物・薬物によるもの | ニンニク、アルコール、薬物(活性型ビタミン剤)など |
病的(器質的・身体的)口臭
呼称 | |
---|---|
歯科口腔領域の疾患 | 歯周炎、特殊な歯肉炎、口腔粘膜の炎症、舌苔、悪性腫瘍など |
耳鼻咽喉科領域の疾患 | 副鼻腔炎、咽頭・喉頭の炎症、悪性腫瘍など |
全身(内科)疾患 | 糖尿病(アセトン臭)、肝疾患(アミン臭)、腎疾患(アンモニア臭)など |
出典:『もう、口臭で悩まない! 誰も書かなかった口臭症治療のすべて』
生理や妊娠、緊張時や空腹時、疲労時や病気の際等に口臭がでるという話はありますが、便秘で口臭がきつくなるという話はないんですね。したがって、一見するとこの話はいささか信憑性が低いと考えられます。また、『大便のニオイ』ということで考えたとき、下記の表は『口臭』に特化して作成したものですが、
様々な口臭の原因とニオイの種類
歯周病・虫歯 | イオウのニオイ |
---|---|
胃腸病 | 卵の腐ったニオイ |
肝臓病 | ネズミ臭(濡れ雑巾とニンニクが混ざったようなニオイ) |
糖尿病 | 甘い、甘酸っぱいニオイ(ケトン体) |
腎臓病 | アンモニアのニオイ |
呼吸器系疾患 | 生臭い、肉の腐ったニオイ |
心臓病 | 生臭い、肉の腐ったニオイ |
唾液の減少 | 雑巾や布巾のような生乾きのようなニオイ |
ここに似た類のものはありません。似ているのは『卵の腐った、イオウ』のニオイですね。
『気になる口臭・体臭・加齢臭』にはこうあります。
体臭や排せつ物のニオイから知る体調異変
(省略)便の腐敗臭
便秘などで腸の働きが低下すると腸内の異常発酵が進み、腐ったような悪臭を放つニオイ物質が生成されます。
このようにして、『便が匂う』という話はありません。便秘や、そこまでだと言わなくても便が出ないような状況が少しでも続くと、腸内で異常発酵が進み、便やおならのニオイが『卵が腐ったようなニオイ』がすることが多いですね。これは自分でもよくあることですから自覚があります。
また、『卵が腐ったようなニオイ』であれば、本にはこうもあります。
口臭の原因の中で、歯周病に並んで多いのが胃腸病です。胃炎や胃潰瘍、十二指腸開園などにかかると、消化不良を起こしやすくなります。その結果、食べたものが胃の中に停滞し、異常発酵するのです。そこで発生したニオイ物質が腸管から吸収され、血流に乗って肺から排泄、『卵の腐ったようなニオイ』の口臭となって出てくるのです。
このように、胃腸病になった場合は口臭から便臭にも似た『卵の腐ったようなニオイ』がしますが、便秘は胃腸病ではありませんからね。
胃腸病による口臭は歯周病に匹敵するほど多い! – Inquiry. |
ただ、本にはこうもあります。
胃腸の病気を起こす最大の原因はストレスといわれています。その他、睡眠不足や暴飲暴食、偏食、美食(動物性脂肪とたんぱく質の過剰摂取)、便秘なども胃腸病の原因にあげられます。
ここに『便秘』と出てきましたね。つまり『便秘は胃腸病の原因』に挙げられます。しかし、便秘は胃腸病ではありませんからね。便秘を放置していると胃腸病になるかもしれませんが、便秘があるというだけで口臭が出るという話はないのです。
便秘についての参考書もいくつかあります。『腸内革命―スッキリ!腸のよごれをきれいにする本』にはこうあります。
腸の大切な役割について知る
(省略)おなかの健康が悪くなると、肌荒れ、イライラなどの不調が起こるでしょう。腸が、体や心の元気と密接に結びついているためですが、最近、腸の動きが鈍くなり、毒素が溜まっている人が増えているようです。
(中略)停滞した毒素は全身をめぐり、肌荒れや肩こり、頭痛などを引き起こします。ガスがたまっておなかが張ったり、結構悪化でむくみや冷えになったりもします。また、代謝が落ちてしまい、脂肪が燃えにくく、太りやすくなってしまうのです。
このように、
の原因になる可能性については触れられていますが、便秘の本にも口臭が出るという事実については書かれていないのです。ただ、この本にはこうあります。
たかが便秘とあなどることなかれ
『風は万病のもと』という言葉がありますが、便秘もまた、万病のもとといえます。便秘にはいろいろな原因がありますが、便が大腸に長くとどまるのはどれも同じこと。このような状態が長く続くと、いくら善玉菌ががんばっても、だんだんに便が腐り始め、硫化水素やメルカプタンなどの毒素が生まれます。つまり、便秘というのは体の中に毒を抱えているのと同じ状態と言えるのです。
ここに出てきたのは、
というキーワードです。善玉菌がいくら頑張っても無駄だということは、つまり腸内に悪玉菌が増えるということです。それであれば、下記の記事に書いた以下の表が気になるところです。
口臭と唾液の量はどう関係している?ネバネバ唾液とサラサラ唾液 – Inquiry. |
自律神経や環境によって口の中に起きる変化
繁殖する菌 | 分泌される唾液 | ニオイ | |
---|---|---|---|
交感神経優位 | 悪玉菌。酸素を嫌う嫌気性菌 | ネバネバ唾液(粘液性唾液) | する |
副交感神経優位 | 善玉菌。好気性菌脂臭 | サラサラ唾液(漿液性唾液) | しない |
つまり、唾液がネバネバしてくると、酸素を嫌う嫌気性菌である『悪玉菌』が繁殖します。これは、ニオイを発する細菌です。つまり、もし悪玉菌が増えるのであれば、このように『口の中の悪玉菌も増える』のではないかという疑問が浮かびます。しかし実際にはそういうことはありません。便秘によって増える悪玉菌は、あくまでも腸内だけの話なのです。
では『硫化水素、メルカプタン』はどうでしょうか。下記の記事に書いた『硫黄化合物』についてみてみましょう。
口臭の原因は一つではない!様々な種類とその対策 – Inquiry. |
硫黄化合物
におい成分 | 化学式 | においの質 | 認知(ppm) |
---|---|---|---|
メチルメルカプタン | CH₃SH | 腐った玉ねぎ | 0.0021 |
硫化水素 | H₂S | 腐った卵 | 0.0047 |
必要な部分はカットして表を作りましたが、まさにここに『メチルメルカプタン』と『硫化水素』がありますね。メチルメルカプタンとはメルカプタンの一種ですから、同じことなのです。しかしこれは記事を見てもわかるように『口臭のニオイの種類』の話ですから、腸内にこの毒素が溜まっただけでは、口からこのニオイが出ると決まったわけではありません。
また更にこの本を読み進めると、便秘の原因として『高血圧、じんましん』等の病気や問題が挙げられていますが、やはり『口臭』については触れていないのです。一度すべての情報をまとめてみましょう。
便秘によって引き起こされる症状
やはり便秘で口臭がきつくなるという話は眉唾物なのでしょうか。
しかし、参考書を読み漁ると、ついに口臭と便秘に関して書く本を見つけました。『その便秘治せます! ――女医が教える』にはこうあります。
体臭、口臭と便秘の関係
- 『便秘になると、体臭や口臭やきつくなりますか?』
そんな質問を受けることがあります。答えはNo。私の診察に来院される人のほとんどは便秘でお悩みですが、誰ひとりにおいを感じる患者さんはいらっしゃいません。どんなに重度の便秘の人であってもです。
やはり、口臭と便秘は関係ないみたいですね。しかも、体臭すらも関係がないと言っています。ただし、この体臭関係については違う意見があります。当サイトでは、
を主に専門にしていますが、以下のような記事をまとめています。
便秘はニキビの原因になる?毒素(宿便)と悪玉菌が与える影響とは – Inquiry. |
便秘が続くと腸内に有害物質が溜まります。それを解毒する為に肝臓や腎臓に負担をかけるだけではなく、血液と一緒に体内を巡り、全身に様々な悪影響を及ぼします。したがって、ニキビ、肌荒れ、ワキガなどの体臭が便秘の時に出やすいわけです。
また、このお医者さんは『便秘で悩む人に一人も口臭・体臭がある人はいなかった』 と言いますが、正直それは『診た患者さんが少ない』だけの可能性がありますよね。冷静に考えれば、たとえ便秘と口臭・体臭が関係なくても、『もともと口臭・体臭があった人』がいるかもしれません。それなのに一人もいなかったというのは、ただの偶然か、診た患者の数が少ないだけでしょう。
ただ実際にはこのお医者さんに悪気はなく、『口臭と便秘に関係はない』という事実を伝えたいだけなので、ネットに『口臭と便秘の関係がある』と広げているような人と比べれば、よほど素晴らしい考えを持っている人だと言えるでしょう。
ただ、気になる点が2つあります。下記の記事に『生理と口臭』について書いたのですが、便秘になると女性ホルモンのバランスも崩れます。
生理前や生理中に口臭が強くなるって本当?性ホルモンが乱れる時期の一時的な現象 – Inquiry. |
『「きれい」を育てる 女性ホルモン整えレッスン』にはこうあります。
便秘になると女性ホルモンもつまる
(省略)生理前に分泌が増えるプロゲステロンには、妊娠に備えるために体内の水分を維持する働きがあります。大腸でもより多くの水分を吸収しようとするため、便の水分が減って硬くなり、排出されにくくなります。また、プロゲステロンには子宮の収縮を抑える働きもありますが、それと同時に大腸の蠕動運動も抑えてしまいます。
(中略)また、腸が動かなくなると、血流が不足して循環が悪くなり、体や内臓も冷えてしまいます。その結果、自律神経の働きも女性ホルモンの分泌も悪くなるのです。
つまり、便秘の女性がもし『生理中』であれば、生理における口臭の問題が関係しているかもしれません。また、便秘自体も女性ホルモンを乱す原因となり、それによって自律神経が乱れて口臭が出るという可能性もあります。生理に関する詳しいことは記事をご覧ください。
そしてもう一つ。『便活ダイエット ~便秘外来の医師が教える、排便力がアップする11のルール~ (美人開花シリーズ)』にはこうあります。
緊張状態では腸は動かない!
自律神経とは呼吸したり、血液を循環させたりといった生きるために必要なことを行っているライフラインの神経。(中略)腸の蠕動運動は、主に副交感神経によって収縮するため、リラックスできている状態でこそ活発に働きます。旅行に行くと便秘になってえしまうのは、環境の変化に体が緊張して、交感神経が上昇し、副交感神経が低下するため。それだけ自律神経に大きな影響を与えているのです。
便活ダイエット ~便秘外来の医師が教える、排便力がアップする11のルール~ (美人開花シリーズ)
自律神経が乱れ、交感神経が優位になると便秘になります。
ですね。私はしょっちゅう『小旅行(にも満たないようなおでかけ)』をよくしますが、必ずと言っていいほど排便の調子が狂います。いつもは朝起きてすぐに出るのですが、そういう日に限って、家に帰るまで出ず、しかも家が見えてきた、
もうすぐ家だ
と思うタイミングで、急に催してきます。私の中では一切『興奮、緊張』などというつもりはないのですが、おでかけの際は必ずそういう便のリズムになるのです。ここで、先ほど挙げた表をもう一度見てみましょう。
自律神経や環境によって口の中に起きる変化
繁殖する菌 | 分泌される唾液 | ニオイ | |
---|---|---|---|
交感神経優位 | 悪玉菌。酸素を嫌う嫌気性菌 | ネバネバ唾液(粘液性唾液) | する |
副交感神経優位 | 善玉菌。好気性菌脂臭 | サラサラ唾液(漿液性唾液) | しない |
交感神経が優位になると、ニオイを発する細菌である悪玉菌が増えます。これは口臭の原因です。そして同時に便秘にもなります。ここで、下記の記事に書いた『交感神経系と副交感神経系の働き』から一部を抜粋してみましょう。
交感神経系と副交感神経系の働き
交感神経優位 | 身体 | 副交感神経優位 |
---|---|---|
抑制↓ | 消化器活動 | 活発化↑ |
このように、やはり交感神経が優位になると消化器活動、つまり、胃や腸の働きは抑制されてしまうんですね。
ところが、腸内環境に関する専門書を読むと、どうも『便秘』も腸内腐敗の原因だとあります。そして便秘になると腸内腐敗が起き、悪玉菌が増え、体臭の原因となり、もちろん口臭の原因ともなるというのです。
悪玉菌にも一応の役目があり、善玉菌にできない分解をしてくれます。しかし、それと引き換えにニオイ物質を引き起こしてしまうことが玉に瑕なわけです。
よく考えれば先ほどこうありましたよね。
口臭の原因の中で、歯周病に並んで多いのが胃腸病です。胃炎や胃潰瘍、十二指腸開園などにかかると、消化不良を起こしやすくなります。その結果、食べたものが胃の中に停滞し、異常発酵するのです。そこで発生したニオイ物質が腸管から吸収され、血流に乗って肺から排泄、『卵の腐ったようなニオイ』の口臭となって出てくるのです。
胃腸病の際には、胃の中に食べたものが停滞して異常発酵し、それが肺から排泄されると口臭となるとあります。それであれば、『便秘による腸内腐敗』のこの流れと全く同じですよね。したがって、便秘による腸内腐敗は、胃腸病の際の口臭と同じように、口臭の原因となる可能性があると言えるわけです。
この腸内環境を善玉菌優勢にし、腸内腐敗をなくすためには、常に善玉菌優勢にすることを意識する必要があります。例えば、善玉菌に有効な食材を摂るわけですね。すると腸内で善玉菌が優勢になり、腸内フローラの環境がよくなり、悪玉菌が原因の口臭を抑えることに繋がるわけです。
腸内腐敗が口臭を引き起こす?腸内環境を最適化して予防しよう – Inquiry. |
口臭、便秘の専門書にはないのに、腸内環境についての本に『便秘と口臭の関係』について書いてありました。ですから、この話はなかなか深く潜らないとたどり着けない問題だったと言えるでしょう。とにかく、便秘になると口臭が出る可能性があるということがわかりましたね。